表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/39

特注品

あらかじめ言っときます。

俺、何か物事を説明するのがめっっっちゃ下手なんです。

ご了承ください。すみません。

「んあー! 目覚めがよろしいっ!」


 異世界最初の睡眠は、最高だった。

これ以上ないほどぐっすり眠れて、体も万全だ。

そんなベットなのに、起きるときは、すっごい起きられる。この、二度寝がくせの俺がだ。


「さて……謁見の間に行く前に、皆と合流しようかな」

「うん、そうだね。あとは九素崎君だけかな?」

「うん……ってうお! いつのまに!」

「え? 隣から、目覚めがよろしいっ! って聞こえたぐらいに起きたよ?」

「……はい、すみませんでした」

「あはは、いいよいいよ。にしても、今日は、謁見の間に行ってなんか話聞かないといけないんでしょ?」

「ああ。そう言われてる」

「じゃあさ、その後どうする?」

「え? そりゃあ……なんも考えてねえな」


たしかに、なんも考えてなかったわ。そういえば。

別にすることもないしなー


「じゃあさ、じゃあさ! この城を見て回らない? 自由に歩いていいって許可は出てるし」

「あーいいね、それ。そうするか。王の話を踏まえて動いていきたいよな」

「うん。そうだね。あーじゃあ、九素崎はどうする? 個人的には呼びたくないけど……」

「俺もだ。ってか、鏡花も嫌いだったんだな。仲良さそうに見えたのに」

「全くそんなことないよ。一応、生徒会長としての体裁的に、皆と仲良くしないといけないだけでね。そういうのが地位が高いことの面倒なことかな?」

「へえ、そんな面倒くさい仕事だったんだ、あれ」

「まあね。しかも、九素崎はさぁ、生徒会役員のくせにほかの人に全部仕事を押し付けるんだよ!? だけど、私と二人きりになった時だけ、頑張ってさ! とか言っても、ほとんど資料間違えてるし! 逆に邪魔なんだけど! もう! ……なんか、思い出しイライラしてきた」

「へ、へえ……溜まってるんだな。思い出しイライラて」

「う、うるさい! 仕方ないじゃない! ……って、来たよ」

「おうおう、時兎ォ……先輩を怒らせてんじゃねーかぁ……やっぱりこんなやつより、俺と一緒に世界を救いましょう! ね! 先輩!」


 え、こいつ、自分が怒らせたってわかってない……?

逆に、どうしたらこの人を怒らせれるんだ?

一種の才能だな。うん。


「では、行きましょうか! 先輩!」

「あー先輩、ちょっと忘れ物があるので、先に行ってくれますか? すぐ行きますんで」

「えっ……(そもそも、この世界に何か持ってきていたかな?)分かった。すぐ来てね」

「ちっ、やっぱ最後に足を引っ張るのはてめーだなぁ……あ? 下民が。ねぇ先輩。先輩もそう思いますよね?」

「いや、まったく思わないけど」

「ええ!?」

「じゃ、行ってくるから」

「うん。早く来てね」


 ……さて、別に持ってくるものがなかった……ってか、召喚されたときに荷物はすべて無くなっていた。おそらく、日本の道端に落ちているだろう。そんな状況での忘れ物とは? と、先輩は思っただろう。


「どこに置いたっけ……ん、あったあった。これがないと、俺泣いちゃう」


 そういって、棚の一番上に入れてあったマルチツールナイフを取り出す。

さて、皆様。ここで思った方もいるでしょう。

『は? てめえ、学校にマルチツールナイフ持っていってたのかよ』

と。

理由は……あー恐らく鏡花に聞かれるだろうから、少し待ってくださいね。


「さ、早く合流しないと。んーもう、待ち合わせ場所にはいないな。となると……謁見の間に通じる道は……ここだっけ?」


 ちっ。鏡花に案内してもらうつもりだったから、分からん。

どこかに案内してくれる人いないかな……あっ。


「すみません。謁見の間って、どこからいけますか?」

「ああそれなら、この道を真っ直ぐ行って、二番目の角で右に曲がってください。その道が本道となっていて、そのまま真っ直ぐ行けば謁見の間ですよ」

「ありがとうございます! えっと、なんというお名前で?」

「アルトです。あなたは?」

「ああ、俺はカイです」

「カイさんですね……ん? カイって……召喚されたお方の?」

「え、ええ。そうですけど」

「そうですか……頑張ってくださいね」

「? は、はい。頑張ります」


 最後、何を!? と言いそうになったが踏みとどまった。

まあ、この人のおかげで道が分かったんだから、感謝しないとな。

さて、行きますか。二番目の角って……おっと、ここか。

確かに、本道というだけあって、広いな。


「あ、いたいたー。カイ君! こっちこっちー!」

「おせーんだよ。ボケが」

「あーごめん、鏡花。途中迷ってさ。そこの兵士さんに教えてもらったんだけど。ってか、よくこんな道覚えてたな。さすがだよ」

「えへへ、ありがとう。そういうの得意なんだ♪」

「へっ、てめえごときが先輩に追いつこうなんぞ、三万年早えよ!」

「いや、一週間と二日で十分だ」

「具体的だね……! あ、そういえば、さっきは何を取りに帰ったの?」

「ああ、これこれ」

「……それって……え? ん? マルチツールナイフ?」

「大正解」


 持ち手の部分だけ見ても分かるもんなんだな。

いや、先輩の頭がいいだけか?


「はあ? 時兎てめえ、どういうことだぁ? 学校に、んなもん持ってってたのかよ。オイ。没収だ、没収」

「お前ここ学校じゃねえぞ? それ分かって言ってんのか? だとしたら笑いものだな」

「学校にもって行ってたのは事実だろ? だったら、生徒会の名に懸けて、没収だな」

「じゃあ、私が生徒会長として預かるね。九素崎君」

「先輩……! くっ」

「というわけで、少し借りてもいいかな?」

「いいけど、その代わり傷一つ付けるなよ。その時は許さねえから」

「う、うんわかった……素材については私は疎いんだけど、これは……本当に何? 鉄でも、アルミでもない……」

「あーわかんないんよな、それ。十三歳の時の誕生日プレゼントとして、親父から貰ったんだけどさ、素材については分かんない。あ、あとそれ、オーダーメイド」

「へぇ……ん? オーダーメイドぉ!? これの、特注品ってあるの!?」

「それは親父に言ってくれ。でも、硬さと性能はえぐい。普通のやつよりもできることが多いし、さびない。しかも、コンパクトだから持ち運びがしやすいんだ」

「へえぇ……あ、ありがとね。はい。どうせならさ、こんな早くに王に会うんじゃなくて、少し待ってから行かない?」

「おぉ~いいですね! それ。さすが先輩!」

「そうだな。そうするか。どうやって時間つぶす?」

「そうだな……あ! そのマルチツールナイフの性能を教えてよ!」

「これの性能ですか?」

「そう! っていうか、それに名前はあるの?」

「そう言われれば無いな……」


 特にそういうの意識せずに過ごしてきたし、これに名前なんかあったっけ?

いや、なかったはずだ。

この際だから、決めてもらうか。


「鏡花が決めて―――」

「ブラックで」

「早えな、オイ」

「先輩! 俺もいいと思います! さすが先輩ですね! いいセンスです!」

「あ、じゃあさじゃあさ! それは、なんで学校に持って行ってるの? 家に置いて行けばいいじゃない?」

「そうだそうだ! 時兎。まさかお前誰かを刺す気があったのかぁ? そんな奴は今すぐ処分しねえとなぁ」

「この……ブラックを持っている理由はな、あー今朝……昨日か。昨日、うちに泥棒が入ったからなんだよ。朝起きたら目の前に全身黒で統一されている変な奴が家をあさってたんだよ、逆に朝だから目立ってたけどな。確か……九素崎くらいの背丈だったはず」

「いきなり壮絶だね……それからそれから?」

「俺くらいの背丈って……俺が犯人みたいだなぁ、時兎ォ」

「別にそこまで言ってないんだが。ま、続けるぞ。その時に俺は、パジャマなわけよ。しかも、武器無いわけよ。まあ、そこで俺はとりあえず殴って、枕近くに置いてあったブラックだけ持ってきた……というわけ」

「なんで、武器も装備も何もないのに泥棒を殴ったのかな……! え? 親は家にいなかったの?」

「ちょっとアメリカにな、出張に出てるんだ。家には俺一人だったから泥棒も来たのかな? で、そのまま一階に降りて、一階に置いてあったもので用意済ませて学校に来た、ってわけ」

「「……君(お前)頭大丈夫??」」

「え?」


 あれ? 普通、泥棒が家に来たら、殴って逃げるんじゃないの?

あ、そっか。泥棒をそのまま家に置いてきたからか。


「大丈夫だよ。家、血縁認証されてないと、その人だけになった時に要塞化するから出れないはずだよ。ちなみに家のものを取って出ようとした瞬間に、超圧力がかかって出れないんだ。返さないと出れない。何でそんなん置いてあるか心配だったけど、そういうことだったんだな」

「やばくない……? その家」

「あぶねえな……マジでギリギリじゃねえか」

「使ってる側としたら危なくないよ。ま、勝手に人のうちに忍び込んだやつが悪いし」

「まあ、確かにそうだね……」

「それが今日ブラックを持ってきた理由だな。うん」

「壮絶じゃねえか……ってか、なんで泥棒に会ったら殴るんだよ」

「ブラックって、なんか、いろんな物語があるねぇ……あ、そうだ! 性能を教えてくれない?」

「性能?」

「うん。一言でいいから」

「性能か……」


 えーっと? 何があったけな。確か……


「ナイフ、ノコギリ、鱗落とし、釘抜き、プラスドライバー、マイナスドライバー、六角レンチ、やすり、ハサミ、ルーペ、全鍵、栓抜き、ワイヤーカッターかな?」

「待って待って待って待って待って、できることが意外と多かった。情報量が多かった。頭パンクしそう」

「こんなにちっせえのに、そんなに機能があんのか……?」

「えーっと、大丈夫?」

「うん。大丈夫……大丈夫……!」

「そうか……」


 このサイズで、十三種類って意外と無いのかな?

それはそうと、もう結構時間が経った。

もうそろそろいいだろう。


「あー、もう結構時間たったし、謁見の間に行く? 俺は別にいいんだけど。二人はどう?」

「あ、私もいいよ。九素崎君は?」

「お、俺も行けます!」

「じゃあ、行くか」


 なんか普通に考えたら、この二日で結構濃い内容送ってることに気が付いた。

泥棒と遭遇。殴る。学校行く。学校一の美女と、クソ野郎に遭遇。一緒に帰る。召喚される。村人宣言される。勇者超越宣言する。迷子になりかける。そして現在。

結構カオスだなぁ。オイ。

ま、もう終わったことだからいいんだ、と俺は思っていた、が。

後に響いてくるとは思わなかったな……




さて、めっちゃ勘のいい人ならもう気付いたかもしれませんね……

あ、カイはわざとくそ崎を無視しています。

コメント、評価等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ