超魔法
ようやく……ようやく主人公が魔法を使い始めた……
「よし、創るか!」
「うん! ……だけど、どうやって創るの?」
「今から説明する」
エルと別れた後、俺は言われたとおりに自室に帰ってみた。
すると、ドアに張り付いてる女子がいた。
……
ドアに張り付いている女子がいたんだ。
まあ、予想通り鏡花だったんだけど、
『何してんの?』って聞いたら、『ふえっ!? い、いや、な、ななな、なんにも?』と、言われた。
怪しさ満点だったが、聞くのは恐ろしいので詮索はしない。
そして、中に入り、台座を置き、今現在。
「えっと、スキルは使えるよな? 想像構築」
「うーん? 使えるかな? どうやって使うの?」
「頭の中で想像するんだ。何にも書かれていない魔法陣をこの台座の上に乗っけるのを。イメージしにくいなら、【想像構築】って言ってみるといい」
「ふう……【想像構築】」
ブオン……
「おお、すげ! できてるぞ!」
「よかったぁ~あれ? カイは、魔法使えるの?」
「必要なのは初級魔法だけ。そして俺は村人」
「なるほどね。だから問題ないのか」
「そうだな。じゃ、やるか。まずは炎あたりから手を付けるか?」
「うん。どんなの創るの?」
「初級魔法の〈火弾〉を十個まとめて、圧縮して、中級魔法である〈炎弾〉を超えるやつを創る」
「よくわかんないけど、頑張って!」
「ああ」
今、台座に刻まれている魔法陣は大きな二重の円が張り付いてるだけ。
その一重目と二十目の間には、どの魔法にも共通して必要な文字が刻まれている。
この円の内側に魔法を入れていく。
まず、初級魔法の〈火弾〉を十個、円に沿うように入れていく。
よし、綺麗に収まるな。
そして中心に工業系の初級魔法の〈圧縮〉を入れることで、十個の火を一つにまとめ、魔法陣もとてつもなく大きくなるのを防ぐ。
ちなみに、これを村人以外のやつが使おうとすると、魔法陣の緻密さに使用不可になっている。
「よし、完成! 〈紅蓮弾〉!」
「おお~! かっこいい! えっと、使えるんだよね?」
「……村人だから使えるハズ。まあ、いくつか創ってから究極訓練場で試し打ちしてみようぜ」
「そうだね!」
よし、じゃあ、炎系は完結させるか。
〈紅蓮弾〉を十個並べ、圧縮することで、〈業火〉へ。
〈業火〉を十個並べ、〈終末の罪火〉へ。
まだいけるが、さすがに終末の罪火は最上級魔法と同クラスのため、一応止めておいた。
これ以上やれば、魔力回路が行き渡らずに不発になる可能性がある。
ま、とりあえず、炎系は完成かな。
「よし、試し打ちに行こうぜ!」
「うん! 一応、私の最上級魔法と正面衝突させてみる?」
「そうだな、威力の確認もしたいし。ん? そういや、魔力純度ってなんぼだ?」
「へ? まりょくじゅんど? なにそれ」
「あれ? 説明してなかったっけ? 魔力純度はな……」
大雑把に説明しておく。
大体の魔法を使うには魔力純度の高さが関係する。
最上級魔法は黄色以上でないとだめだし、初級魔法の〈不可式具象〉はステージが白以上、つまり、白か白銀でないとダメだ。
純粋な威力ではないと思うが……
「ああ、あれね! カイのおじいちゃんの山がどうとか!」
「そうそう。それ。ちょっとステータス見せてくんね?」
「うん。〈ステータスオープン〉」
水無月鏡花
職業:聖女
Lv:10
魔力純度:白
称号:高貴なるもの
固有スキル:想像構築
スキル: ……未獲得
……いや、まあね? 分かってたよ?
だって、聖女だもんな? ヒロインだもんな?
だけど、この扱いの差はひどいと思うんだ。
そもそも、俺がレベル5ある時点で、ん? とはなっていたけど、10て。
しかも聖女だから、同じレベルでも魔法の威力が村人とは違う。
そして、称号。
これは、この世界では重要なものだ。
何らかの理由で入手した称号は、様々な効果を発揮する。
成長効率の向上、ステータス向上、対モンスター威力アップ、職業の変更……
こんなに色々な効果がある中で、【高貴なるもの】とは、どういった効果なのだろう?
「んーちょっと、その部分押してみて」
「うん。高貴なるもののとこ?」
「そう、そこ」
「えーっと、貴族、王族、皇族の印象向上率上昇。だね」
「うぉうぉう。マジか。そういう、高貴かよ。で、魔力純度白か。なら問題ないな」
「そう? じゃあ行こうか!」
――――――――――
「さて、じゃ、ぶっぱなすぞ?」
「ばっちこーい!」
「〈紅蓮弾〉!」
「おお! 使えたね! 〈炎弾〉!」
ジュウウウウウ……ボウ!
「え? 相殺? 見立てと違うな……聖女で、レベルも5差があれば、押し負けると思ったんだが。それだけ、この魔法の威力が高いってことか……よし、次行くぞ!」
「おっけーい! かもーん!」
「〈業火〉ッ!」
「〈魔炎〉ッ!」
ゴオオオオオ……ブワッ!
「また相殺。ってか、これが魔法なんだな……少し感動しそう」
「ああ、カイは魔道具とかはあるけど、魔法を使ったことはないんだったね。ちょっと楽しくない?」
「めっちゃ楽しい!」
「ね! よし、次行こう!」
「おう! 〈終末の罪火〉!!」
「〈烈火滅却〉!!」
ゴアアアアアアアアアッ……ドチュン!
「やっぱ、相殺か。でも、すごくね? 初級魔法だけで最上級魔法と打ち合えるんだぜ? それも聖女の」
「確かに。まあ、私の実力不足ってのもあるけど、この世は職業に色々ゆだねられるからね」
「……これを見せたらさ、昔職業差別して村人全滅させたやつら、どう思うんだろうな」
「……そうだね。あんなの、私たちの世界では許されないどころか、数十年前にもダメだったもんね。でも、これはこっちの世界の問題だから。私たちが口出しすることじゃないんだろうね」
「だな」
少し、昔の話でしんみりしちまったな。
まあいい。
初級魔法の合成で今までの魔法を超えたのか……
歴史的偉業だ! きっと!
そうだな。これからは、初級魔法を合成させた魔法のことを、
「超魔法」
「え?」
「初級魔法を合成させた魔法のことを超魔法って言うことにする」
「いいね! かっこいい! えっと、中級超魔法〈紅蓮弾〉、上級超魔法〈業火〉、最上級超魔法〈終末の罪火〉ってなるの?」
「んーまあそう。序列はそんな感じだが、めんどくせえから全て、超魔法、ってくくりにする」
「なるほどね」
「さ、魔法が創れるようになったことだし、これから忙しくなるぞ!」
「おー! ……いや、今までもいそがs……なんでもない」
少し余計なことを言いそうになるのを、わざわざ右目を開眼させて光らせて睨み、封じる。
それじゃあ、帰るか。
ん?
「ちょっとさ、俺両目開眼させて、身体能力に極振りして全力で帰るからさ、鏡花も魔法で全力で帰ってみてくんね?」
「え? どうしt……ああ、移動の時開眼するか、魔法を使うかで悩んでるんでしょ」
「おお、よくわかったな」
「そりゃ、なんでも分かるからね」
「そんな恥ずかしいこと言うなよ。こっちが照れるだろ」
「///」
「ま、いいや。そこまで分かってるんなら、全力で行くぞ? こっちだって、身体能力二百倍に、魔星武術の歩式、天歩を使うぞ?」
「天歩は何かわからないけど、私だって全力で行くもん!」
「それじゃ、入口に立って……」
「少しドキドキ」
「よーい…………スタート!」
ギュン! スパン! スパン! スパン!
……カイの通った後。それはさながらトルネードの如く。
猛烈な加速と、その速度を一切落とさぬ走り。
……なにより、よもや重力を無視した壁や天井の移動。
それにより、スタートしてから十五秒も経たないうちに城に着いてしまった。
そのころ、鏡花は……
『ぎゃー! なになに!? 風がっ!』
『新手の魔物!? 城に連絡せねば……!』
『……道路やうちの店の窓が割れているんだが。城に行った方がいいのか?』
「……うちのカイがすみません」
なんで、あんなに早いの? 身体能力二百倍って伊達じゃないね!
私だってそこそこ速いはずなのに!
うう……もう絶対ついてるじゃん。
……はあ。
……などと鏡花は嘆いているが、鏡花の速さもたいがいである。
現在、カイの通常の【超魔進化】並の速さはある。つまり、通常のカイの百倍である。
まあ、通常の二人の走る速さは同じくらいなので、結局現在のカイの二分の一なのだが……
鏡花は、現在知っている魔法を駆使して全力で移動している。
まず、〈身体能力強化〉により、身体能力が十倍され、火、水、風、土、光の五属性の加速をすべて使い、一歩目の爆発力はカイをも超えた。しかし、魔法の連発ができないため、一歩目だけだ。
その後は、〈推進〉により前に進んだり、〈抵抗無効〉により空気抵抗を無くしたり、〈暴発〉や、〈爆発〉を足から放つことにより、前に進んだり。自身の全力を尽くしたはずだが、やはり……
「ついたっ! って、やっぱりカイいたかー」
「でも、鏡花も早いな。もう十秒ぐらいは差が開くと思ったが……いや、魔法で飛んで、屋根から行ったら速くないか?」
「ああ、確かに。単純に街の中で走ったり、走る速さだけならカイの方が早いけど、迷路を完全に直線距離で移動できるなら、そっちのほうがいいもんね」
「迷路……まあ、そうだな。迷路とは言わずとも道を真っ直ぐ進めるに越したことはないもんな」
「うん。それじゃあ、帰って寝ようか!」
「そうだな……素直に帰れたらな」
「え? 何か言った?」
「いや、何にも?」
すでに城に着き、後は自室に帰るだけというところで、カイは何を心配しているのだろうか。
それは、一分後に分かることとなる。
一分後―――――
「これは、どういうことですかねえ、カイ様、キョウカ様?」
「はい、その点については誠に申し訳ございませんでした」
「二度と、あんなことしません」
「あの賠償金どこから出すと思ってるんですか!? あなたたちは今、国の管理下に置かれてるんです。あなたたちの起こした問題は全て私たちが後始末をするんですからね!? そのところ、どうお思いで!?」
「はい、あの、全てこちらが悪いです。全ての尻拭いしていただけるあなた様には感謝しかありません」
「私も同じです。エル様」
「全く……この数分でどれだけのお金が消えることになったか……しっかり反省してくださいね!」
「「はい……」」
街中を破壊しまくったことでのマジ説教だった。
これからカイが使う魔法はほとんど超魔法となっています。
大事な魔法や、分かりにくい魔法には解説を入れるつもりです。
あと、今回から、時々三人称視点を入れてみるようにしました。
気持ち悪かったら、報告お願い致します。




