神の試練4 (命)
胸を槍で貫かれ、毒に犯されていく私の意識はだんだんと薄れかけていた。
あ~ このまま死んじゃうのかな私。
トウ姉には私の我がままで迷惑をかけちゃったな。だけど私の実力はこの程度ってことが早めに知れてよかった。
私は短い人生の楽しかったことを思い出す。
短い人生だったけど楽しかったな。
セツ姉やトウ姉は私にやさしくて、二人とも私の憧れのお姉ちゃんだったな。
昔はキー君とよくエルフの里に遊びに行ったっけ。あの頃はキー君もよく笑ってたな。
最近は会う機会も少なくなって寂しかったな。
だけど龍那ちゃんと凛那ちゃんが生まれて少しは楽しく過ごせたな。
二人のことはトウ姉やキー君に任せれば大丈夫なはず。
お父さんのことはあまり思い出したくないけど、お母さんも優しい人だったな。
もしも叶うなら、またみんな一緒に楽しく明るく暮らしたいな。
『本当に諦めるの?』
ふと、そんな声がどこからか響いてきた。
何?
「だれ?」
私は手放しかけた意識を不思議と少し取り戻していた。
そして声の主にそう訊き返した。
『今はそんな事はどうでもいいよ。それより貴方はこのままの弱い貴方でいいの?』
声の主は誰かは知らない。だけど、どこかで聞いたことのあるような声をしている。
弱い私?
『貴方は、あの龍王、龍神鬼龍の妹の龍神命でしょ? それなのに負けたままでいいのって訊いてるの!』
誰かもわからに声からは強い意志を感じる。
私も弱いままでは居たくない。だけど、どうしようもないんだ。
「私にはセツ姉みたいな権能やトウ姉のような武術の才能もない、ましてやキー君みたいに全知全能の力や龍達を従える能力もない。私は転移魔法が出来るだけのただの女の子なの。だけどもし、できることなら勝ちたい!」
私は今の自分の思いを声の主にぶつけてみることにした。
「私は龍神家の一員。もしも私に資格があるのなら、龍の力でドゥーシアを今度こそ倒したい!!」
私はそう最後にどこにいるかもわからない声の主の叫んだ。
『そう、わかったわ。でも忘れないでね、これは始まりだから』
声の主がそう言うと、だんだんとぼやけていた視界が戻っていくのがわかった。
それだけじゃない、感覚が戻っていくのがわかる。
そして私は自分の体が動くことを確認して立ち上がる。
不思議なことに貫かれた胸はもう治っていた。
そのうえ足にくっ付いていたはずの蛇の頭部はどこかに行っていた。
声の主が誰だかわからないけど、きっとその人のおかげで戦える。
それに不思議と力が湧いてきて、今は負ける気がしない!
今回も読んでいただきありがとうございました。