14話 はじめの一歩
「さっきも言ったと思うが最初から録音してたんだよ」
俺はスマホの画面をトントンと叩き、特別なことは何もしてないとアピールをした。
「まあ·····こんなに鮮明に録音できたのはゆるのお陰だ。ありがとう」
「いえいえ〜! お易い御用ですよ〜!」
ゆるは両手を上げて小さくジャンプしている。
自分の作戦が上手くいったのが余程嬉しかったのか、かなり上機嫌だ。
「鮮明に録音できたのはゆるのお陰·····? それってどういうこと?」
俺らの会話が理解できないのか、団子さんは首を傾げている。
「まず最初に説明するとすれば、俺はここに来る前から録音を始めていた。それにゆるが気づいてくれたんだよ」
「はい! 渚くんのポケットが光っていたので、何かのアプリを起動させたままにしてるのがすぐわかりました!」
つまりこうだ。ゆるがお昼ご飯を食べている時、万が一誰かに聞かれていたら困るから、『体育館裏に集合』とだけ俺に伝えてそのまま教室へ戻った。体育館裏なんて人気のない場所に呼び出すぐらいだから、この時点で何かあると思ったんだ。
紗月と喋って別れた後、俺は時間の確認もしつつ録音アプリを立ち上げて、スマホをポケットの中へ入れた。
そのまま体育館裏へ向かい、ゆると合流。念の為、いじめっ子に俺らの作戦がバレないよう余計なことは一切喋らなかったつもりだ。
そしてゆるは、俺のポケットが光ってるのを見て、俺のスマホが何かのアプリを起動させたままにしてると気づいた。
「それにしてもよく録音アプリって気づいたな! ゆるはひょっとして天才か?」
「ふっふっふー! もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
ちょっと褒めただけでふんぞり返るゆる。
全く、こいつはお調子者だな。
そんなところもなんだが少し可愛く見えてしまう。
これを言ったらもっと調子に乗りそうだから言わないでおくが。
コホン、と咳払いをし、俺は説明に戻る。
「それでもって、録音アプリを起動させたのはいいが、いじめっ子がいじめをしているという証拠が欲しかった。そしたらゆるがナイスアシストをしてくれたんだ」
俺はゆるを横目で見て、次はお前が説明する番だと促す。
「人は喧嘩をすると、ついつい声が大きくなっちゃいますよね? 最初は普通の声で喋っていた筈なのに、気づいたら大きな声を出していたなんてことないですか?」
ゆるは団子さんに問いかけた。
解説をしている時のゆるは生き生きとしている。
「た、確かに·····」
「だから私は確実に証拠が取れそうなタイミングで大きな声で叫びました。『私達を傷つけるつもりなんでしょう』と。そしたらまんまと引っかかってくれました。私達を威嚇するために更に大きな声で『ああ。そうだよ』って言っちゃってましたね」
ゆるの説明が終わった後、全てを理解した団子さんは一気に力が抜けて、その場でへなへなと力なく座り込んだ。
「2人とも·····本当にありがとう·····私、2人になんてお礼したらいいか·····」
「いいんだよ、お礼なんて。俺の方こそもっと早くいじめに気づけてれば·····」
俺は涙声の団子さんに近寄って、手を伸ばした。
「良ければ·····その·····俺らと友達になってくれないかな」
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