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大喰顎

これからは二週間に一回の投稿になるかもしれません。もしそうなったら、応援していただけると嬉しいです。

「へえ、百万のねえ。で、国の対応は?」

「この国にいる戦力を全て集めて迎撃しようとしてる」

「え、京くん。謁見までしたの?」

「してないですよ。盗み聞きです。俺の職業【暗殺者】ですよ? 気配を消すなんて簡単です」

「……この国の戦力で迎撃ねえ……」

「? 何か問題あるか? まあ、被害はとんでもない量でるだろうな」

「よし。謁見しよう」

「「「は?」」」



アールビ―王国・謁見の間



「して、何用だ。異世界の勇者たちよ」

「(俺は村人だっての……)今この国に差し迫っている魔物の軍団。あれの掃討を我らに一括して欲しいのです」

「なんだと?」

「我らに任せていただけるのであれば、ものの数秒で全てが終わるでしょう」

「ぬ、ぬう……」


「……(カイ、何言ってんの!?)」

「……(カイ~。お前~。さすがに百万は無理)」

「……(確か、推奨レベル二百のやつがいるって報告があったんでしょ!? 無理無理!!)」


「ふむ。お前たちのことを信用していないわけではない。私がこのくらいを継承する前から一人も攻略者がいなかったあのダンジョンをあっさり踏破したのだからな」

「では……」

「だが駄目だ」

「……何故?」

「万が一失敗したとき、我が民に被害が及ぶ。そんなこと、私は許せない」

「万が一? それは無いですね。億が一すらありえない」


 場を俺が支配する。


「俺がやるなら、失敗はありえないので」


……


「……騎士達に準備はさせておく。失敗したとき用だ。この国に一切の被害が出ないのならば。すればよい」

「ありがとうございます。では、失礼します」

「うむ」

「あっ、失礼します!」

「失礼します」

「しししっ、失礼します!」



…………



「ばっきゃろぉ! カイばっきゃろぉ!!」

「ん?」

「さすがに無理に決まってんだろうが!」

「えっとー、私、全力で最上級魔法撃っても一万殺せるかどうか……」

「俺は、一日丸ごとやれば、十万行けるか? って感じかな」

「私そもそも補助系統だし……」

「問題ない。十秒あれば百万いける」

「そんな魔法創ってたっけ? 〈魔神荒狂凶葬破〉は、範囲は広いし威力は高いけど、さすがに百万は無理でしょ?」

「魔法は使わねえさ」

「へっ!? 無理無理! 剣でも、攻撃範囲には限界があるって!」

「まあ見てろって」



一時間後……



「お前等逃げろ! 魔物の軍勢が迫ってきたぞ!!」

「女子供を優先して逃がせ! 俺たちが食い止めるぞ!!」

「いや、王からの命令だ。『異世界の村人が全てやる。失敗したとき用に準備をしろ』と」

「はあ!? あの数、さらにレベルが高すぎるんだぞ!? 無理に決まってる。それに、村人!? 勇者でもないくせに、何を言っている!??」

「……俺も同意見だが……王曰く、『ならば戦いに行けばよい。村人の攻撃に巻き込まれたければ』だってよ。逆に怖えよ」

「俺は行く! 一人にこの国を任せておけるか!」

「あ、おい……!」


……


「さ、始めるか」

「ほんとに一人でやるんだよね? 大丈夫なんだよね??」

「大丈夫だって。あ、一応市民護っといて」

「……了解」


 城壁に立つ俺の目の前に広がっているのは、高レベル魔物の軍勢。一匹一匹相手していたら、骨が折れるだろう。ダメージを受けなくても、心が死ぬ。

ま、三人が国に結界を張って、防御用の魔法を色々展開しているから大丈夫だろ。


……今から俺がするのは、大罪魔剣の能力を十全に使うものだ。

大罪魔剣のスキルと魔法を併用し発動する、極大魔法。

その名も―――――



「〈大喰顎(アギト)〉」



 ドウンッ……


……


ドゴオオオオッ!!!!!



「きゃあああっ! 地震!? っじゃない! 絶対カイだ!」

「あのやろう何やってんだ! 威力が馬鹿げてる! 三キロ離れた地点に使うって言ったろ!?」

「威力がぁっ! 強いんですけどぉ!?」


「お、王よ……私たちは何を見ているのでしょう……?」

「わ、私にも分からん……ただ一つ言えるのは、今この瞬間、神話が生まれたということだ……」


……


「はっはっは……いやー、あのー、うん。ちょっと、強すぎ?」


 〈大喰顎(アギト)〉 それは、指定した空間を丸ごと削り取る大罪魔剣専用スキルだ。

簡易的なブラックホールを作り出すようなもんだ。もちろん、俺が倒したので、百万の魔物の最大魔力量が上乗せされる。

とんでもない量だ。



…………



「よくやった。村人よ。まさか、本当に一人で全てを終わらせるとはな……」

「だから言ったでしょう。億が一もないって」

「う、うむぅ……よい。褒美を取らせよう。何が欲しい?」

「(もう欲しいもの入手したんだが……)そうですね。これは貸しにしていただけるとありがたいです」

「か、貸し!? わ、分かった。それでいいのだな? 伝説の匠が打った剣もあるぞ?」

「今俺が持ってるのはその剣の中でも最上級のものなので、大丈夫です」

「お、おう……下がってよい」

「では」


 まあ、ホントに欲しいもの無いしな……

ああ、強いて言えば、京の武器を貰えばよかったか。その点についてあいつと話し合わないとな。

ということで、まず帰宅。


…………


「えっ、マジで!? 俺の武器作ってくれんの!?」

「ああ。ちょっとその刀不安だろ? これからの戦いで折れたら困る」

「じゃ、よろしく頼む!」


 未奈に刀を作った時と同じように作る。

一回作ったことがあるため、あっさり作れた。

なんか、見せ場が無くてごめんな。


「さ、これがお前の刀だ。名を【黒蛇】と言う」

「黒蛇だな……分かった。サンキュ!」


 性能は未奈の白龍とまったくもって同じである。

強いて言えば、こちらは雷属性が扱いやすくなるというくらいか。

本当に何も言うことが無いんだ。


 ちなみに、こういう武器は職業:鍛冶屋が担当するものだ。クラスメイトにはいたはずだが……実際にその力がクラスに役立っているかは知らない。


「そういや、カイ。神をk―――――」

「〈断絶結界〉、〈遮断結界〉、〈空間遮断式無量結界〉。ついでに魔力開放」

「!? 何してんのお前!?」

「えっと、カイ? 敵が来るの? にしてもここまではしないわよね?」

「だって、こいつが神の話をしようとしたんだもん」

「なら仕方ないね。今のカイが全力で何重にも結界を張って、そのうえで濃度の高い魔力を大量に放出することで神の監視から逃れられるのだから」

「うぇ~カイってすごいんだねぇ」

「で、万全の状態になったから話してもいいんだよな?」

「ああ。どうぞ」


 珍しい。こいつが神のことに口を出すなんて。余程大切なことなのか?


「神を殺すって言ってたが、実際どうするんだよ。神の居場所は知っているのか?」


 そう言われ、俺は上を指さす。


「へ?」

「神界っていわれるところにいる。俺たちじゃあ視認できないな」

「えぇ……見えないところにいるのかよ」

「正確には、次元が違う」

「二次元、三次元みたいなか?」

「いや、そうじゃない。形容しがたいけど、とりあえず次元が違うんだ」

「ふーん」

「で、視るために必要なことは、魔力純度だ」

「どこまでだったらいいんだ? お前等はもう白なんだろ?」

「ああ。確かにほとんどの魔法を使える白だ。だが、神と同等以上にやりあうには、『白銀』まで行かなきゃダメなんだよ」

「一つ上か。なら、魔浄聖剣を使えばいいんじゃないのか?」

「そんな簡単な話じゃないんだよ」


 魔力純度の本当の最高位は『白』だ。しかし、方法は分からないが『白銀』まで行けるそうな。

そして、その方法を知ってるのが―――――


「監視者の一人、カインってやつなんだ」

「なんで、すっごい昔の勇者パーティーのことをそれだけ知ってるの!? って、カイだもんね。それで、監視者はどこにいるの?」

「あー、一回鏡花には言ったよな?」

「えっ!? 私!?」

「うん。最果ての土地っていう場所なんだけど、聞いたことないか?」

「なんか言ってたね。そこに監視者がいるって。行くの?」

「そうだなぁ……先にじいちゃんのいる山に行っていいか? 久しぶりに会いたくてさ……」

「私はいいよ! みんなはどう?」

「俺もさんせーい」

「あ、じゃあ私も!」


 神殺しを成すため……ではないが、まずはじいちゃんのいる山に行くことにした。

久しぶりに会いたいのと、神力を取り込んだ人がどうなっているのかを知りたい。

神と相対するんだからな、神力に耐性は持っておきたいだろ。

ぶっちゃけ俺も神力に対しても理解はあまりない。

そのことを知るためにも、じいちゃんに会いに行く。





いつもより短いです。


こちらもよろしくお願いします!

https://ncode.syosetu.com/n8553hz/

『最強の音楽家は何を奏でるか』

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