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皇帝の平和 番外編など

歌集(カルミナ)

作者: かのこ

 君(アントニウスの息子)は、優れた詩人だから、

 カエサル(アウグストゥス)の功績をご自身で詩になさい。


                         ホラティウス 




 ゲルマニアを平定し、捕虜を引き立てて凱旋したカエサルの栄誉を、

 讃えよと言われるのでしたら、それは私めではなく、

 他の詩人に依頼していただきたく存じます。


 いっそユルス・アントニウス。

 御身が制作されてはいかがでございますか?


 何を謙遜されるのです?

 カエサルの栄光を讃えんとする情熱がおありなら、

 輝かしい言葉は既に御身の胸に収められておりましょう。


 ましてや日頃、ご自分でも詩を物し、文を論じられる方でしたら

 けしてそのように、言い訳をなさるほどの無理ではありますまい。


 私の作り出す作品を、カエサルの名を讃える道具にするつもりで

 依頼されているのはもちろんわかっております。


 誤解ですと? 

 私個人の名声のためにも、カエサルを讃えよと? 

 我が庇護者マエケナス様にも申し上げておりますが、

 そうした詩は依頼されてもお断りしております。


 アントニウスの息子よ。

 私をあなたの卑しい目論見のために

 利用しようとするのはおやめ下さい。


 どれだけあなたがこの哀れな詩人に執着し、

 作品をしぼりだそうとしても無駄でございます。


 私たちは尊厳者の威光を讃えるために引き回される、

 ゲルマニアの奴隷ではございません。


 お引取りを。ユルス・アントニウス。

 尊厳者を讃えたいのなら、ご自身の言葉で歌われますように。





「ホラティウス 人と作品」「ホラティウス全集」

 鈴木一郎著 玉川大学出版部から引用

詩人ホラティウスはユルス・アントニウスに「アウグストゥスを讃える作品を作れ」と依頼を受けて断っています。

ユルスはアウグストゥスがローマに凱旋してゲルマニアの捕虜を引き回すところを詩にさせたかったようです。

ユルスは詩人で、英雄詩「ディオメディア」一二巻を書いて文学作品を発表していたそうで、ホラティウスは「自分で書け」と返事したそうです。

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