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図書室の遥さん  作者: 畑野れたす
2/5

第2話 図書室での再会


翌日の朝。

始業前の教室で栞里と有志は話していた。

昨日の女子生徒の件である。


「しつこいぞお前」

「いやだってさぁ」

「あんまりしつこいと【アレ】、ばら撒くぞ」

「すみませんでした」


しつこく昨日の詮索をしていた有志だったが、栞里が学ランの内側に手を入れながら脅すと止めた。

さっきまでニヤついていたその顔は冷や汗で真っ青だ。


やれやれ、と栞里が肩を竦めると、二人に近ずいてくる集団が目に入った。

クラスメイトの女子生徒四人だ。


有志は一歩前に出ると、彼女らに挨拶をする。


「やぁ、おはようみんな」


ニコリ。

さっきまでとは違う爽やかな笑顔だ。窓から差し込む日差しも相まって、まるで恋愛ドラマのワンシーンの様にも見える。

その笑顔を向けられた、女子生徒達は栞里には目もくれず、有志との会話に夢中だ。


(なんでこいつこんな絵になるんだろムカつく)


幼馴染のその様を改めて観察する。


栞里より少し高い身長に細く見えるが筋肉質な身体。

焦げ茶色のくせっ毛の前髪を緩く上げてヘアピンで止めている。

髪よりも明るい琥珀色の瞳と彫りの深い造形も相まってハーフの様な印象を与えるが、純日本人である。

学ランの下にパーカーを着ており、パッと見軽薄そうな印象を与えるがとにかくモテる。


入学してからまだ一ヶ月と少しだが、学年一のモテ男と言っても過言ではないだろう。


(それに加えて性格もまぁ悪くは無いときたもんだ。そりゃモテるわな)


溜息を一つ。


「ねぇ栞里」


有志が振り返りながら声を掛けてきた。


「なんだよ」

「三澤さんが今教えてくれたんだけど、今日部活無くなったみたいでさ。放課後どうする?」

「あー放課後?ならいつも通りに…」


返事をしながら何となく視線を女子生徒達に向けると、栞里は慌てて顔を逸らした。


そのまま会話を続ける。


「俺はやる事あるからお前は好きにしろよ」


そう言い残し、栞里は自分の席に向かう。


有志は女子生徒に囲まれて動けなくなっていた。

その表情は、さっきの笑顔と違い、悲しみに満ちていた。






放課後。

有志が女子生徒の集団に連れていかれるのを後目に見つつ、栞里は図書室へ向かった。

昨日の本を読むためだ。


図書室に到着し、扉を開ける。


(あ、今日は居ない。)


昨日と違い、今日は図書室は無人だった。


(まぁ、毎日居るわけないよな)


本を手に取り、席に着く。

その席は、昨日女子生徒が座っていた席の対面の席だった。


(さて、続き続きっと)


女子生徒の事を頭から追い出し、昨日の続きを読み始めた。







(面白かった…)

パタン、と、本を閉じる。

今の栞里は、満足感に満ちていた。


(何だこの本めっちゃ面白い…初めてこんな本読んだ…)


当たりだ。と栞里は思った。

そして時計を確認しようと顔を上げた。


(まだ少し時間あるな…)


昨日のうちに半分以上読んでいた上に、読むペースも早かったのだろう。

下校時間までまだ三十分ほどあった。


少しでも続きを読もうと立ち上がり、ついでに伸びをする。

ついでに図書室内を見渡すが、栞里以外の姿は見えない。


(ん?図書カード?ああ、あれがあれば本を借りれるのか)


入口の左側の棚に【図書カード】と書かれたコーナーがあった。


このカードに名前、学年とクラス、借りたい本のタイトルと借りた日付を記入し図書委員に提出し、受領印を押してもらうと借りた日から一週間借りる事が出来る、と説明文があった。


栞里は早速、読んでいた本の第二巻を持ってきて図書カードを記入した。


(で、図書委員のいるカウンターに提出、と)


本とカードを持ち、カウンターへ向かう。


「すみません。本の貸し出しをお願いします」


返事はない。

カウンターを除くと、奥の扉が開いている。

脇に【図書準備室】とあるから、蔵書やら資料の保管に使っているのだろう。


(扉は開いてるし、誰かしらいるだろ)


もう一度、さっきより大きめに声を出すと、返事があった。

図書準備室からだ。


「はーい。今行きますー。」


パタパタと小走りで現れた図書委員と思われる人影。


「お待たせしました。本の貸し出しですね?カードと本と学生証を提出してください。」


そう言いながら栞里を見上げるのは、


「昨日の船乗りだ」

「船乗り!?」


うたた寝して起こすと逃げ出した、昨日の女子生徒だった。

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