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うっぜえ。まじうっぜえ

毎日投稿キツイ……

「えー、もう部屋の鍵を適当に渡すので、勝手に振り分けてください」

「雑ぅ。エル雑ぅ」


 あの後、翌日詳しいこと話すから、もう寝てろ! となり、今は部屋の割り振り中だ。

まあ、エルがさぼっているんだが。


「だって……四十人弱も相手してられませんよ。ああ、それと、ザキポンさんの002号室は、呪われた部屋として使用禁止になりました」

「呪われた部屋(笑)か。そんで……」


 そこで、鏡花をナンパする男子を睨みつけながら言う。


「オイ。テメエハサッサト自分ノ部屋ニ帰レ」

「君は何を言っているんだい? 鏡花先輩は001号室にいるんですね? なら、俺が000号室に引っ越します!」

「HA?」

「え、なんで?」

「決まっているでしょう! ()()()()である鏡花先輩の近くにいるためです!」


…………


「……なあ、勇者って、残念なやつしかなれないのな」

「それ、私も思ったよ」

「というか、なぜ君が鏡花先輩の隣の部屋に? そこは俺の部屋だよ?」

「寝言は寝てから言え。000号室は俺の部屋だ。それに、鏡花はお前のものなんかじゃねえ。変態が」

「なんだと!? 誰が変態だ!」

「お前だ」

「~~~~ッ!!!」


 

はあ~めんどくさ。

……おっと、誰かが来てくれたか。ん? それも、ちょうどいい。この騒ぎを鎮めるのに持って来いの人物だ。

ツカツカ歩いてくる、黒髪ロングのポニテが似合う学級委員。

浅井 未奈(あさい みな)

超しっかり者で、他者に頼るより頼られる存在。

そして、正義の抑止力でもある。


「こら! また人に迷惑をかけてるんでしょ!」

「何を言ってるんだ。俺は、俺が信じる正義のために行動しているんだ」

「その正義のせいで何人迷惑被ってると思ってるの!?」

「誰にも迷惑はかけていないし、みんな俺の味方だろ? 何も問題ないじゃないか」


 浅井が、頭痛をこらえるような仕草をすると、


「あんたね、いつも自分の正義が~っていうけど、それが通じるのは一部の狂信的になってるクラスの女子だけなの。常識人、主に大人の男性には、全く通用しないただの我儘なの。いったい、何回言えばわかるのかしら」

「? 未奈も、現実を見た方がいい。正しいのは俺で、未奈は間違ってる。そろそろ分かってきただろう?」

「……ごめんなさい、カイ君。私は力不足だったわ。せめて、首根っこ掴んででも、引きずってでも違う部屋にするから。ごめんなさいね?」

「いや、なんか……哀れだな。いつか胃に穴でも開くんじゃないか?」

「うう……こいつ関連でしか話したことない人に慰められるの心にしみる……」

「〈心癒〉」

「あれ? なんだか、ココロが癒される……」

「一人で背負う苦労の報酬的な? まあ、心がやばいとなったら、言ってみ。いくらでもかけてやるから」

「あ、ありがとう……」


 ちなみに、ここまで浅井が頑張れるのは、否、頑張らねばならないのは、これでも幼馴染だからである。

家族ぐるみの付き合いの上、小中高と同じ学校だったため、この正義大好きマンの悪癖を治すべく、日々奮闘している。

まあ、全て無駄なのだが。

もう一人の幼馴染がこの悪癖に拍車をかけているというのもあるし。

 ああ、それと、この勇者(クソガキ)、鏡花に恋をしている。

それに、浅井も好きらしい。


…………


どつきまわすぞ、コラ。

これのどこが勇者だよ。ああん?

ハーレムなら、問題ない。ただ、こいつは頭がハーレムなのだ。

一応、クラスの女子からはハーレムなのだが、自身の好きな人からは少し微妙な反応すらされている。

浅井に関しては、まあ、うん、あれだ。

さっきの態度でよくわかるだろう。

別に嫌いではないし、むしろ正義のために頑張る姿はかっこいいと思う。

―――――人に一方的にそれを押し付けてなければ。

まあ、要するに浅井はいろんな面で苦労性なのだ。

そんな哀れな人の心は支えてやりたい。

なお、手伝うとは言っていないし、思っていない。


「鏡花先輩は、俺と隣の方がいいですよね!?」

「えっ!? う、うーん……」


 おっと、一応は裏表のない百パーの善意から来てるから、九素崎みたいに一刀両断できないのか。

返事を濁した感じになっている。


「まあ、もう私の隣の000号室は埋まってるから、諦めた方がいいんじゃない?」

「そこの時兎をどかせばいいでしょう! さあ、どうですか!?」


浅井おこおこタイム、発動!


「あんたね……さっき言ったばっかでしょ! ナンパより早く部屋決めしなきゃ! ほら、行くよ!」

「くっそお……未奈がそう言うなら……それでは先輩! また明日!」

「え、ええ。また明日……(できるだけ会いたくないなあ)」

「それじゃ私も失礼するわ」

「ああ、じゃあな」


…………


「なんかさ、めんどくさい勇者だったな」

「ほんとそれ。一応生徒会の副会長で、後輩っていうこともあったんだけど……九素崎と同じ匂いがする」

「……物理的に? 雰囲気的に?」

「雰囲気的に」

「まあ、確かに。あいつ、めっちゃモテる男子の敵のくせに、鏡花と未奈以外は眼中にないしな。なのに、対応はスマートに、優しくだからな」

「カリスマ性もあって、成績優秀、運動神経抜群だから、勇者向きなんだけれど……」

「鏡花が絡んでなければな」

「そうだね……」


 はあ。クラスには京しか友達のいない俺は苦痛だな。






~~~~~~~~~~







「はい! それでは、皆様に装備を配りたいと思います!」

「装備? それは、鎧とか、剣とかかい?」

「はい、そうですね。一応、皆様の職業に合った装備をお渡しできるはずです。それに、アーティファクトなので、最上位級の装備ですよ!」

「やった! そんないいものがもらえるんだ!」

「これはわくわくするな!」


……あれ?


「「俺(私)等、まだ装備貰ってないんだけど???」」

「ああ、カイ様達は、騎士団の特別訓練に混ざっていないので、お渡しできていないんですよね。今、この場にはないので、後ほど、お渡ししてもよろしいですか?」

「ああ、武器は要らないが、装備は欲しい。なんせ、制服だからな」

「確かに。ダンジョンにもぐった後のカイ大変だったもんね」


 血まみれになった制服を見て、『服これだけなのに……』と絶望したものだ。

まあ、〈洗浄〉と〈速乾〉を使い、綺麗になったのだが……はあ。

あれは辛かった。

そして、一人一人目の前に魔法陣が現れ、そこから服や、小刀、長剣、弓、魔法の杖、etc……様々なものが出てきた(俺等を除いてな!)。


「へえ、似合ってんな、みんな」

「そうだね。勇者とか戦士とかは鎧つけてるけど、弓使いとか、魔法使いとかは布っぽいもんね。まあ、素材は高価なんだけど」

「だな……おっ、京。お前、職業なんだったんだ?」

「ハッ、お前、ステータス覗けるんだろ? わざとか?」

「いや、わざわざ魔法使わねえよ。口で教えてくれたら手っ取り早いじゃねえか」

「なるほどな。俺の職業は……【暗殺者】だ」

「へえ、暗殺者か。固有スキルは……ってか、もうステータスウィンド見せてくれよ」

「ああ、確かに。〈ステータスオープン〉」



西凪京

職業:暗殺者

Lv:1

魔力純度:黄緑

称号: ……未獲得

固有スキル:気配消失

スキル: ……未獲得



「……ずりいぞ」

「なにがだよ。俺からしたら、お前の方がずるいわ」

「だってお前【気配消失】持ってんじゃん」


 気配消失というのは、気配隠匿系の最上位スキルである。

気配隠匿系のスキルを全部集めて合成して、ようやく手に入れられる。

それを最初から持ってるとかずりいだろ!


「俺なんか、【時兎】だぞ! 『使用不可』だぞ! この気持ちわかってくれよ!」

「あーなんか、お疲れ。でもお前、魔法と武術、それと知識だけで強いじゃん。何欲張ってんだよ」

「うるせえ。かっこいいスキル欲しいじゃん」

「確かに。ん? あれ? 会長どこに行った?」

「そこで女子トークしてる」

「あの人、容姿端麗、頭脳明晰で、運動神経抜群っていう三拍子そろってるしな。周りからも人気ある。あ~一緒に召喚されたお前がうらやましい」


 そう。一緒にいると忘れてしまうが、鏡花ってめっちゃすごい人なのだ。

生徒会長として、歴代最高の人気を誇っているし、なにより三拍子そろっていて、男女両方の注目の的だ。

だから、鏡花と正義が付き合ってるなんて噂も流れたんだが……

いや、なんか、鏡花が東奔西走して可哀そうだった。

噂を打ち消すのに必死になってさ。

まあ、まだ完全には消えてないんだけどな。


 さて……もういい頃合いだろう。


『エル。聞こえるか?』

『!? これは……ああ、〈思念伝達〉ですね?』

『そうだ。さすがだな。いきなり念話で返してくるところも』

『伊達に長年この国を支えてませんよ。それで、何の用ですか?』

『いや、もうそろそろ騎士団の方に移して、訓練に入った方がいいんじゃないか? いや、初日だから訓練の流れ、魔法、スキルのあれこれ。色々教えてやってくれよ』

『はい。もう皆さんの交流タイムは終了でいいですね?』

『ああ。あと、また俺と鏡花は別行動を取らしてもらうが……』

『もらうが、なんですか?』

『いや、希望する奴がいたら、そいつを俺たちと一緒に行動させてくれ』

『はい? それまた何故?』

『俺といた方が早く強くなれるからだ』

『まあ、確かにそうですね。分かりました。聞いてみましょう』


パンパン!


「はい! みなさん、これから、騎士団の訓練場に行って、強くなる手段や、魔法、スキルのあれこれを教えてもらいます! なお、職業に合った人が一人一人マンツーマンで教えてくれるので、安心してください!」

「おお! 魔法! スキル! 胸がたぎるな!」

「やっぱり、ファンタジーだな! 異世界って!」

「そこで、皆さんに聞きたいのですが、騎士団の方で習うか、カイ様達と行動し、強くなるか選んでください」

「「「「「!!!???」」」」」

「そういうことだ。俺についてくるか、騎士団で教わるか、選んでくれ」


 多少混乱するクラスメイト達。

すると、当然のごとく異議を申し立てるやつが。


「待て! みんな、村人のあいつについていく気か!? そんなことすれば、どんな未来が待っているか分かったもんじゃない。ここは、勇者である俺と一緒に行動すべきだ!」

「いや、そうしたい奴はそうしとけよ。俺としても向上心のない奴がいても面倒なだけだし。あ、もちろんこっちに来るとしても、鏡花がいるからって理由で来るような奴は追い返すから。そんくらい、魔法でどうとでもなるんだぞ?」


 そういうと、何人か出していた足を引っ込める。

まあ、そんなもんだろ。

俺、そんなに友達いないし。

村人なんて、信用出来たもんじゃない! とでも思ってんじゃね?

それよりは、勇者について行って、安全にお気楽に過ごしたい! とでも思ってるんじゃね?

知らんけど。

まあ、誰も来ない方が、自由ではあるよな。

ああ、あと、自分の強化に専念できる。

……寂しいけど。


「んじゃ、俺はカイの方に行こうかな!」

「京……いいのか?」

「ああ。だって、そっちの方が面白そうじゃん!」

「京……お前、マジでいい奴だな」

「だろう? もっと崇めよ」

「なんでだよ。それで? 他にはいないか?」


…………


「よし、わかった。じゃあ、俺たちはこのメンツで―――――」

「待って! 私も入る!」

「!? 愛!?」

「わあ、可愛い()! カイ、知り合い!?」

「いや、さっき抱き着いてたじゃねえか。ああ、キレ散らかしてたから分かんねえか」

「うん? 何か侮辱された気分……」

「そんなことより、この四人でパーティーを組むが、いいか?」

「私はいいよ」

「俺もー」

「私も私も!」

「よし……だそうだが、どうする? 勇者?」

「チッ……京、裏切るのか! 愛も、なぜそんな男のもとに行くんだ! ああ、鏡花先輩なら、こっちに来てくれますよね? ねえ?」


…………


 俺は、クラスメイトに眼で訴えかける。お前ら、こいつの下についていいのか? と。

すると、浅井から口パクで帰って来る。

『ね・ん・わ』

……あ~はいはい。了解。


『で? 人に念話を使わせてまで、何が言いたい?』

『その点については本当にごめんなさい。でも、こっちの方が正確に伝わると思って』

『別にいいぞ。それで? 何が言いたい?』

『もう、クラスメイトみんな決まってるのよ。あの、正義君について行けば、何も問題ない! 強くなって、魔王倒して、崇められて……人生勝ち組だ! みたいな脳みそで。実際そう甘くはないはずなんだけれど』

『仕方ないだろ。創作で、よく異世界無双系読んでたんじゃね? それで、勘違いしているとか。ってか、実際敵の正面に立って殺せるのかってのが問題だよな。あれ? なんでお前そこまで現実見えてんのに、こっちに来なかったんだ?』

『伊達に十五年以上幼馴染やってないわ。私が抑えなきゃ、正義の悪癖はもっと悪化するでしょう?』

『……そうだな。まあ、周りのやつらが拍車をかけまくってるせいで、本人は気づいてないけどな~』

『仕方ないのよ。意外と馬鹿だから……しかも、完全に善意で行動するから、注意もしにくいのよね……』

『苦労人だな。まあいい。困ったらうちに来ればいい。パーティーに入れるかはともかく、心は癒してやるから』

『あ、ありがとう』


「では、正義さんのメンバーは、私について来てください!」

「ああ、よろしく! エルさん!」

「(スルー)カイ様は、ご自分でされるのでしょう?」

「あー、そうさせてもらうかな。ああ、そうそう。三日後、じいちゃんのいる山に連れてってくれ。魔力純度白にしてるから」

「はーもう何を言っても驚きませんよ。ええ、まったく」


 さ、多少イレギュラーなこともあったが、こっから一気に駆け上が(強くな)りますか!


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