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これがカオスでしょ

……九素崎嫌い。

 一瞬の光の本流に巻き込まれて俺が見えたのは……よく異世界漫画で見るお城だ! いや、正確には俗にいう謁見の間だ!


「まずは感謝と詫びを入れよう。ありがとう勇者殿、そしてすまない、皆様方」

「おい。てめえらはなんだ?」

「くっそ……むっちゃ恥ずかしいし屈辱的だけど、九素崎と同じ意見だ」

「てめぇ……! い、いや、水無月先輩もそう思うっすよね? あれ?先輩?」

「……キタッ!……」

「なんて言ったか聞こえな……」


 忙しい奴だなオイ。しかも、王様らしき人の顔見ろよ。『話だけでも聞いてくれ』って顔してんぞ。

九素崎は先輩にかまってちゃんしてるし、その先輩も……あーうん、下向いてなんかぶつぶつ言ってる?でも笑ってるし……カオスか。


「あのー、すみません。こんなバカが集まりましたけど、状況を教えてもらえませんかね?」

「あ、ああ……そうだな」

「そうだ! 教えやがれ! なんか知ってんだろうが!」

「分かった説明する。話すから、少し静かにしてくれ」

「本当にうちの馬鹿がすみません」

「んだとゴラァ!」


 いやマジでうるせえ、こいつ。耳栓欲しいわ。


「ふぅー私も落ち着いた。状況を教えてもらってもいいかな?」

「お、まともな人間が復活したわ。なんかすごい心強い」

「あ、先輩、今から話聞くんです。隣でどうですか?」


 なんかいっそ尊敬するほどの、ナンパだな。

ってか、椅子とか決まった席ないのに、隣ってなんだよ。


「あのぉ……説明をしてもよろしいですかねぇ……?」

「ああ?」

「ヒッ! す、すいません!」

「この女性不憫だな、オイ」


 はあ~、と、隣でにらまれてビビっている女性を片目でちらりで見ながらため息をつく。

少し静かにしてくれないかな。まじで。


「混乱されるのは分かりますが勇者様方、少しよろしいですかな?」

「いや、ほんとに、お願いします。こいつら聞いてなくてもいいんで、俺だけでも聞きますから、説明お願いします」

「ん? 私も聞こうじゃないか」

「あ、先輩が聞くなら俺もききます」

「ふ、ふむ。簡単にいうと、お主等はこの、王都に勇者召喚されたのだ」


 ゆ、勇者召喚!? 夢にはギリギリ見てない勇者召喚!?

九素崎はこっちの世界(ファンタジー系)の住人じゃないので、困惑してる様子。

先輩は……いや、まあ、召喚前に知ったけど、ファンタジーな人だから事情が分かるのか。

……先輩、そのキラキラした目を抑えてください。


「勇者だぁ?」

「ああ、勇者だ。十数年前に魔王が復活してな。それから魔族の動きが活発になっている。前回―――五年前の戦争の時は痛み分けのような形だったが一応勝利した。しかし、魔族のほうが身体能力も高く、魔王の庇護下における魔族は強すぎて、わが王国軍では手も足も出ん。そこで、やむを得ず最後の手段、勇者召喚という禁忌に踏み切った」


 ふむ。だいたい、ネット小説で見たような感じか。

このぐらいなら混乱することもないな。うん。


「おい、王とやら、一つ聞こうじゃねぇか」

「九素崎、地雷踏み抜いた」

「態度ぉ……」


 周りの兵士らしき人が額に青筋を浮かべているが、殺しに来ない。あらかじめ王に言われていたっぽいな。


「たとえ異世界と言っても、見境なく召喚するわけじゃねぇんだろう? それならもっといいやつがいたはずだからな。そこんとこなんかあんのか?」

「ああ、それについてはな、こちらの世界に適応する魔力を持っているか否かだ。合わなければ拒絶し、肉体すら滅ぼすかもしれない。故に、選ばれたのがお主等なのだ。すまない……」

「クソッ……そういうことかよ……」

「ふーん。ってかさ、日本にいた頃にも俺らに魔力があったんだな。知らんかった」

「そうだよねー。私も思った」


 これ、話しながら思ったけどさ、九素崎は一人で絶望してるけど、のんきな会話してんな俺等。

あっ、そういえば、帰れるんかな、こっちから。


「あのー、王? そういえば、こっちの世界から、元居た世界に帰ることはできますか?」

「できんな」


 わお、即答だ。ダメ元とはいえ、少し悲しい。

まあ、模範解答だわな、そんくらい。


「元の世界にいた親、友達、というか、元の世界への未練もあるだろうが、すまない。これしか我らには手段がないのだ。本当に身勝手で、横暴だと思う。しかし、そんな我らを見放さず、王国のために力をふるっていただけないだろうか……!」

「いや、いいけど?」

「むしろ最高」

「え……え、先輩!? 時兎ォォォ!」

「ん? どうした、九素崎。そんな、先輩はいいけど、何勝手に決めてんだ時兎クソ野郎! みたいな顔して」

「全部分かってんじゃねえかぁ!」


 いや、顔に出とるし、むっちゃ。

いや、普通に考えてさ。


「お前、ここで協力しとかねえと、戦闘手段……はあれだけど、金も、知識も無い俺等がどうやってこの世界で生きようとしてんだよ。しかも、どうせ帰れんし。協力しようぜ」

「時兎君の言うとうりだ。困っている人を助けるのも人間の強みだよ」

「はい。この国に忠誠を誓います」


 こいつ変わり身早いな。


「ふむ、お主等は、協力してくれるのか? この愚かな王に……」

「ああ、なんでそんなに自責してるかはわからんけど、国民を必死に守ろうとしてていいんじゃね? ま、あくまで俺の感想だけど」

「私も時兎君と同じだ。人を守ろうと必死になってる人を見て、手伝わないやつが何処にいる」

「そ、そうですよね! 俺も先輩に同じです! せ・ん・ぱ・い・に!」

「うるせえ」


 ま、この時の判断は間違えてないと思うけどな。俺は。


「お主等……ありがとう、ありがとう。お主等の厚意、無駄にはせぬように尽くさせてもらう」

「お、王よ! 涙をお拭きになってください!」

「兵士の反応速度が異常だな、オイ」


 王が流し始めた涙をふくように動き始める兵士。洗練されてるぅ。


「そうだ、軽く自己紹介をしようではないか。互いの名を知らなければな」

「だいさんせーい」

「おなじくー」

「ふむ、では、私は王都の王、グルナだ」

「俺は、時兎カイ……こっちでは、カイ・トキトだ」

「わ、かっこいい。えーと私は、キョウカ・ミナヅキだよ」

「俺は……クソザキだ」


 ん? こいつフルネームは?


「そういえば、私も九素崎君のフルネームは知らないな。教えてくれるかい?」

「呼びにくいし、言え」

「絶対嫌だ」

「そうか、なら、お前のあだ名はザキポンな」

「!? はぁ!? なんでだこの野郎!」

「え? お前がフルネーム言わねえから、あだ名、ザキポン。いやぁ~爆☆誕!」

「ふざけ……」

「いいじゃないかザキポン。かわいいと思うぞ? 私は」

「!? ザキポン最高ですね! 俺もそう思います! ハイ!」

「おいこら、九素崎」


 こいつ先輩に言われたからってぇ……


「ふむ、カイ、キョウカ、ザキポンだな。分かった。これから、職業適性検査に入るがいいか?」

「職業適性? なんだそれ」

「ふむ、呼ばれたのは勇者のはずだが、他の職業かもしれんからな。あくまで、この世界が、未来に変革をもたらす者を選んだだけだからな。我々も知らんのだ」

「そういうことか」

「いま、さっきザキポンに睨まれていたやつが取りに行っている。もうすぐ来るはずだ。ここからはそいつに任せる……お、来たか。ご苦労だな、エル。では、私は仕事に戻るぞ」

「はい! お任せください。あ、申し遅れました。私、エルと申します。歴史の記録係をしています。よろしくお願いします」

「ん、よろしく」

「よろしくね」

「ああ?」

「ヒッ!?」


 こいつすぐ脅すな。目で。


「あ、えっと、これから、この水晶に手をかざしてもらって、その色で判断いたします」

「うん? こうかぁ?」


 その瞬間、謁見の間全体を虹色の光が照らした。

どっちかっていうと白みがかった虹色か。


「うえ!? あ、ザキポンさんは『勇者』ですね。次、キョウカ様、お願いします」

「えっと、こうかな? おお、きれいな虹色じゃないか」

「えーっと虹色に近い青色なので、『聖女』ですね」


 え、先輩も優秀な職業かぁ。ってか、さっきよりも光が強い気がするな。


「えーっと、カイ様も、お願いします」

「了解……お? あれ? 俺やり方間違ってる?」

「い、いえ、あっていると思われますが……」


 え、やばいんだけど。

そこで、俺と、エルさん、そして先輩たちが見つめる水晶は、すごく輝く―――


黒色に染まっていた。




今回の話は、コメントを採用さしていただきました!

先輩が言えば、全部納得する、九素崎……

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― 新着の感想 ―
[一言]  ザキポン……真面目に使われると笑うなw  フルネームは九素崎奔ノ介(くそざきぽんのすけ)でいいんじゃないですか(笑)
2021/12/29 21:09 退会済み
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