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初戦闘フラグ

「この世界、スキルどころか、ステータスウィンドも無いよ?」


……確かにそうだ。

今までスキルを使っている奴を見かけてすらいないし、異世界転移定番のステータスウィンドの開き方も習っていない。

だが、本にはステータスウィンドもスキルも、ましてや、レベルすらもあった。

歴史の中で途絶えたか?

だが、人々の習慣レベルにまで染みついていることが、すぐ消えるか?

……なにか、歴史のうねりを感じる。

ってか、鏡花が魔法創れないと、戦う手段が限られちまう。

……図書館に泊まるか……


「まあいい。とりあえず、鏡花は究極訓練場で魔法使いまくっといて。最上級魔法難なく使えるぐらい」

「とんでもない条件来た。いや、中級でもきついんだけど」

「まさか、普通の訓練場で中級が使えたんだから、世界最高級の場所で最上級が使えないことなんて……無いよなぁ?」

「一時間でやってみせよう」

「……いや、普通最上級魔法なんて職業【聖女】でも一部の人しか使えないのに、魔法を使い初めて二日三日でできる方がおかしいんですよ」


 マジちょろい。

鏡花は俺がどんだけありえないことを言っているか分かっているのだろうか?

いや、まあ聖女だから、使えるか。うん。

さてと……


「エル。寝袋的なもの、ある?」

「はい? 寝袋ですか? 何のために?」

「図書館に泊まる。マジで気になることがある。あ、その前にグルナ王への謁見許可をくれ」

「……もうあなたが何をしても何も驚きませんよ。ええ、本当に」

「サンキュー」

「ん? カイ、この世界って寝袋あるの? 科学じゃなくて魔法の世界でしょ?」

「ああ、少しめんどくさいんだが、世界の認識の差を埋める仕組みがあってだな……」


 概要はこうだ。

例えば、元の世界では豚と呼ばれていたものが、この世界では違う名前で呼ばれる。

その認識の差を埋めるのが、世界の概念だ。

俺たちが豚と言えば、あちらには元の単語に聞こえ、逆もまた然りだ。

だから、寝袋を要求したら、同一効果のものが渡されるはずだ。

まあ、異世界転移あるあるの、自動翻訳機能かな?


「へえ~じゃあ、機能は寝袋の、魔法具? が来るわけだ」

「そゆことー」

「……勇者召喚は二回しかされていないのに、本を読んでそこまで知っているんですか……」

「エルの方が知ってんだろ」

「知ってることだけ知っています」

「……やっぱ、こいつ……」

「はい?」

「いや、何でもない」


―――――翌日


「さ、始めるか。深淵守護騎士達。グルナ王と、エルと、鏡花以外誰も通さないでくれ」

「はいっ! 我ら深淵の守護者! 誓いは必ず守ります!」

「暑苦しいわ。じゃあ、頼むな。」

「「「「「はっ!!!!!」」」」」


 ……さあ。始めるか。

調べるのは、Ⅰ~Ⅴ、全てだ。

今回ばかりは、俺の未来に関わることだ。ここの本をすべて読む覚悟で行こう。


一時間後

「あ~疲れた。休憩休憩」


更に一時間後

「うぅ……頭痛い」


もっと一時間後

「……ハッ! 記憶が飛びそう……」


めっちゃ一時間後

「…………」


 もうダメ。あたまがしんじゃう。

まだ、ⅠとⅡしか読めてない。

しかもⅢからは本の冊数も増える。

ん~二日ぐらいで読み終わると思ったんだがな……

だが、分かったことが一つあった。


 やはり、ステータスウィンドウ、スキル、その他諸々は存在していた。

十数年前まではな。

なぜ消えたかが分からんかった。

ぶっちゃけ、もう、Ⅲ~Ⅴはもう読まなくてよいのだが、普通に知りたいことが沢山あるため、読む。

まあ、明日で読み切れるだろ。と、信じたい。


うっ。もう少し読んでから寝るか……ん?


カツ、カツ、カツ、カツ


「誰だ?」


 すぐに戦えるよう構える。すると、


「待て待て、私だ。グルナだ。用事があるのだろう?」

「マジかよ。ご本人登場」

「エルから聞かされてな」

「もしかして……暇人か?」

「やかましいわ」


 まだ一日もたってねえぞ?

もしかして王って暇なんか?


「いつもの三倍のペースで仕事を終わらせたからな。三十分だけ時間がある」

「前言撤回。多忙だな」

「早く用件を話せ。外に騎士達を待たせておる。深淵騎士達とは仲がいいから楽しそうではあるがな」

「へえ~じゃ、手早く話すわ」

「おう。なんだ?」

「ステータスウィンドはなぜ消えた?」

「??????????」


 やはり分からないか……

だが、こいつは十五年以上前から即位しているのは間違いない。

記憶消去か?


「やっぱ知らねえよなあ」

「いや、今現在開けないのか?」

「……は?」


 どういうことだ?

その言い方だと前まで開けたみたいじゃないか!


「どういうことだ? 前まで開けたのかよ?」

「ああ。そのはずだ。〈ステータスオープン〉……ぬ? 開けぬな。十数年前まで開けたのだが」

「? じゃあその原因はこっちで探っておく。早く帰って、騎士達を安心させてやれ。ああ、仕事を五倍のペースで終わらせておいてくれ」

「……一国の王への要求ではないな。だが、いいだろう。原因をつかんだら報告してくれ」

「ああ。あ、それと、民たちがステータスについて知らないのはなぜだ?」

「……調べておいてくれ」

「あいあーい。じゃ、明日にでも会いに行くわ」

「待っておるぞ」


 …………

『おお、グルナ様! 大丈夫でしたか!』

「なんでだよ」

『あの村人めに何もされなかったでしょうか!?』

「オイ」

『何か悪事を働いてそうでしたか!?』

「あ?」

『私たちが警戒していますのでどうぞ仕事を!』

「聞こえてんだよ」


 絶妙に聞こえる距離感で話すんじゃねえ。

これでグルナが変なこと言って、戦闘が始まったら、ここが血で悲惨なことになるぞ。

……騎士たちの。


……ダッダッダッダッダ


「グルナか? いや、小走りだな。誰だ?」

「ふん。貴様の心の声は聞こえておるぞ。誰が我々を血祭にあげられると?」

「心の声を聞いてここまで来たのか? ん? どうやって心の声を聞いた?」

「生まれ持った能力だ」

「それ即ちスキルだな」


 やはり、スキルは存在したか……

いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もいるかもしれないな。


「そんなことはどうでもいい」

「俺、めっちゃ必要な情報なんだけど」

「我ら騎士には敵を屠り、我が主をお護りするという使命がある」

「無視すんな」

「そのため、日々鍛錬を怠らず、昇進してきた自信と誇りがある。それを、異世界に来て数日ほどの貴様には、負けるはずがないのだよ」

「…………あ、そう」

「……なに? なんだその態度は!」

「いや、多少真面目に聞いてやったが、そんなこととはな。お前らの言う強さってのは、魔力量か? 装備の強さか? 腕力か? それとも金か?」

「ふん。相手を倒す能力。それを総じて強さという」

「自身のステータス、スキル、装備、仲間、ポーション、そういうのを持ったうえで、相手を倒せるかどうかだろ? お前の言う強さは」

「ああ。だから、我らのようなステータスも、特殊なスキルも、頑丈な装備やまともな武器、キョウカ様、ポーション……は少し持っているようだが、ほぼすべて持っていないお前に勝ち目はない」

「お前、馬鹿だな」

「なんだと?」

「強者の言う強さってのは、そういうもんじゃねえ。どんな状況でも勝利を掴めるやつが強者だ。彼我戦力を見誤らず、慢心なく挑み、どれだけ瀕死だろうと、勝つ。弱肉強食の世界で生きながら、そんなことも知らねえのか?」

「ハッ。だからこそ、この状況でお前に勝てる見込みがあると? 私は騎士団でも序列は上の方だぞ?」

「だから~人の話聞いてた?」

「ああ、聞いていたさ。勝った方が強い。そして、今俺たちが戦ったら、俺が勝つという話だろ?」

「はあ、なんも聞いてねえな? 俺はこう言ったんだ」









「彼我戦力を誤認するな、ってな」




騎士が仲間を表すとき、鏡花だけ言ったけど、九素崎言われてないんですよね……

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