魔星武術
かませ登場!
「彼我戦力を、誤認するなだと? それはこちらのセリフだ。さっきの俺の言葉を聞いていなかったのか?」
「あのな? 聖剣を持っていようが、当たらなきゃ意味ないし、神話級の防具着けていようと、隙間さされたら終わりだぞ?」
「使用者による違いだと言いたいのか? フン。ならば、相変わらず俺の勝ちだな」
「……プッ」
「あ?」
「はあ、俺の言葉を聞いていなかったんだな……」
「うるせえ!!!!! 我らの誇りを傷つけやがって! 今、ここで、殺す!」
「はいはーい。やってみようねー」
「~~~~~~~~!!!!!」
ジャキン!
はあ。馬鹿だな。
俺は忠告したはずなのにな……
彼我戦力を誤認するなって。
それより……
「オイ。お前、相手に武器を向けるってのは、死ぬ覚悟もできたってことだよな?」
「あ? 死ぬわけねえだろうがっ!! てめえをっ殺してっ終わりだ!」
おいおい。図書館で暴れるんじゃねえよ。
ああ、でも確か、深淵管理されている本には結界が張られているんだったか。
じゃあ、暴れても問題ないな。
「あばよ!」
剣を振り上げる、振り下ろしてくる。
お粗末な一撃だ。
どれほど圧倒的に格下相手でも使わないほどの適当な一撃。
はあ。
ん、今日一日でため息ばっかついてんな……
さて……やるか。
気を全身に張り巡らす。
構える。
そして―――
「魔星武術、闘式、攻型」
「死ねっ!!」
「拳火上等」
ドンッ!
「ぐああああっ!? (な……何が起こった!? くっ、鎧の上から拳一つでこれほどのダメージを……!)」
「え、よっわ。まだ、一撃だぜ?」
「ぐっ、嘗めるなあ!」
がむしゃらに斬りかかって来る。だが、甘いな。
力の入れ方が下手くそだ。無駄な力を入れたり、タイミングがずれていたり、動きが単調だったり。
そんなんだから、こんな風に
ドドドドドドドドッ!!!!!
ぶっ飛ばされる。
「ぐああああああああっ!!?? (また……何故!? 鉄よりも固いナンタラカンタラとかいう素材が使われているはずだぞ!? 何故、拳一つでダメージをっ!?)」
「ああ、不思議だろうから教えてやる。俺が習得している魔星武術。これは、先代勇者も使っている武術だ」
「ぐ……何故それを貴様が使えるのだ!」
「元居た世界で直に習ったからな」
「なんだと!」
はあ~だからいったのに。こいつじゃあ俺には勝てないって。
魔星武術。時兎家に代々伝わる武術で、五つの武式から成り立つ。その時持っている物によって武術が考えられているのがいいよな。
徒手格闘である、闘式には攻型と、守型、それと搦型があり、さっき使った拳火上等は、攻型。ただただ効率的に力を伝え、効率的に殴り、反撃もすぐ避けられるようになっている。
他四つはおいおい説明しよう。
おっ立ち上がったな?
「ぐっ……だが、所詮拳。鎧の上からステータスが貴様の五倍の俺を倒すことはできないだろう。痛みさえ我慢すれば、貴様に一撃入れることぐらいわけないっ! 剣の一撃。それは即死を意味するっ!」
「いや、ステータスの差があったり、スキルさえ持ってれば、傷で済むがな」
「うるさいっ! くらえっ!」
「拳火上等!」
「うぐっ! だがっ! くらえええええ!」
へえ。痛みを我慢してまで俺に一発入れようとするのか。いい根性だな。
だが……
「お前は二つ勘違いしている」
「ああっ!? 死ねっ!」
「一つ。闘式は、攻型しかないわけじゃない」
「何をごちゃごちゃ言っている! 死ねっ!」
「闘式、守型」
スッ……
「なっ!?」
「一触速抜」
「? な、なんだ? 当たらない!?」
「ほら、来いよ」
「言われなくともぉ!!!」
一触速抜。拳火上等の殴打と違って、相手の攻撃をそらすことがメインの技だ。
拳火上等中に来た攻撃はすれすれで回避する。だが、攻撃がメインのため、重い技は対処しずらい。
そのための一触速抜だ。
これならこちらはどんなダメージも負わない。
「うららららららら!!!!!」
「気合だけかよw まだ薄皮すら斬れてねえぞ?」
「うるせえ! お前だって俺を殺すことはできねえ! なら、回復ポーションを持っている俺が有利! お前が持っているのは魔力回復ポーションだろう!? ならば、こちらが負ける道理はないっ!!」
「んーじゃあ、こうしよう」
「?」
言ったよな? 闘式にはもう一つあるって。
それは、それほど使う技でもないし、なかなか使わない。
相手を無力化するときに使う。
「闘式、搦型」
「こちらからは突っ込まぬぞ。攻型ならば守りと回避に専念すればよいだけのこと。あれくらいならよけれよう」
一歩ずつ相手に近づく。
ちなみにこの時にも魔星武術の中で基本の技を使っている。
歩式で、進型である天歩と詰型の利生だ。
歩式は魔星武術の五つには入っていないが、基本的な部分のため、これの習得が前提である。
効率よく前へ進む天歩により、障害を無視して前へ進める。まあ、それは図書館であるここでは使ってないんだけど。
相手との距離を詰めやすい利生により、相手の感覚を狂わせながら近づける。
この技により、俺は足で動くことでの機動力が格段に上がった。
ちなみにだが、魔星武術は二つの型を併用出来ない。それはそうだろう。攻めることに特化した動きと、回避するのに特化した動きが両立するわけない。
おっと、話が逸れていたな。
搦型の発動中だったか。
「流倒堕微」
「今度は何をする気だ……?」
「まずは一つ」
コンッ……
「何だ? 軽く叩いてきて……フン。そっちがそのつもりなら、斬らせてもらうぞ!」
「二つ」
「ちっ! わざわざ避けてまで、なぜ鎧を軽く叩く!? お前が本気で殴っても大したダメージが出ないとわかっているからか!?」
「うるせえなあ。今、お前は王手かけられてるんだぜ?」
「は? 何をっ!?」
「チェックメイト」
コンッ
「何がしたい!? 何が王手だ! 何がチェックメイトだ! 結局何もなってないじゃないか!」
「おっと、王手っていう言葉はよろしくなかったな。必至だな」
「何を言っている!? うおおおおおおお!」
力任せに剣を振り回す騎士。
だが、自身の体の異変に気付かないんならもう駄目だな。
「うおおおおおおお! ッ! なんだ!? さっきよりも動きが遅くなっているような……くっ力も入らん!」
「おお、ようやく気付いたか」
「貴様! 何をした!」
「お前の体の起点を突いた」
「はあ!?」
人間……っていうか、生物は皆、生命力を発生させる起点がある。
そこを軽く突けば、人間すぐ疲れ、体に痛みが出てくる。強く押すのではなく、軽く突く。
動けば動くほどその症状が出るので、少し大人しくしておけば治る。
な? 無力化したろ?
「ぐっ、こんなもの、回復ポーションさえ飲めば回復する!」
「いや、じっとしてりゃ治るっての。そんなことで最上級ポーションを消費すんな」
「うるさい! 貴様の嘘にはのらん! 死ねえっ!」
「おっと。いきなり斬りかかって来るとか、あぶねーな。何てことしやがる」
「うおおおおお! うらっ! ふんっ! ていやあああああ!」
ほお、動きが急に洗練されたな。
これが本来の騎士団の動きか。綺麗な剣筋をしている。
いい連続攻撃だ。さっきまではみくびって手を抜いていたのか。
と、一触速抜を使い回避しながら思っていた。
だが、まだこいつは勘違いをしている。
それは―――――
「別に、お前とのステータスの差なんていくらでも埋められるってことだ」
「は? 何を言っている? この世界に来て数日のお前が、強化スキルを持っているわけないだろう!」
「ああ。スキルは持ってねえ」
「そうだろう!」
「スキルは、な」
「なんだと!?」
「時兎家の血筋、なめんなよ」
別に、拳火上等や、一触速抜などは誤字ではありません。そういう技です。
さらに、何か疑問があればコメントでどうぞ。




