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レベル上げⅡ

長くなりました。約六千文字です。

「数が多いな……」

「私、もう動けないから、後はよろしく……」

「まあ、寝てろ。全部終わらせてやる」


 昇華神剣と魔浄聖剣を両手に構えながら、相対するのは狼の魔物―――ワーウルフ、だったか?

やばいな……経験値効率がいい敵、強くなるために必要な敵以外調べてなかった……

まあ、見るからに狼であるこいつらが遠距離攻撃を持っているはずがない。

ならば……


「〈終末の罪火〉……おお、手抜きでよかった」

「え……避けた!?」

「そりゃ、生物皆死にたくはないだろ」


 まあ、俺も一匹も当たらずに避けるとは思わなかったけど。

全員綺麗に飛び退きやがった。

超魔法は初級魔法を合成させた魔法のため、魔力消費量がとびきり少ない。

しかし、〈終末の罪火〉クラスを連発すれば、さすがに俺も無視はできないレベルになる。

そもそも、俺村人だから魔力量少ないしな。

よし、まずは斬るか。


「右目、開眼【限界突破(リミットブレイク)】」

「ギャオ!? ウウウウウウ……ワオ!!」

「うるせえな……魔星武術、剣式、攻型」

「「「「「グワアアアアアア!!!」」」」」

「百花繚乱」


 ズバババババッ!


「あ、あれが、剣式の攻型……なんて、殲滅力……」


 カイの使う魔星武術の共通点。それは、全て効率的で合理的なのだ。

我武者羅に攻撃してるように見えて、どう攻撃したら反撃されないか、どう斬りかかったら押し負けないか、反撃されても避けられるだろうか。

そんなことを全て計算されつくした武術。それが魔星武術だ。

ステータスが負けていても、勝負に勝てるのが魔星武術だ。

それを、今ステータスが勝っているカイが使うとどうなるか?

答えは……


「疾ッ! らっ! フン!」


 一方的な蹂躙。殲滅だ。

その剣一振りごとに死体が詰みあがっていく。

そんな台風のような場所の中心にいるカイは血まみれだ。

無論、返り血で。



五分後……



「チッ、数が多いな!」

「カ、イ。魔力回復ポーション飲んだけど、まだ回復には遠い……」

「そうか、まだ魔力枯渇の苦しみを味わったことがないから、慣れてないのか……ッらっ!」

「「「「「グルルルル……ガウッ!」」」」」

「やかましいっ!」


 くっそ、埒が明かねえっ。

見たところ、まだ二百匹はいる。ここからまた増援が来たら困るな……

んー、かといって、俺の技術じゃこいつらに魔法を当てるのきついしな。

しかも、こいつらめっちゃ回避に専念してきた。

勿論全部斬れるんだが、無駄な体力を消費するのはもったいない。

避けられず、一撃で殺れる魔法か……ああ、そうだ。

あれがあんじゃん。


「よし、実験体(モルモット)になれ……〈弾丸(バレット)〉」


 ドパアァン!!


「「「ギャオッ!?」」」

「うん。断然効率よくなったな」

「え……カイ、〈弾丸〉使ったの!?」

「ああ。ちょうどいいしな」

「……まあ確かに」


 〈弾丸(バレット)〉―――それは、初の異属性での超魔法同士の合成だ。

派生含む、八属性すべての最上級超魔法、そのすべてを二つ分入れた。

〈圧縮〉の上位版〈高密度超圧縮〉により、魔法陣を小さく、魔法を弾丸のような形状にするようにした。

そして、最上級クラスを十六個同時に使用するため、魔力の消費がとんでもないことになるのだが、そこのところに抜かりはない。魔法陣の真ん中には、先ほどの〈高密度超圧縮〉と、〈魔力効率Ⅴ〉、〈魔力収束Ⅴ〉、〈魔力収集Ⅴ〉を入れているため、かなり少ない消費で足りる。

なお、〈終末の罪火〉にこのシステムを付けられなかったのは、バランスが合わなかったからである。

〈弾丸〉ならば、中心の魔法陣に様々な魔法を入れても、周りの魔法が重く、多いためバランスが取れる。

しかし、〈終末の罪火〉は、周りにあるのは〈業火〉のみ。真ん中には〈圧縮〉を入れるしかなかった。


 まあ、完成したはいいけど、どんぐらい威力が強いか分からなかった。

そりゃあ、最強クラスの魔法を詰め込みました! んで、圧縮しました! って魔法を部屋の中でぶっ放すわけにはいかない。結界が壊れてしまう。

というわけで、こいつらに撃ってみたのだが……

うぅん……やっば。


 色々な魔法を詰め込んだ分、火力は申し分ないし、風属性の派生、雷属性による電磁加速もついている。

水の派生氷属性による貫通力など、様々な効果があるため、実際の威力はとてつもない。

なお、敵に触れた瞬間、貫通しようがしまいが爆発する仕様(火属性)。

この程度の敵なら一撃だけで何匹も屠れる。

利便性も使用魔力量も〈終末の罪火〉より強いってな。

まあ、殲滅力なら広範囲に作用する最上級魔法の方がいいんだけど。


「なんて……なんてむごい光景……弾丸使っただけで、直線状の敵が全員死ぬじゃん」

「ま、こっちに近づいてきたやつは、ッ! 斬るほう、がっ! 早いけどな!」

「よく聞こえたね。ん~? 女の子にはならないの? 結構期待してるんだけど」

「やかましい! まだ、完全には克服できてないんだよ! ってか、お前結構余裕だろ! ……ふう~だいぶ減ってきたな。よし、あれを使おう」

「あれ? え、もしかしてアレ?」

「そう、アレ。この数なら問題ないだろ。援軍も〈魔力感知〉にも引っ掛かんないし、こいつらだけなら試し打ちでもしてみようかと」

「……ある程度通気性良くないと、一酸化炭素中毒になるよ」

「……まあ、いざとなったら風魔法使うわ」

「了解。こっちに被害とばさないでね?」

「任せとけ」


 鏡花と言い合っている、アレ、とは、広範囲殲滅魔法だ。

さっきはまだ数が多かったため、撃ち漏らしがあった時に魔力枯渇状態を狙われるのはマズイからな。

この魔法は、さっきの必要魔力量を減らす魔法陣セットを使っても、全快状態から半分は持ってかれる。

だが、今作った魔法の中では殲滅力は抜群だ。その魔法の名は


「〈魔神荒狂凶葬破〉」


ドドドドドドドドッッッ!!!!!


…………


「……うっわ。悲惨な技だね」

「俺も思った。まさか、跡形も残らんとは」


〈魔神荒狂凶葬破〉は、今持ちうる破壊する系の超魔法を全部融合してみました! みたいな魔法だ。

魔神が暴れた後みたいになるといいね、という由来である。

名前通りになってしまったが。

ちなみに、合体させた魔法の数、中心の魔法陣を除き五十個になる。

勿論、その中には圧縮されてない〈弾丸〉も入っている。

破壊力なんて計り知れないだろう。

そもそも、この魔法の神髄は、やろうと思えば王都丸ごと爆破できるという点だ。

破壊力だけならば、〈弾丸〉の方が強い。なぜなら、高密度で圧縮されているからだ。

だが、その性質上、直線状の敵しか倒せない。

しかし、この魔法ならば、超広範囲をほぼ同程度の威力で爆破できる。

……これが初級魔法って言ったらみんな驚くかな。


「うわー狼の死体すら消えたよ。ほんと怖い技だ」

「いや、まあ、実験できたからいいだろ。それ、より、魔力枯渇が、キツイ……」

「おっと、魔力回復ポーション飲みなよ」

「ああ、サンキュ……おお、さすがに禁忌級のポーション。効果は抜群だ」

「ポ〇モン?」

「違うわ。それで、どうする? もう帰るか? 俺はどっちでもいいけど」

「んー帰ろうか。いろんな実験できたし、また、明日来ようよ」

「そうだな。そうするか。んじゃ、また競争するか?」

「エルに怒られたのもう忘れたの?」

「すいませんでした」


 あれは忘れられない。めっちゃ怖かった。

なんか、顔が怖いんじゃなくて、背後に般若が見えるんだよな。

漫画でさ、ゴゴゴゴ……ってあんじゃん? あれ、本当だったんだな。

すぐ魔法発動できるように魔力を循環させていたからな。

一回、返答を間違えたら、足元に禁忌級の魔法陣が浮かんだ。

殺意の高さだろ……

はあ。というわけで普通に帰るか。


「忘れ物は無いな~?」

「うん、特に何も持ってきてないしね……って、うわっ!」


 どこに潜んでいたのか、狼が飛びかかってきた。

今から剣を抜くには遅すぎる。かといって、拳は痛い。ならば、


「うらあ!」

「ギャオン!?」

「え……それって、ブラック(マルチツールナイフ)!?」

「ああ、ナイフモードでぶっ刺した。一応心臓と魔石を破壊したから、死んでるはずだ」

「……? あれ? ん?」

「どうした?」

「私は詳しく読んでないけど、ちゃんと作った剣とかじゃないと、ナイフごときじゃそういう魔物には刺さらないんじゃないの?」

「だろうな。しかも、これ地球の物質だしな」

「え? じゃあ、なんで刺せたの?」

「さあ? オーダーメイドだし」

「??? そんなものかな……?」


 たしかに、なんで刺さったんだ?

地球の時からの癖で、虎相手にやっていたのを、魔物にしちまったが、普通に刺さってくれた。

ちなみに、昨日の夜、〈究明〉してみた。

すると、


『測定不能』


と、出た。

いや、〈究明〉はそこまで高い超魔法じゃないけどな? 少しは分かると思ってたんだが。

超魔法は、基本、同階級の普通の魔法より強い。

それは、炎系を鏡花と試し撃ちしたあの時に分かっただろう。

まあ、単純に初級魔法をめっちゃたくさん使うのと、圧縮するのはまた違うしな。


「はー着いた着いた。今日はさっさと寝ようぜ」

「そうだね。明日も行くの?」

「んーそうだな。鏡花は行けるか?」

「行けるよ。今度こそ魔力量の調節するもん」

「もん、じゃねえよ。あ、レベルどんだけ上がったか見ておくか。〈ステータスオープン〉」



時兎カイ

職業:村人

Lv:54

魔力純度:黄

称号:魔狼殺し・殲滅者・挑戦者

固有スキル:時兎

スキル:超越



「……なんじゃこりゃ」

「……急に強くなったね。スキルも手に入れてる」

「えっと? 称号はっと」


魔狼殺し

対魔物へのステータス×1,5倍

入手条件:一度の戦闘で狼を五百対以上討伐


殲滅者

個対多の戦闘の場合、ステータス×2,0倍

入手条件:一度の魔法で二百体以上の殲滅


挑戦者

経験値取得量、ステータス上昇率向上

入手条件:神の定めに逆らう


「ほんとになんなんだよ」

「主に、挑戦者だね。神の定めに逆らうとは? って感じだよね」

「? なんか悪いことしたのか?」


 スキルの魔狼殺しなど、魔物を大量に殲滅した時に得られるスキルは対魔物戦で絶大な効果を発揮する。殲滅者の活躍の場面は分からないが。

挑戦者の効果である成長率向上は、すごく助かる。

聖女と同じレベリングしても、明らかにこちらがレベルが上がるのが遅いからな。

意味の分からんスキルではあるが、まあ、あって困ることはない。


「ん? スキルに【超越】ってのがあるんだけど、これなんだ?」

「……なんかさ、ここ数日で急に人間やめてるよね、カイ」

「……開眼なんて持ってる時点で今更だろ」

「まあ、確かに。人間の持つ力じゃない件について」

「失礼な奴だな。お前だって、王族に好かれやすいんだろうが」

「なっ! 大して役に立たないスキルですけど何か!?」

「そこまでは言ってねえよ。んで? 超越はっと」


超越

相手とのステータス差が拮抗している時、必ず上回るように調節される。

入手条件:レベル差50以上の敵の討伐


「おお、便利なやつ来た。もうちょいで勝てん! ってやつが無くなるわけだ」

「逆に、圧倒的に負けた! ってやつが出て来るかもね」

「やめーい。不吉やろがい」

「そう? ま、いいか。早く帰ろ?」

「お、おう……(なんか、様子がおかしいな。少し元気がないように見える)」

「はあ~お腹減った。帰ったら、食堂に寄ろうかな!」

「そうだな。俺は別に屋台でもいいけど」

「んもー! いいじゃん。城で食べられるんだから。しかも、王族クラスの」

「食いしん坊か」

「ち、違うよ!」

「はいはい。早く帰るんだろ?」

「うん! 行こう!」


 ……気のせいか?

だが、少し落ち込んでいるように見える。

いや、まあ初めてのダンジョンで、しかも魔力枯渇したから、辛いのか?

……まあ、エルに任せるか。あいつ、今俺らのこと見張ってるからな。

最近、〈魔力感知〉のおかげで、色々な目に見えない物を察知できるようになった。

よって、〈陰影〉を使っているエルを見つけることができる。

そこの物陰に隠れているエルに、アイコンタクトを送り、後で鏡花に接触するように計らう。

これでうまくいってくれるといいんだが……




鏡花視点―――――


 はあ……

私は聖女という特殊な職業でこの世界に呼ばれた。

成長率、魔力関係、ステータスの高さ。全てにおいて、トップクラスだ。

なのに。

それなのに、村人であるカイに全て負けている。

確かに、彼には【開眼】や、超魔法、魔星武術などの様々な武器がある。

しかし、私だって、聖女という武器がある。落ち着きながら、一つ一つ丁寧にすれば、少しは役に立てたのかもしれない。

だが、実際は違った。

スライム如きでハイテンションになって、いきなり魔力枯渇になって、挙句、カイに助けられた。

なんてダメな女なんだろう。


「んー、でもさあ、初めてダンジョン潜って、いきなり戦える方がおかしいんだよ。しかも、普通標準レベルよりも上げてから挑むのが普通なのに。初戦闘でいきなり魔法ぶっ放して、魔力枯渇になることって、意外とあるから大丈夫だよ。ってか、騎士団から何人か連れて行けばよかったのに」

「ッッッッッッ!!! え、えええ、エルぅ!???」

「やっほー遊びに来たよ」

「なんか、この流れ前にもやったよね! うん、やったよ!」

「ああ、初日の夜にね。あの時もなんかうじうじしてたね」

「うううう……仕方ないじゃん! 自分の好きな人と一緒に行動できてるのはうれしいけど! 役に立てずにただのお荷物だと! 意味ないじゃん!」

「じゃあ、何回も挑戦すればいいじゃん」

「え?」

「お荷物になりたくないなら、何回でも挑戦して強くなればいい。役に立ちたいなら、一緒にいればいい。想う気持ちが誰にも負けてないんだったら、こんなことでへこんでる場合じゃないでしょ! あなたまだ若いんだから! 乙女は度胸でしょ!」

「……エルって、確か十は―――」

「〈拘束〉!」

「あぎゃんっ!」

「……とにかく! うじうじ悩んでないで、とにかく行動起こすこと! 分かった!?」

「はいっ! 分かりましたあっ!」



 ……えっと、カイ様。これでよかったんですよね?



鏡花が……いたたまれない。

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