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東京雪月滅譚  作者: 雀金毘羅
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Report#01 死せる雪、降りたる

白銀、銀華、風花。人々は雪をこう表した。

雪は日本の冬を、人を白に染め、また彩り、そして心の芯から冷たくさせる。

雪は、私たちにとって“大切な物”だった。

2024年、12月5日、雪は、“雪”では無くなった。



その日、日本に雪が降った。世間は来たるクリスマスに向け、浮き足立つ頃。

祝いと喜び、そして少しの嫌悪感が混じる、一年に一度きりのイベントだ。

12月に雪が降ることなんて、至極当然、何ら違和感のない事。だからそう、誰もが「普通の雪」であると思っていた。心の底からそう思い込んでいた。

固定観念に囚われるな、そう誰もが名言なり口癖なりで残してきただろう。そんな言葉、何十回もテレビで聞いてきた。

だけど、一体誰が気づけただろうか。あの雪は、雪ではなく、後に「塵雪(じんせつ)」と呼ばれる、日本を壊滅にまで至らせた、突然変異の致死性の雪だったということを。



塵雪は、日本各地に降った。大阪に、福岡に、山形に、それから東京に。

日本のありとあらゆる所に降った。

前述の通り、塵雪は致死性。もっと詳しく言うと、いや、詳しいことは私も知らないのだが、雪の中に“突然変異”で生まれた“人を死に至らせるウィルス”が含まれているのだ。それが塵雪。

自然が成せる脅威なのか、はたまたどこかの国が作った新たなウィルス兵器なのか。そんな事はお構い無しと言わんばかりに、雪は降った。


雪によって、人が死ぬ。吸い込んだ。触れた。ごく僅かでも人体に入るたびに、死なせていく。

子供が、大人が、老人が。こんなことに老若男女なんて言葉を使うべきではないのだろうが、死んだ。

日本の総人口1億2780万人のうち、1億749人が死んだ。壊滅的、でしょう。

当然、人々は驚き、そしてその現象に悲観し、崩れ、中には壊れて自ら死を選ぶ人もいた。ある科学者は、「これは一時的な現象だ」と言ったし、また別の科学者は「数年続く災厄だ」とも言った。何より、この雪は私たちにとって天敵であり災厄だということは、間違いでは無いのだ。



さて、塵雪舞う日本。

政府はこの状況の対応に追われる。

各地の病院は、死せる患者の処置に戸惑い、警察や消防は、ひっきりなしに走り回る。いや、それも現状が“分からない”からだ。

初めての確認から数日後、塵雪の貴重なサンプルが入手された。なんでも、政府が動かした特務機関…なんだかSFチックだけど、そこの特殊防護服の部隊によって、数名の死者を出しながらも確保が成されたらしい。

そしてそれからまた数日、今度は科学者による研究結果が公開された。それがつまり、「致死性」ということ。さらに、気象庁からも発表があった。「雪は止まない」ということ。この発表後、日本は更なる混乱に陥った。絶望、最悪といった言葉が似合う、治安は悪化、打ちひしがれた人々から死にゆく。そうして、日本は半壊滅状態になった。それから数日、国は発表した。「我が国は甚大な被害を受けた。壊滅状態だ」…と。

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