12話 ひとりじゃない
頬に汗が垂れてるのを感じる。
初めて·····初めて連中に対抗した。
まだ足が震えている。怖くないって言ったら嘘だ。でも、もう後に引けない。
今までだったら自分のことで精一杯だった。いや·····自分のことすら蔑ろにしていたかもしれない。
でも大丈夫。今はひとりじゃない。
「今すぐその子を解放しろ」
俺はいじめっ子を睨みつけた。誰かを睨みつけるのは人生で初めてかもしれない。
「はぁ? 誰がお前の言うことなんて聞くかよ。スクールカースト最底辺。なおかつお前のバックに権力者はいない·····まるで腹ぺこのライオンの檻に裸で入るようなもんだぞぉ?」
ツカツカと俺の目の前まで来て、カッターを取り出し脅しにかかる。
「ひぃ·····カッター·····そんな物騒な物を·····」
いじめられてる女の子は、カッターを見てビクビクと怯えていた。
さすがの俺も刃物を目の前に出されると逃げ腰になってしまう。
でもここで引き下がれるかよ!
「そのカッターで何をするつもりなんですかっ! 私達を傷つけるつもりなんでしょう!?」
ゆるはこれでもかと言うぐらい大きな声を出して威嚇をする。
するといじめっ子はもっと大きな声を出して威嚇をしてきた。
「ああ。そうだよ! うるせえお前らの口を二度と喋れないようにするためになぁ!」
ブン、とカッターを持ってる手を振り上げて俺の口目掛けて振り下ろす。
「だ、だめええええ!」
いじめられっ子の悲痛の叫びといじめっ子の殺意に満ちた目。
落ち着け自分·····俺ならこの状況を打開できる。
「っ·····あっぶな·····」
間一髪のところでカッターを持つ手の腕を力強く掴んだ俺は勝利を確信した。
「やりましたぁ!」
ゆるも勝利を確信したのか声を出して喜んでいる。
「なんだ·····この力強さっ·····! おい、こんなの聞いてねえぞ!」
いじめっ子はカシャーン、とカッターを落とし、もはやお手上げ状態だろう。
しかし後ろにいるもう一人のいじめっ子が、下に落ちたカッターを拾って俺の方へ振りかざしてくる。
「勝った気になってんじゃねえぞ! 二度と私達に面を見せんなあ!」
真正面から俺の顔面を狙って躊躇なく顔に傷を入れてこようとしてるのがわかる。
やばい·····! 完全に油断した·····!
このままだと刺される·····!
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