表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/138

神の試練2 (命)

 巨大な鉄の門をくぐった先には松明で照らされた道が続いていた。

 鉄の門は重くて開かなかったので、トウ姉が凍らせて砕いた。


 松明の火がゆらゆらと揺れて洞窟を少し不気味に見せている。

 そんな暗い通路を速度を緩めずにトウ姉と私は進む。


 私とトウ姉の足音以外聞こえないほど静かな場所。


 薄暗くて静かな道だからかわからないけど、さっきからトウ姉が龍化で戦った姿が脳裏に蘇る。

 龍化は龍の力を体に宿す者が使える力。

 当然龍神家であるキー君、セツ姉、トウ姉は龍化が出来る。実際龍化した所を見たことあるのはキー君とトウ姉だけだけど、セツ姉も龍化が出来るってトウ姉が言ってた。

 

 私以外は皆私の歳には龍化が出来るようになったらしい。

 キー君なんて生まれてすぐに龍化が出来ていたとお母さんに昔聞いた記憶がある。


 だけど私はいまだに龍化が出来ない。

 龍化が出来ない龍族は、ただの少し強い人と何も変わらない。

 つまり私は、今この場では何の役にも立てない役立たずだ。

 そのうえ私の得意な転移魔法が使えないから本当に何もできない。


 だけど私も龍族、龍神命だ。

 これくらいの困難で挫けてられない。

 もしも次戦闘があったら、私が戦おう。


 「命ちゃん、考え事ですか?」


 深く考えすぎていたみたいで、トウ姉が私の顔を覗いて話しかけてきた。

 そうだ、今は龍那ちゃんと凛那ちゃんを助けに敵陣に居るのだから、周りの警戒を怠ったらダメだ。


 「いや大丈夫だよ」


 私はとりあえずトウ姉にそう言っといた。


 「そう? ならここからは気を引き締めましょう」


 トウ姉が真剣な顔でそう言う。

 私は気が付いていなかったが、大きな扉が目の前に立ちはだかっていた。


 私の予想だけどこの扉の向こうに敵がいると思う。

 

 「扉を破ります」


 トウ姉が扉から少し離れた場所から扉に手をかざす。

 すると扉が凍っていく。そして突然扉が砕け散る。


 「おやおや、あの鋼鉄の扉を破壊するものだからどんな化け物かと思ったら、可愛いお嬢ちゃん達じゃない」


 砕けた扉の向こうに待ち構えていたのは一人の女の人だった。

 砕けた扉に驚きすらしないってことはただ者じゃなさそう。それにここに居るってことは敵なんだよね。


 「一応名乗らさせてもらうわね」


 女の人はどこからか盾と槍を取り出した。

 恐らく私と同じ異空間魔法と同じ原理だろう。


 「私は女神アテナに呪われた女戦士の一人ドゥーシア。この後ろの扉を守り切れば私は呪いから解放されるの、そのために彼方達にはここで死んでもらうけど恨まないでね」


 ドゥーシアと名乗った女性はそう言うと槍を構えた。

 

 近接戦なら私も戦える。それに相手はただの女の人だ、簡単に勝てるだろう。


 「今度は私がやるからトウ姉は先に行ってて」


 私は横に居るトウ姉にそう申し出た。

 トウ姉は私を過保護にすることがある、だけどここで私は引きたくない。

 これは私が役に立てるチャンスなんだから。


 「私より強いトウ姉が先に行って二人を助けてあげて」


 更に私はそうトウ姉に付け足した。


 「…… わかりました。最奥で皆で待ってますから来てくださいね」


 トウ姉は私の目を数秒見てそう言ってくれた。 


 「悪いんだけど、私は貴方たちを先に行かせる気はないんだよね」


 ドゥーシアがトウ姉の方に槍を飛ばす。




 「悪いですけど先に行かせてもらいますね」


 気が付けば何かが砕ける音とトウ姉の声が遠くから聞こえてきた。

 トウ姉は龍化をしていた。

 水晶のような角を生やし、手足は白銀の龍の手足と成り、目は最強の生物にふさわしい力強さを放っていた。


 「いつの間に。いったい何をした小娘!」


 ドゥーシアが忌々しそうにトウ姉を睨みそう言い放つ。

 

 これは推測でしかない。

 トウ姉の能力の「停止」はすべてを止める。

 その能力で時間を止めて向こうの扉まで行き、扉を壊したのだろう。


 私の後ろから、ドゥーシアが放った槍が壁を砕く音が聞こえた。


 「では命ちゃん、頑張ってください」


 トウ姉はドゥーシアの言葉を無視して私にそう言い、砕けた扉の向こうへ消えていった。


 「小娘がー!!」


 ドゥーシアがこちらに振り向く。


 「今すぐ貴様を殺して、あの小娘を殺さないと!」


 ドゥーシアから禍々しいオーラが漏れ出る。

 そして私に対してすさまじい殺意を感じる。


 私は異空間から二本の短剣を取り出し、戦闘を開始した。

今回も読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ