強くなるためにお勉強
「えーっと? 確か、お二人とも、深淵管理度数Ⅴまでの閲覧許可を王からいただいているので、この図書館の中の本は、全て読めますね」
「ん、分かった。じゃ、さっき言った通り、地上で簡単な王都の歴史を覚えといてくれ。こっちは、強くなる手段を深淵管理度数Ⅲ~Ⅴで探しておくから」
「わかった!」
「ごゆっくり~」
鏡花にざっくりでいいから、王都の歴史を調べてもらう。
バカでかい図書館だが、自信満々に「任せて!」と言われたら断れないだろう。
そして、俺は深淵管理度数Ⅲの魔法の深淵、Ⅳ概念について、Ⅴ全禁忌についてで、強くなる方法を調べる。時間は、王立図書館に月光が差し込むまでだ。
なぜ、月光が差し込むまで、と言ったかというと、この王立図書館は造りが異質で、光の差し込み方が自然が故に不自然だ。太陽が出ているのに月光が差し込むことがある。
「やっば。マジで厳重だな。警備が半端ないわ」
その数―――約二百。
あくまで、地下の本を守る人だからな? 多すぎないか?
いや、まあそれだけ大事な本なんだろうけども。
ま、いいか。許可貰ってるらしいし、さっさと行こう。
「おい、貴様何者だ! 深淵管理度数Ⅲに近づくとは……恥を知れっ!」
「貴様の命はこれで終わりだ! 〈炎弾〉!」
「あぶねえ!」
なんですぐ近くに本があるのに火をぶっ放すんだよ!
頭おかしいんじゃねえの!? つーか、人の話を聞け!
「ちっ、うまくよけやがって。しかあし! 俺の槍でお終いだあ!」
「だか、ら! あぶね、えな! おいっ!」
「またよけたな! これでどうだ! 〈炎弾〉!」
「馬鹿の一つ覚えかよ!」
マジで人の話聞けっての!
誰か気付いてくんねーかな……
「おし! とどめだぁ……あ? ま、待て! お前ら!」
「ああっ!? んだよ、このやろう。もうとどめさせんのによ」
「いや、こいつ……ってか、この人は……召喚されたカイ様じゃないか?」
「「「「「ええっ????」」」」」
「こんなひょろいのが!?」
「もっと強そうなんじゃないのか!?」
「ひどい言われようだな、オイ」
初対面でこんなぼろくそ言われたのは初めてだ。
いや、もう殺しあった仲か。うん。
「すいませんでしたっ! クルル様から聞いております! お通ししろと! すいませんでしたぁっ!」
「お、おう。いや、誤解が解けて何よりだ。それより、もう通っていいか?」
「はっ! ささ、こちらです! 深淵管理度数Ⅲはこちらです! さあ! さあ!」
「いや、暑苦しいわ」
体育会系が集まってるよ。鎧付きで。
さて、もう顔は知られたし、通っていいって言われたから、もう読んでいくか。
気になるタイトルの本を見つけ、複数取っていく。
「ん~机はどこだ? あ、あったあった。きれいだな」
深淵管理度数の許可が出されているのは位の高い人だ。しかし、その人たちも普段忙しいため、来れないのだろう。そう、考えた。
さ、読もう。
ぱら、ぱらぱら、ぱら、ぱららら。ぱららららららららら……
「お、おい。見ろよあれ。本を読むじゃなくて、ぱらぱらしてるぞ!」
「ほんとだ! あれ読めてんのか!?」
「ってか、二冊並べて、ぱらぱらし始めたぞ! もはや遊んでんだろ!」
そう、今現在カイは、白紙のノートをめくるがごとく、広辞苑並みに分厚い本を読んでいる。
速読の極みともいえるだろう。その神業に、深淵守護騎士達は、恐れていた。
「ふう。面白かった。が、頭いてえな。ガンガンする」
あ~疲れた。三十秒当たりで十五冊読んだが、魔法や、概念、禁忌など分かるはずもない。
あくまで、暗記しただけだ。一言一句間違わぬように、しっかりと。
頭いてえ……先に上がって休憩しとくか。
「あ、カイ。おかえり~。どうだった?」
「超頭痛い」
「なんで!?」
「速読して、暗記した」
「なるほどね。私と同じことをしたわけだ」
「え?」
「え?」
え、これ出来る人がほかにもいたなんて……驚きだわ。
でもなあ~、あくまで記憶しただけで、覚えてねえからな~。
ま、話すか。
「で? 王都の歴史、どうだった?」
「社会の教科書読むより難しかった」
「だろうな。内容は?」
「帰りながら話すよ。大したこともなかったし。それで、強くなる方法は、見つけたの?」
「話しながらまとめるな。今、強くなるための目標が三つある」
「三つ?」
「ああ。一つ。お前の、能力強化。二つ。魔剣の入手。三つ。魔法の創作。以上だ」
「ふんふん。私の強化と魔法の創作は、聞いてたから分かるけど、魔剣の入手って? どういうこと?」
「ああ、それはな。まず、この世界には剣の種類がある。普通の鉄剣。聖剣、魔剣、そして、神剣。四つだな」
「何か違いはあるの?」
「鉄剣は、人間の鍛冶屋とかが作ったような剣だ。騎士たちも使ってるやつ」
「なるほど。聖剣は?」
「聖剣は、神の祝福の与えられた剣。たとえば、希輝聖剣ハーレントは、希望神と、光輝神に祝福されている」
「へえ。魔剣、神剣は?」
「魔剣は、悪魔とか死神、それこそ魔王とかの、魔族以外の魔界出身のやつの祝福が必要だ。あ、下っ端じゃなくて、上級のな。神剣は、神が作ったり、神が使うやつ。人間はそう使えないな。これでいいか?」
結構喋って疲れた。
もちろん、さっきの話には例外がある。例えば……
「これから―――ってか、もうちょい用意して取りに行くのが、大罪魔剣ギルティだ。これは、他の剣と少し違う」
「違うって、何が?」
「これ、大罪魔剣って言ったろ? 魔剣の成り立ち、覚えてるか?」
「うん? えーっと、魔族以外の魔界出身の上級者でしょ?」
「ああ。だからその特性上、神が作ったり、使ったりすることはまずない。だが、これは別だ。大罪魔剣は―――――堕ちた神の創り出した剣なんだよ」
「堕ちた神? 堕神ってこと?」
「んー難しいなあ。七つの大罪って知ってるか?」
「うん。えっと、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰、の七つだよね?」
「そうだな。この世界は、それを具現化した奴がいる。神界に、神は全ているはずなんだが、追放された奴らだ」
「えっと……化け物? その神たちって」
「いや? 普通の人型だ。神は、通常人型だからな」
「へえ~」
大罪魔剣は、成り立ちがめんどくさい。神剣と魔剣の狭間にいる、と考えるとわかりやすいかもしれない。
ってか、かわいそうじゃね? 追放された理由は、
「ただ、強すぎたんだよ。その七人は。神たちの中で、一人一人が最強クラスだったんだ。七つの大罪って呼ばれるに至った理由は、その能力だ」
「能力?」
「魔法を喰ったり、周りの力を吸収したり、自動で回復し続けたりな。チートだよ」
「強すぎただけで……追放? そんな……理由で?」
「それが、神だ。奇跡は自分たちで作るものだと思ってる。クソだよな。一部の神しかまともなのがいねえ。世界は自分達が回すと思っているんだ。まあ、一部の世界は……いや、やっぱいい。なんとなく分かったか?」
「うん……なんとなくね……さ! 帰って、魔法の練習しなきゃ! 早く帰ろう!」
「あ、ああ。そうだな」
しまった。俺としたことが、わざわざ重い雰囲気にしちまった。
神のことなんてどうでもよかったか。だが、知っていてほしかった。七つの大罪のことを。
そんなふうに、重く考えていると、光が変わった。日光ではない。月光だ。
もう帰るか。
「ハハハハハ! どうでしたか!? よかったですよね!? またのお越しをお待ちしておりまあっす!!」
「すげえ。このハイテンションが今、すごい嬉しいと思っちまった」
「私もだよ。何でだろうね」
剣の区別が難しくなっています。
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