表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/138

試練の後

 屋敷に戻った鬼龍達は庭に集まっていた。

 屋敷に戻った時刻はもう少しで午前七時になろうとしていた。


 庭には大人しくなったアテナと気を失っているアテナの側近。それから鬼龍と陽月、龍那と凛那、冬姫と命、刹那、黄守がそろっていた。


 陽月は寧々と一緒に居たのであまり状況を理解していない。それに屋敷にとどまっていた黄守や刹那もまだ事の顛末を知らない。


 ただ最後の場面に居た鬼龍自身は凛那がアテナに懐いていると知った段階で、今回のことの事情をアテナに訊いて今後どうするかを考えていた。


 「鬼龍この後どうするの? 殺す?」


 陽月が俺にそう訊いてきた。

 陽月もそうだが、龍那と凛那をさらわれて皆心配をしていた。

 そして、特に陽月は龍那と凛那を物凄く溺愛していたから、怒りも相当あるんだと思う。

 

 それに今の陽月は魔力を体に集めていたから、アテナを殺すこともできる。


 だた、せっかく生かして捕まえたんだから殺すのは惜しい。

 しかも殺そうとしたら凛那が怒るから、殺すのは無しだな。


 「ん~ 凛那がこいつを気に入ったみたいだから、何かあった時に二人を守らすのはどう?」


 俺は陽月にそう提案してみた。

 

 ていうか、正直俺は誰にも危害を与えないならどうでもいい。


 「え!? 凛那が? ならしょうがないのかな。わかった鬼龍の案に私は賛成する。みんなは?」


 陽月は振り返り皆に問う。するとみんな頷く。

 

 「皆鬼龍の意見に賛成だって。 てか、そろそろ登校の時間じゃない? 早く行った方がいいよ」


 俺にそう言うと陽月から魔法の気配を感じた。

 

 そして、景色がわかる。

 見覚えのある道と家。

 学園の近くにある自宅に飛ばされたみたいだ。



 まったく陽月は。龍神化してないとはいえ、他者からの能力を無効にする能力を持っている俺を飛ばすとか、陽月もやっぱり強いな。

 この能力は俺が前に殺された時から発動してる能力だけど、弱体化させてる能力だけど神々や下位の龍神くらいの能力なら完璧に無効化するはずなんだけどな。


 陽月ってもしかして上位の龍神だったりして。


 さすがにないか。


 俺は有りもしないことを一瞬だけ考え、陽月が言ったように登校の時間が迫っていたので、当行の準備を始めた。

 

 それにしても俺をここに飛ばしたってことは、俺に知られたくないことがあるのかな?

 まあ、さすがに殺しはしないだろうからいいか。











 鬼龍を飛ばした陽月は別に鬼龍のことが嫌いになったわけではなかった。

 ただ鬼龍が居るとアテナが畏縮して会話もままならないように思えたから飛ばしただけだった。


 だけど鬼龍を強制転移させた代償は大きく、陽月の貯めた魔力の殆どを持っていかれていた。


 「鬼龍もいなくなったし少し話をするけど。なんで私の娘達を誘拐したのか訊かせてもらってもいい?」


 陽月は鬼龍と冬姫と命が龍那と凛那を救出に行っていたときには、寧々の側にずっと居たので状況が全く分かっていない。

 そして目の前に誘拐した張本人が居るのだから本人に事を聞けばいいと思ったわけだ。


 「私は父ゼウスの命令でこの国に居る龍王に同盟の話を持ってきたのです。父は邪神を滅ぼした龍王の力を認めていましたし、私も父と同じ感想でした」


 アテナは一旦間を置く。


 「ですが私がこの国で見た龍王の姿は、森で異形の怪物と戦って殺されかけている姿でした。そこで私は思ったのです、私が見た龍王は圧倒的な力を持っている存在、あれは本当に龍王なのかと。それで私は龍王に試練を与えようと思い、近くにあった無人島を私の領域に変え彼女たちをさらいました」


 アテナは誰から鬼龍の娘のことを聞いたのかを隠しながら喋った。

 

 「それで鬼龍にボコボコにされたの?」


 陽月がアテナにそう尋ねる。

 そしてアテナは首を横に首を振る。


 「いえ。龍王は私に攻撃は一切しませんでした」


 「え? じゃあ何で鬼龍を怖がってるの?」


 アテナは鬼龍が呼び出した数体の龍神を思い出しす。


 「龍王が呼び出した強大な力を持った龍達に私は畏怖しました。正直私では絶対に届かない強さに恐怖しました」


 そしてまた恐怖する。


 「私はもう貴方たちと敵対するつもりはありません」


 女神アテナは陽月にそう言った。

 言われた陽月はアテナをどうするつもりもなかった。ただ、龍那と凛那をさらった理由を知りたかっただけだった。


 「そう、わかった。また今度来るときは私の娘達と遊んであげてね」


 陽月はそう言うと、アテナ返事を待たずに鬼龍と同様に強制転移させた。

 陽月が最後の残った魔力でアテナを転移させた場所はオリュンポスだった。


 「ごめんね勝手に帰して。皆も話したかった?」


 陽月は皆の方に振り返りそう訊いた。


 「ん~ 別にそんなことないかな」


 「私もありませんでした。陽月さんと兄さんがそれでいいのなら」


 「私も」


 刹那、冬姫、命の順番で陽月に答える。

 皆陽月の判断に文句は無いようだった。


 「ところで命は龍の力に目覚めたいだね」


 陽月が命にそう話しかける。

 陽月が言ったように今回のアテナの試練で命の危機に瀕した命は龍の力に見事覚醒して敵を打ち滅ぼした。

 それを見ていたわけではないが陽月はその些細な変化に気が付いていた。


 「そうなの! さっきやっと龍の力が使えるようになったの!」


 陽月のその言葉に嬉しそうに反応する命。

 そのあと登校するまで命の話は終わらなかった。

今回も読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ