神の試練5 (命)
魔神サタンが鬼龍の命令により冬姫と命の援軍として助けに行った時にはすでに変化が起きていた。
鬼龍の妹である龍神命から、黒いオーラがあふれ出していた。
そのオーラは彼女の周りにコートのようにまとわりついている。それはまるで死神のローブの様だった。
そして、かすかに見える顔には、赤紫色に光る眼があった。
「その姿はなんだ!」
彼女は異様な気配を感じ取り、足を止め振り向いた。
そう叫んだのは龍神命と敵対しているドゥーシアだった。
ドゥーシアは命の異様な姿を見てそう声を上げてしまった。
「さっき貴女に負けたからこの姿になったんだよ」
命は前に手をかざす。
すると赤紫の光の粒子が命の手に集まり、形を成していった。
それはまるで大きな鎌の様だった。
その大鎌は赤紫色に光っていて、刀身の部分にはヒビのような模様が入っており、柄にはツタのような模様が浮き出てた。
「貴女に負けたから龍の力に目覚めることが出来た。私は龍神命、冥界と命を司る龍」
命は笑顔でそう言った。
そして笑顔から一転して、命の顔は冷たく冷酷な顔に代わる。
「だけど貴女はここで殺す。貴女は私の家族を奪った奴の仲間だから、絶対に許さない」
命は輝く大鎌を横に一振りする。
「何様のつもり小娘。私にはあの女神からの永遠に死ねない呪いがある。私は死ねないのよ!」
ドゥーシアの姿が禍々しく変化する。
肌はうろこの覆われ、口からは二本の大きな牙がむき出しになり、眼球は今にも零れ落ちそうなほど大きくなった。
「その呪いは今終わる」
命がそう言った瞬間、突如ドゥーシアが音もなく倒れる。
「初めて使った力じゃ魂を刈り取っても死ぬまでにタイムラグが発生しちゃうか」
命は手に持つ大鎌を見てそうつぶやいた。
「で、貴方は誰?」
命は岩影に隠れているサタンに向かってそう言った。
「お初にお目にかかります。私は龍王様が配下のサタンでございます」
サタンは命の前まで行ってそう言った。
そして、言われた命は少し考える。
「……龍王ってことはキー君。龍神鬼龍のこと?」
「はい。そうです」
「わかった。貴方を信用する」
命はそう言うと、そのまま冬姫が言った道へと向かった。
今回も読んでいただきありがとうございました。