6話 転校生
なななななななんでゆるがここに居るんだ!?
俺は今起こっている目の前の状況に理解が追いつかず、口をパクパクしながら教卓を見つめていた。
「それじゃあ、天乃。空いてる席に座ってくれ」
「はーい!」
先生がそう指示すると、ゆるは片手をピンと上げ、元気よく返事をする。
ゆるが教室をツカツカと歩くと、みんなの視線はゆるを追っているのがわかった。
男子は好意、女子は羨望だろう。
「うわぁ·····この子めちゃくちゃかわいい。紗月と1・2位を争う美人じゃん·····」
「俺ゆるちゃん狙っちゃおっかな〜」
教室の至る所から、そんな言葉が飛んでくる。
やっぱりこいつの顔は、第三者が見ても本当にかわいいんだなと再認識した。
そして、まるでこうなることが決まっていたかのように、ゆるは真っ直ぐ俺の隣の席へやってくる。
「お隣ですねっ! 渚くんっ! これは運命と言うべきでしょうか!」
ゆるは目をキラキラさせながら話しかけてきた。
俺が返事をする隙もなく、教室を見渡して「私今渚くんと同じ学校通ってますよ〜!」と興奮している。なんだこいつは。俺と隣の席になれて喜んでるとか、どんだけ物好きなんだよ。
俺は呆れた顔でゆるを見た。視界に入ってくるゆるは、俺と一緒に入れて嬉しそうにしている。当然嫌な気はしなかった。
それでもゆるが俺と関わることによって、ゆるまでいじめられるかもしれないという考えが、どうしても俺の頭をよぎってしまう。
ゆると·····関わらないようにしないと·····な。
■
「天乃さんっ。一緒にお昼食べない?」
「私も一緒に天乃さんとお昼食べた〜い!」
昼休みになると、ゆるの周りにはすでに複数の女の子が群がっていた。
「すみません·····先客がいるので·····」
話を聞いてみると、ゆるのお昼を一緒に食べる相手はすでに決まっているようだ。
俺の他にもう友達ができたのかと思うと、少しだけ寂しい気持ちになる。
これでいいんだ·····これで·····
俺は自分にそう言い聞かせ、お弁当を持ち、教室を後にして、そのまま慣れた足取りで裏庭に向かう。
裏庭には生徒が全然来ないから、俺にとっては穴場だった。
そして周りに人がいないことを確認し、大きく伸びをする。
「やっと俺だけの時間になったぁ〜」
俺は窮屈だった教室から一気に解放されるこの瞬間がたまらなく好きだった。
俺は裏庭の芝生に寝転び空を見る。ゆっくりと流れる雲を眺めていると、時間の流れも穏やかになっているように感じる。
ボーッと空を見ながら、昨日突然現れた天使を思い出す。
誰かとあんな風に喋ったのは久しぶりだったな、と。でもクラスに馴染んじゃった今、もう俺とは話せなくなるだろう。
「·····ゆる」
思わず名前を口に出してしまった。もう少しだけ、ゆると喋ってみたかったな。
叶うことの無い願いを胸の内にそっとしまい込み、寝返りを打とうとしたその時だった。
「な〜に黄昏てるんですか?」
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活動報告でも書いたのですが、一度感想欄の削除、受付停止を行いました。申し訳ございません。
更新楽しみにしていますという声や、長文でこの部分は違和感があるという指摘などなど貴重な意見を頂けたことに本当に感謝しています。全てスクショで保存させて頂きました。今後の活動の糧にさせていただきます。
今後ともこの作品を楽しんで頂けたら幸いです。