雑貨屋の強欲神
「ここか」
そういって着いた、雑貨屋。
名前は、『雑貨屋』。
……は? もうちょっとまともな名前はないのか? 雑貨屋だから雑貨屋? ありえぬ!
まあ、いいんだけど。
カランカラン……
「ん~? いらっしゃい! なにか用かい!? ……って、ハァ。余計な運命背負いやがって……」
「おうおう、初対面で変な悪口言われた」
「まあいい。お前の望みはあれだろ? ここの『裏』商品が欲しいんだろ? ふむ、暴食に会うのか……死にたいのか?」
「なんでわかるんだよ」
「女の勘」
「恐ろしい」
茶髪のロングで、緑の瞳。いっそ、絵として飾ってある方が似合っている。口調以外は。
ってか、なんだよ、女の勘って。しかも全部当たってるし。
大罪魔剣は暴食神ベルゼブブが管理している。
というか、ベルゼブブが使っているのが大罪魔剣である。
……あの魔剣、素人が扱うとエネルギーに耐えれず死亡。
ある程度のやつでも、同じく死亡。
最高クラスも、その力を扱いきれず、死亡。
勇者は、使えるが、全力は出せない。
全力が出せるのは、ベルゼブブただ一人。
……いや、魔王なら使えたんだったか?
まあいい。
「で? おおかた、エルにでも言われて来たんだろ? だが、異世界来たてほやほやのお前じゃあ、扱えるもんが少ねえ。どうする気だ?」
「気合と根性」
「は?」
「っていうのは嘘だけど。まあ、まずは、ここにある最上級魔力ポーション二十四個と、禁忌級魔力ポーション四十八個ちょーだい」
「なっ!!??」
「売ってあるだろ? 強欲神、いや、【マモン】殿?」
「……お前、どこまで知っている。エルでも知らねえはずだ。それを何故お前が知っている」
「禁忌クラスの本に載ってたからな」
「なるほど、図書館か……ここの王は優しい。お前に深淵管理度数を読む許可を与えたのか。ほぉ~速読での暗記を古文書でやるとはなあ」
「女の勘……いや、強欲神の権能〈私之物〉で、俺の記憶を見たか……」
「ほんとに勉強熱心だな~お前。いいぜ。今回は無料で注文の品をやる。今、在庫が余り過ぎてやべーんだよな」
「おお! ありがとうございます!」
「あー、そういや、なんか武器いるか? お前なんも持ってねえじゃん……」
「ん-? そうだな……あ、そうだ」
ここで俺は、本で読んだ情報を思い出す。
大罪魔剣にも、次に欲しい整合神剣も、鏡花にあげるつもりの、創世神剣にも劣る。が、今の俺には、のどから手が出るほど欲しい剣がある。
その名も、
「魔浄聖剣ってあるか?」
「!? あるけど、いいのか?」
「ああ。それが欲しい」
魔浄聖剣ピューファ。使用者の魔力純度を上げる……下地ができる。
そもそも、俺は格闘術ならばもう持っている。だから、誰かに教わる必要がない。
なので、まず優先すべきは、魔力だ。
① 魔力純度の上昇
② 魔力量の上昇
③ 魔力効率の上昇
この順番でやる。
そのために、魔力純度の上昇は必須なのだ。
①は、魔浄聖剣でできる。②は、大罪魔剣で頑張る。③なら……①さえ終われば取り掛かれる。
だから、魔浄聖剣が欲しい。
あ、ちなみに鏡花は【聖女】だから、①、②はもうクリアできてる。あとは③だが……これは、俺が教える。
「魔力純度を上げたいんだ。いいだろ?」
「いいんだが……お前、もうすでに高いぞ? ギルドのAランカー並みの黄緑だ」
「へえ。普通この年ってどれくらいなんだ?」
「んー、才能によるけど、普通の人が藍色くらいじゃね? んで、魔法学院に行くような奴が青色くらいだ。しかも、魔力純度ってのは上がりにくい。生涯かけて二ステージ上がるかどうかだ」
「ほーん。まあ、俺は特殊な訓練を積むからいいんだけど」
「ハッ、言うねえ」
「ま、取り敢えず、注文の品はすべてくれよ」
「ああ。ただ、魔浄聖剣は金をとるぞ? あれは在庫がそんなにねえしな」
「いや、聖剣の『在庫』を気にするやつはいねえだろ。さすがは七つの大罪だな」
「ばれたか」
フン。普通、世界に一つしかない聖剣や神剣、魔剣の在庫なんてものは存在しない。しかし、相手は七つの大罪だ。あらゆる方法で、模倣か、複製かしたのだろう。
「あいよっ、最上級魔力ポーション二十四個と、禁忌級魔力ポーション四十八個と、【魔浄聖剣ピューファ】だ。しかも、七つの大罪の強化付与魔術が施されている! まあまず壊れることはないだろうな。あ、本来の性能……お前の目的も達成しやすくなってるはずだ。頑張れよ! 少年!」
「ありがとうございましたっ!」
「―――またのご来店を、お待ちしております……フッ」
さて、買い物は終わったし、帰―――らずに図書館へ行くか。
鏡花はどんくらい進めてっかな。
ワンチャン百冊以上読んでたりして。
お、着いた。
「さて、鏡花いるか? って、なんだ? 騒がしいな……」
どうしたのだろうか? あれほどまでに静かだった図書館が、ざわついている。しかも一か所で。
なんかあったのか?
「おい、なんかあったのか? クルル」
「うおっほぉ! これはこれはカイさん! お待ちしておりました!」
「何故?」
「キョウカ様が倒れたのですよぉ」
「はぁ? なぜ?」
「本の読みすぎですね。おそらく」
え、本の読みすぎで倒れて、あの人だかりってこと? 人気ヤバ。
えまって。なんで俺待ってたの?
「おいクルル、なんで俺を待ってたんだよ」
「キョウカ様が、気絶前に、『眠りについた姫を起こすのは、王子のキスしかないから、カイ君を待っていてくれ……』と、おっしゃられたので……」
「それ、俺がキスしないといけないじゃん。やなんだけど」
「え…………………え? あなたたち、そういう関係じゃないんですか?????」
「いやこっわ。まあ、違うな……いや、その、あー、うん、まあ、好きなんだけど」
「…………おふっ。そうですか。分かりました。まずは、キョウカ様のもとへお向かいください……相思相愛かぁ……青春だねえ……!」
「何か言ったか?」
「いいえ、なにも!」
「お、おう。分かった」
なんだ? クルルがやけに目をキラキラさせている……ま、いっか。
ってか、鏡花大丈夫か?
「んー、ちょっとどいて! 俺、カイだから!」
と、一言。そうすれば、
「お? 鏡花様の言っていたカイ様か?」
「間違いねえ! 王子様が来てくれたぞ!」
「道を開けろ!」
……モーセになった。
と、俺は、その元凶を見つめる。
苦しそうに横たわっている鏡花。
みんな心配している。
が、俺にはわかる。
「(気絶したフリしてんなあ)」
ん~、どうしたもんかね。
んー。起こすか。キス以外で。
あ、そうだ。
「鏡花! 危ない!」
「えっ!? 何!? ……うあ……」
「よし、起きた」
なんて便利な言葉なんだ……
そんなことを考えていたら、ふくれっ面でこっちを見ている鏡花と目が合った。
「……なんでキスで起こしてくれなかったの」
「付き合ってないから」
「ぬぅ……」
いや、むしろ、勝てると思えたか? 今の状況で。
ってか、真面目な顔して何を話しているんだろうか。そう考えたら、すげえ恥ずかしい。
「ん? カイ君。ちゃんと指輪は届いたんだね。よかった」
「ああ、あの占い師からも少し聞いた。強い運命がどーたらこーたらだろ」
「うんそう……それはそうと」
「うん? なんだ?」
「その指輪、右手の中指にはめてくれてるんだね♡」
あ…………
投稿頻度がかなり遅くなってしまい、申し訳ありません!
夏休みに入ってから、できるだけ早く投稿するので、応援よろしくお願いします!




