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時雨と東華

 最初に鬼龍の元にたどり着いたのは冬姫だった。

 冬姫は龍人化しており、白銀の刀を片手に持っていた。そしてアテナをぐったりとうつむいているアテナを見つけた瞬間に切りかかっていった。


 無論、鬼龍が止めないはずもなく、事情を話し、どうにか納得させていた。


 そして、数分後には鬼龍が助けに行かせた魔神サタンと命がやってきた。

 やってきた命の姿はまるで命を刈り取りにやってきた死神の様だった。


 その姿に鬼龍と冬姫は驚いたが、二人とも命が龍の力を覚醒させたことを喜んだ。


 

 そのあと鬼龍は戦意喪失したアテナと気を失っている二人の取り巻き、冬姫と命、サタン、龍那と凛那を連れて屋敷に転移していった。









 その頃鬼龍達と別れた時雨と東華はリビングでゆっくりとくつろいでいた。

 

 「本当に私達こんなにゆっくりしてていいのかな?」


 東華が時雨にそう訊く。

 東華はすでにシャワーを浴び、服を着替え、制服に変わっていた。


 「大丈夫、鬼龍は強いから。それに東華が鬼龍が龍王って知っていることも知ってるんだよ」


 時雨はテーブルに置いてあるビスケットを手に取り口に運ぶ。

 対する東華は少し警戒したような顔になる。


 「この国では鬼龍のことを龍王と知っている人はごく一部なの。普通の人は知らないはずだし、まして日本からやってきたばかりの東華は知ってるはずがないんだよね」


 東華がどこからか拳銃を取り出す。

 そして時雨に銃口を向ける。


 「何それ?」


 時雨は手に持っていたビスケットをパクリと食べて首をかしげる。

 時雨は銃を見たことがないので東華に銃口を向けられても危機感を覚えない。

 だけど殺気は感じるので、少し警戒し青い刀を取り出す。


 「何かわかんないけど、私を殺すのはやめた方がいいと思うよ。私は神族で死んでも蘇る権能を持ってるから。それに私を殺したら鬼龍が黙ってないよ」


 時雨の顔にはまだ余裕があった。

 それは時雨が銃というものを知らないのもあるが、時雨と東華との間に圧倒的な実力差があるからに違いない。

 それに対して東華の表情は少し苦い顔になっていた。


 「私は東華を殺したくない、傷つけたくもない。私はこの国に来て間もないから親しい友達も東華を含めて五人しかいない。だから仲よくしよ?」


 時雨は出した刀をしまう。


 「私がこの国に来たのは龍王である鬼龍を秘密裏に監視して、日本に危険があるなら殺すため。それを知っても時雨は私を友達って言ってくれるの?」


 時雨は笑いながら頷く。

 

 「なに? 鬼龍を殺すって?! 東華って鬼龍のことをどのくらい知ってるの?」

 

 時雨は笑いながら銃口を向けている東華に訊く。

 すでに時雨には敵意は無く、銃口には見向きもしてなかった。


 「数週間前にこの大陸で邪神を滅ぼしたくらいしか知らない」


 東華は素直に知っていることを時雨に話した。


 「それしか知らないんだ。鬼龍はね、この大陸に来る前に千を超える邪神の軍を滅ぼしたり、敵対した神々を皆殺しにしたり、魔界を統一したりしたんだよ。そんな鬼龍を殺すぐらいなら、この世界に居る生物を皆殺しにした方が楽だよ」


 時雨は続ける。


 「しかも本気になった鬼龍には異能は一切効かないし、殺意や敵意を持っただけでこっちが死ぬし、もしも殺したとしても、殺した者自身も道連れで死ぬし、さらに強くなって蘇るし、全知全能だし。もう、戦うのもうんざりすると思うよ? 普通ならトラウマになると思うよ? 無感情で素手だけで攻撃してもすぐに再生するし、そもそも並みの攻撃じゃダメージも与えられないし、色々な能力で攻撃してくるし、素手の一撃一撃が即死だし、回避できないしでうんざりだよ。私が知ってる限り、鬼龍に勝てる生物はいないよ。それでも鬼龍を殺したいのなら、素手でこの地球に居る龍神の誰かを殺せないと挑む資格すらないと思うよ」


 時雨は最初は笑顔だったが、だんだんと過去を思い出したのか暗い顔になっていった。

 時雨はきっとトラウマを思い出していたのだろう。

 

 「まあ、要するに鬼龍を殺すには素手で主神クラスの神を素手で、しかも無傷で殺すことが出来て敵意を持たずに戦わないといけないわけだけど。それを聞いて殺せる、いや生き延びれる自信はあるの?」


 珍しく時雨が長くしゃべる。

 

 「……」


 そして問われた東華は沈黙。


 「あ! 勘違いしないでね、私は東華が死んでほしくないからそう言ってるの。私が知ってる限り、鬼龍と殺しあって生き残ってるのは誰もいないから。それに私は東華と友達でいたいから」


 時雨は東華にそう言う。

 

 「……わかった。でも時雨はこの後、私のことを鬼龍先輩に話すんでしょ? 先輩は私を殺すんじゃない?」


 少し悩み東華は銃を下した。

 そしてそう時雨に言った。


 「ん~ 少なくとも私は東華のことを話すつもりはないけど、シルフィーとディーネが話すかもしれないし。そもそも私が知ってることを鬼龍が知らない訳ないじゃん、鬼龍は全知全能なんだよ」


 そして最後に時雨はこう言った。


 「まあ鬼龍が全知全能じゃなくても、さっきの戦いで敵が鬼龍のことを龍王って言ったのに東華は驚いていなかったから鬼龍は東華が自分の正体を知ってるって思ってると思うよ。そのうえで多分東華を脅威だとは思ってないから殺しはしないと思うよ。そもそも殺すなら東華はここには戻ってこれなかったはずだから。でももしかしたら事情くらいは鬼龍に訊かれるかもね」


 時雨はそう言い、二つ目のビスケットに手を伸ばす。


 「わかった信じてみる。でも一つ聞きたいんだけど先輩はともかく何で時雨は私のことや離れた場所に居たことを知ってるの?」


 東華は座り時雨にそう問う。


 「あ~ それはね秘密」


 時雨は飛び切りの笑顔を東華に向けた。


 さっきまで銃を突きつけていた人にこんな笑顔を向けられて少し戸惑った東華だった。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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