Episode.1 とある国のとある町の酒場
昔見た硝子がとても綺麗で、透き通っていて触れれば壊れそうで実際に壊れるため使えないものなはずだけど、人間たちはよく使う。
定番なのは硝子細工。
この塔国でもよく使われていた記憶があった。
バラバラな長さの銀髪髪の毛を揺らし、行き場のない足はいずれ縺れ本体は倒れてしまった。
そんな子供がいたとしても誰もが気付いていなかった。
「・・・お腹、空いた」
中性的な声がその子供から発された。その直後に連動しているのかお腹の虫が鳴り響いていた。それでも通行人は気付かない。
「ねぇ、大丈夫?」
そんなとき、赤毛で美しい女性が倒れている子供に話しかける。
「・・・大丈夫」
「そんな見た目じゃないわよ。ほら、おいで。食べさせたげるよ」
女性が話しかけてようやくその子供の存在はその場所にて確認されていた。
通行人たちは本当に気づかなかったのかチラチラとそちらを見ていた。
そこはどこかの酒場。
カウンター席にボロボロな子供は大量の食事の前にて構えていた。
「なにやってんの?あぁ、金は取らないわよ。私は助けるのが趣味なもんでね」
「冒険者が何言ってんだか!嬢ちゃんも遠慮せず食いな!そんな痩せ細ってちゃたまらんだろ!」
「・・・食べれない」
ようやく発せられた言葉がそれだった。
女性は好き嫌いだと思っているのか、額に皺を寄せていた。
「あぁ?私の料理が食べれないですって!?好き嫌いすんじゃないわよ!ほら食いなさい!」
「・・・だから、食べれな・・・んっ!」
女性はパスタをフォークで巻きとると、子供の口に突っ込んだ。
その直後、子供は床に思いっきり嘔吐してしまっていた。その光景に騒がしかった酒場は一瞬で静まる。
「ちょ、大丈夫!?」
「だから食べれないって言ったんじゃねぇのか?姉ちゃん。こいつこんな痩せてたら多分ずっと食べてなかったんだろ?粥だろ普通」
「・・・はいはい!すみませんでしたね!?・・・ほら、大丈夫?」
子供は静かに頷いていた。
またしても嘘か、女性は子供に拳骨をくらわせていた。
「とにかく食べ物は後ね、身だしなみを何とかしてあげるわ。イヴ!手伝いなさい!」
「げ、この子女の子だったら俺失礼だろ」
「お構い無しよ!とにかく綺麗にしてきてちょうだい!」
イヴと呼ばれた男は子供の手を引いて店の奥に入っていく。
子供はただ静かにイヴを見つめていた。
「こりゃあ、たまげた。べっぴんさんじゃねぇか」
イヴは子供の髪の毛を必要最低限、邪魔そうなところだけ切り、体も綺麗に洗ってあげた。
その子供は白い肌で、青色の瞳、琥珀色の髪をした可愛らしい女の子であった。
「君、名前は?」
「・・・ゼロ」
「ゼロ?数字の名前なんて初めてだな。俺はイヴ、さっきの女が姉のレヴィだ。よろしくな」
その子供ーー、否、ゼロはイヴの手を握ってスカートを揺らしながら歩いていると足元に何かが落ちていることに気づく。
「あぁ、こりゃあ昔どこかで買った硝子細工だな。今のご時世硝子細工なんて要らねぇし・・・あ、いる?」
「・・・」
その鳥の形をした硝子を手に取って、ゼロは食い入るように眺めていた。
「なんだ、気に入ったか?」
「・・・なんでもない」
そっと、割らないように棚に起き直すとゼロとイヴは止めていた足を進めていた。
「やっと来たわね・・・おお、可愛いじゃないの!」
「・・・」
レヴィがゼロに駆け寄って抱え上げる。見た目からしてまだ九歳だ。
酒場のおじさんたちもその可愛さに心を奪われたようだった。
「まるであの村のやつに似てるぜ」
「あの村?あぁ、【エデン】の?そんなわけないでしょ。あの村の人間は全員奴隷にされたんですって?まぁ、王様殺そうとしたんだし当然よ」
「・・・」
すると、入口のドアが吹き飛んできた。
驚きのあまり、酒場はまたしても静まっていた。
「おい、金をよこせ!!」
どうやら強盗のようだった。
レヴィはゼロを無意識に守るように抱き抱えていた。ゼロは強盗の方を見てただ目をぱちぱちと動かしているだけだった。
「おい女!さっさと金を出せ!俺たちは王国騎士の配下だぜ!?チクられてぇのか!?」
「あれは、金獅子の刻印!?」
「・・・?」
「あぁ、まだ子供だもの、知らないわよね。金獅子はこの国最強の騎士団なのよ。迂闊に逆らえば平民は殺されるわ」
そのとき、ゼロを抱き抱えるレヴィが何者かによって蹴り飛ばされていた。
「おい聞いてんのか!?・・・おお、こりゃたまげた。綺麗な女じゃねぇか。今日はこいつで遊ぼうぜお前ら」
「おお、なかなか上玉じゃねぇか」
「・・・ゼロ、貴方は見ちゃダメ。まだ子供には酷すぎるわ」
「姉ちゃん!!」
イヴが箒を持って、勇敢にも金獅子の兵士に立ち向かっていたが、瞬殺されていた。
ゼロはその瞬間も見ていた。
「・・・」