未奈の訓練Ⅰ
テスト8時間前に書き上げた人。
「天河パーティー! 先陣を切りすぎるな! あまり、皆とはぐれるでないぞ!」
「分かりました!」
「魔物の群れだ! 各パーティー、それぞれの陣形へ! 担当騎士は、一時見守り、危険とみなすと即座に対処すること!」
「「「「「「応ッ!」」」」」」
カイ「ふーん、弱いな」
鏡花「そんなこと言っちゃダメ!」
京 「なんか、初めてのお使いみたいだな」
愛 「私たちも、最初ああだったからね?」
いま、クラスメイト達は俺たちが来ていたのとは別の洞窟にいる。
推定レベル十二くらいの洞窟だ。
ダンジョンではあるが、まあ、気を抜かなければ死ぬことはない。
広いし、いくつかのパーティーを同時に見るとなったら、ここがいいだろうな。
ってなわけで、今俺たちのパーティーは高みの見物中。
騎士団長から、
「一応だが、いてくれ。我らでも対処できぬ場合に備えてな」
と言われたからだ。
俺も、
「いるだけだからな? 見るだけだからな? 危険だったら殲滅するからな?」
と言っておいた。
俺としては早く『アールビ―王国』とやらに行って【対影神剣】を手に入れたいのだが。
「キャー!」
「ウワアアアアアアッ!」
「こ、のっ! えいやっ!」
「みんなは、この俺が守る!」
勿論、最後のは勇者のセリフだ。
なんか、阿鼻叫喚が響いてて……
それに、皆を護るのは担当の騎士さんだ。お前じゃない。
どっちかっていうと、大技ばっかり打ちまくっている勇者の攻撃が周りのやつらに当たりそうだな。
魔力枯渇の心配もあるし、あいつ馬鹿だな。
一応、見ている景色を〈録画〉してあるが、見るのもあほらしい。
帰ってからでも騎士団長に渡しとくか……
そして、三時間後……
「はあっはあっ……クソッ!」
「ふう、疲れたわね」
「いやーあれが魔物か! 強かったな!」
「いや、馬鹿みたいに突進したから傷つきまくってるじゃん! もう、私の仕事が増える!」
現在、勇者パーティーが正義の部屋に集まり、一旦会議的なことをしている。
先程の実習での感想、これからの方針だ。
「さて……俺たちの討伐数は、四人で三十だ。未奈はどう思う?」
「んー、すごく正直に言うとね? カイ達のパーティーを見てきたからこそ、とても弱く感じるわね……殲滅力もそうだけど、統率性が無かったと感じたけど……二人はどう?」
呼びかけられた二人、というのは、正義と未奈の幼馴染のことだ。
勇者パーティー組むぞ~ってなった時に、正義が自ら会いに行ったやつらだ。
「私は、十分すごい戦いだと思ったけど……うっ! 血が噴き出す瞬間を思い出しちゃう!」
この女子が、品坂叶衣。このパーティーの、ムードメーカー的存在だ。叶衣がいなければ、何回死んでいたかもわからないと思えるくらいに役に立っている、【治癒師】だ。
「あー俺は、もっと暴れられると思ったぞ? 俺たちだけの時に行きてえな!」
そして、その“死にそうになったランキング”がぶっちぎりの一位のこの男。
四宮大吾。
圧倒的脳筋で、レベルが低いくせに突撃をかましてはボコボコにされ、叶衣に癒される、というのを繰り返していた馬鹿野郎。
【拳闘士】という、脳筋に拍車をかけるような職業だったのが悪かった。
「俺たちは、まだ弱い。レベルを上げなければ、この世界にいる原住民にも負ける。だから、早くレベルを上げに行こう。そして、魔王を倒すんだ!」
「おうよ! 一緒に行こうぜ! 魔王討伐に!」
「ああ!」
はあ。と、ため息をつく未奈。
現実が見えていないことに対する呆れのため息だ。
ちなみに今、皆の脳内は「あー早く刀欲しい~」である。
おい、カイ。創造系の魔法を創ったんだから早く刀作れや。と思っている。
未奈自身の得意な魔法を知りたい、ってのもある。
通常、人は皆一つだけ得意な属性の魔法がある。
京がいい例だ。逆にカイが悪い例だ。
そして、その魔法を極めたら、特殊なことができる。
例えば、氷の「凍結」を極めて時間停止。
例えば、火の「加熱」を極めて能力活性。
だから、得意な属性を早めに知りたい。というのが未奈の願いだ。
しかし、このパーティーが足を引っ張っている。
先ほど、正義が討伐数四人で三十と言ったが、その半分、十五を未奈が受け持っている。
さらにいうと、正義が打った大技が、他のパーティーに当たらないように相殺もしている。
カイ達を除いて、クラスメイト達の中で一番強いのは未奈だろう。
「はあ。ちょっと、抜けていいかしら? 疲れたから、先に寝させてもらうわ。じゃあ、おやすみなさい」
「あっ……仕方ない。明日も早いんだ。頼むぞ」
「はいはい」
「じゃあね~未奈ちゃん!」
「またね、叶衣」
よし。カイの部屋へ突入しよう。
…………
カイの自室
「ふわぁ~あ。で? あいつらのを見て感想は?」
「弱い」
「弱いな」
「弱かった……」
「だろうな。俺もそう思う」
想定以上に弱くて……
最後までグダグダ。攻撃もまともに通らない。統率が取れない。
あれで勇者は笑う。
ちょっと、騎士団の教育もぬるいな。
もっと痛めつけないとあいつらは分かんねえぞ……
「んー〈思念伝達〉重ねて〈拡声〉」
……
『あー騎士団長聞こえる?』
『カイか?』
『正解。悪いな。用件は短くまとめる。まず、あいつらへの教育方針。もっときつくしないと、間に合わないぞ?』
『確かにな……もっと、洞窟に潜らすか……いや、レベルの問題ではないな?』
『ああ。統率性の問題もある。あとは、技術に中身を持たせないとな』
『見よう見まねでは届かない領域だからな……剣術というのは』
『そうだな。もっと厳しくしといてな』
『分かった。他には?』
『アールビ―王国へ行ってくる』
『了解。ああ、ただ、浅井の願いは聞きいれてやれよ?』
『あー刀か。ちっ。了解。じゃあな』
『ああ。また』
「……刀かぁ……作るかぁ……」
「私たちも全力で協力する! だって! 未奈ちゃんだもん!」
「じゃ、俺もかな~。何だかんだ日本では世話になったし」
「私も! 勉強教えてもらってた!」
「作る本人よりもやる気あるんだな。お前ら。分かった。作るか!」
〈創造〉!
素材は生み出す。
どうせ作るんなら最高のものを。
神結晶、毒竜の牙、デュラハンの鎧―――
それに、魔力、雷、進化、愛を混ぜる。
そして、形を作り―――
文字通り、「魂」を込める。
完成……
「【白龍】だってさ。いい刀じゃないか?」
「いい刀……日本刀に引けを取らないんじゃない?」
「能力がとんでもねえな」
まず、莫大な魔力が内包されている。(カイの魔力)
速度に補正がかかり、速度が上がれば上がるほど、攻撃力も上がる。(京の、〈永双進化〉)
発動すると、肉体が一段階強化される魔法。(愛の進化の力)
愛故に、誰も束縛することはできない。(鏡花の愛)
自己修復機能付き。さらに強くなって。(超回復型進化体と、「魂」)
まだまだあるが、ざっとこんな感じ。
いや、強い強い。思ってた以上に強い刀になった。
勇者の聖剣をへし折れるくらいには。
あー渡しに行くかー
「じゃ、行ってくるわ」
「あーい」
「じゃ、その間ミーティングしとくわ」
「よろしく~」
『んっん~。浅井? カイだけど、今どこにいる?』
『え?』
バゴォン!
「「「え!?」」」
「痛った!」
「あっ。ごめんなさい!」
まさかの扉を開けようとした瞬間にあちらから開けて来るとは。
手を打って地味に痛かった。チクショウ。
「それで? 何用?」
「えっ。刀を取りに……って、あっ!?」
「おう。これ。【白龍】って言うんだ。十全に能力を発揮させてやれ。勇者の聖剣をへし折れるぞ」
「わあ……ありがとう! 時兎君!」
「ああ、それと……魔星武術の歩式の件だが……」
「うん……(ワクワク)」
「あー」
「……(キラキラ)」
「そのー」
「……(期待の眼差し)」
「……あい。教えます。感謝せよ」
「ありがとう!」
あんな目で見られたら断れねえよ。
だけど、簡単に習得出来たら困るんだが。俺も習得に時間かかったのに。
「えーっと、カイ。私達、どうすればいい?」
「先に寝るか、遊んどいて? ああ、訓練しといてもいいぜ」
「じゃ、私訓練で」
「俺も―」
「あ、この流れ私も? え、私の訓練って一体……」
「というわけで、俺たちは歩式の訓練だ」
「やったぁー!」
「お前キャラ崩壊してんぞ」
凛々しい感じはどこ行った。
まあ、大和撫子よりこっちの方が話しやすいかな~
さ、訓練だ。
訓練場へ移動~
――――――――――
「さて、歩式だが……三つある」
「魔星武術は一つの武式に三つの型があるんだよね」
「ああ、歩式は『進型・天歩』、『詰型・利生』、そして、最後に『跳型・翔跳勝兎』だな」
「一つ名前だけで強そうなのでてきたわね」
「まあ、翔跳勝兎なんかほとんど使わないしな。最速の移動手段なだけだし。一歩が爆発的な力を生むのが翔跳勝兎だからな」
「へえ、じゃあ、今回は天歩と利生の二つを教えてくれるのかしら?」
「そうだな。使いやすいし」
「お願いします!」
はあ~。人にもの教えるの苦手なんだがな。
こればっかりは仕方がない。
「まずは天歩だが……そうだな……人ごみの中道を爆走すると、絶対止まるタイミングがあるだろ? 誰かの目の前で。それを無くすのが天歩だ」
「パルクールの上位互換ってこと?」
「その認識で間違いない。が、それよりも難しいのは、速く魅せるパルクールと違って、最短で向かうのが天歩だ。だから、まずは慣れないとな」
「何に?」
「頭の中でルートを構築することだよ。最短ルートを頭の中で構築するだろ? そんで、その道に沿って走ったり跳んだりすれば速い」
「あー、そういうこと。え、じゃあどうすればいいの?」
「そうだな。まずは、いくつか障害物を置くから、それを避けてこっちまでたどり着いてくれ。タイムアタックだ」
「上から乗り超えるのは?」
「障害物大気圏まで伸ばしてやろうか?」
「すみませんでした」
俺の魔力が持つ限り、いくらでも〈創造〉できるしな。
さあ、タイムアタックだ!
ゴゴゴゴゴゴゴ……
「え!? ちょっ、こっの! ふん! えい! やあ!」
「……ふうん……」
「っぷはあ! ゴール! はい、どう!?」
「ぜんっぜんダメ!」
「あれぇ!?」
「出した障害物は三十個。そして、正しいルートを通ったのは三回だけだ。もっと頭を使おうぜ。そうだな……このルートを通ってみろ」
そういい、かなり遅いペースで駆ける。
最短で、かつ、障害物を最小限の動きで回避しながら進むため、とてつもなく大変だ。
俺も、安定してできるようになったのは、意外と時間かかったしな。
「とりあえず、行ってみるわ!」
「そうだな。じゃあ、三回ずつやってみろ。そのたびに障害物をシャッフルするから」
「了解!」
…………
「はあっはあっ……はあっはあっ!」
「お疲れ。お前すげえな。あれからぶっ通しで三時間か。もうみんな寝てるだろ」
「どう、だった?」
「かなりの精度になってきてるな。ほぼ最短ルートを最速タイムで走れるようになってる。明日は、利生かな~」
「利生……」
「じゃ、ゆっくり休めよ。じゃあな」
「あ、ちょっと待って!」
「?」
「えっと……いちいち時兎君って呼ぶのも面倒くさいし、私もカイって呼んでいいかしら?」
「別にいいけど、なんで?」
「面倒くさいからよ」
それ以外に理由なんてないわ。本当に。と、ブツブツ言っている未奈。
まあ、呼びやすいに越したことはないわな。
「ま、それじゃ、また明日な。未奈」
「! ええ、また明日ね。カイ」
……この瞬間、一つのトリガーが引かれた……
投稿頻度を落とさせていただきます。
新作の筆が進みすぎて……




