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神の試練1 (命)

 早朝、いつも通りの朝、だけど少し外が騒がしい気がする。

 私は寝起きの格好で声がする方に向かっていった。


 「命ちゃん! 龍那ちゃんと凛那ちゃんがさらわれちゃった! 私は鬼龍に知らせてくる」


 セツ姉はそう言って姿を消した。


 龍那ちゃんと凛那ちゃんがさらわれた? ダメだ頭が付いていかない。

 今から助けに行くべき? それともここでセツ姉とキー君を待つべき?

 どうすればいいの?


 私が頭の中で混乱していると部屋の端で寧々さんとトウ姉が話していることに気が付いた。


 「寧々さんはここで兄さんを待っていてください」


 トウ姉は寧々さんにそう言っていた。


 「冬姫様はどうなさるのですか」


 「私は今すぐ二人を助けに行きます」


 寧々さんの問いにトウ姉はそう答えていた。

 トウ姉は今すぐ行く気だ。


 「命ちゃん、今聞いた通り私は行くけど命ちゃんはどうします?」


 トウ姉が私に訊いてくる。

 私は。私は二人を助けたい。


 「私も行く!」


 「わかったわ。すぐに準備していきます」



 私は急いで顔を洗って目を覚ます。そして部屋に行って着替える。

 これで準備は完了。複数ある武器は異空間に入れてあるし。能力で出せるので問題ないと思う。


 私はトウ姉のもとに向かう。






 トウ姉に言われた座標に転移する。

 もちろんトウ姉も一緒にだ。


 トウ姉は魔術や魔法といった物が苦手で剣術ばかり磨いてきた、だけどそれは私達龍神家の中だけで、同学年の中ではトップクラスの魔力らしい。

 それでも転移系の術はまだ苦手で、距離も一キロ位しか出ないらしい。


 だけど剣士として鍛えてきた索敵能力は私の知る限り、キー君とセツ姉、それに陽月姉以外だと最強だと思う。

 ていうか、あの三人は底がわからないし、キー君に限って言えば正直底があるのかわからない。

 私はまだ発展途上だけど、私の中の龍の本能が、キー君にだけは逆らうなって言ってる。


 

 「ん? 私が伝えた場所ではないみたいですけど、命ちゃんどうかした?」

 

 あら? 転移をはじかれた。

 どうして?


 「いや、もうここは敵の領域ということですね。場所は約一キロ先の山頂ですか。どうせ龍化して空を飛んで行ってもただの的ですし、陸路で行きますか命ちゃん」


 トウ姉がそう言って真っすぐ木々の生い茂る山の中に入っていく。

 私もトウ姉の後ろを追って走り出す。


 そういえば転移が使えないなら異空間へのアクセスはできるのかな?

 もしも出来なかったら、私は素手で戦うことになるけど。


 とりあえずためそうっと。


 異空間にしまったナイフを一本いつものように取り出してみる。

 

 結果から言うと普通に取り出せた。

 タイムラグもなく、ナイフにも異常は見られないので大丈夫の様だ。

 だけど何で転移は出来ないんだろう。


 「命ちゃん、あれって罠かな?」


 トウ姉が立ち止まり指をさす。

 指をさした方向に会ったのは大きな岩山で、そこには大きな黒い頑丈そうな鉄の扉が付いていた。

 鉄の扉にはのギリシャ系の女戦士が彫られている。その女戦士は盾と槍を携えて立っていた。


 そしてその横には巨大なハンマーを持った巨大な像が二つ、門番のように立っていた。


 気のせいかもしれないけど、あの二つの像はなんだか不気味。


 「なんか嫌な感じはするよ?」


 「確かに。ちょっと行ってくるから待っててください」


 トウ姉は私がそう言ったのに巨大な像に近づいていく。

 だけど無防備そうに近づいているように見えて、腰の刀はすぐにでも抜けるようにしてある辺り、私より闘い慣れしてるのがわかる。

 きっと、よく山で魔物を狩ったり、キー君やセツ姉と稽古してるからかな。


 私も愛用のナイフを出しておこっと。


 私は異空間からナイフを二つ取り出す。

 黒色で刃渡り約二十センチの短剣を両手に持つ。

 その短剣は赤いヒビのような模様が浮かんでいて、刃は薄っすらと紫がかっていた。

 

 そうこうしているうちにトウ姉は石像の足元まで近づいていた。


 「ん~ なにも変わった様子はないですよ?」


 トウ姉はそう言いながらこちらに振り向き、戻ってくる。

 

 その時だった。

 いきなり石像が動き始めた。


 「ここは試練の始まりの門」


 動き始めた石像がいきなり話し始めた。 

 トウ姉は動き始めを察知したのか、目線を石像に戻していた。


 「汝らにその資格があるのかを確かめさせてもらう。見事我らを倒し試練に挑め、小さき者どもよ」


 石像はそう言い終わると、手に持っていた巨大な石のハンマーを振りかざす。

 もちろんその標的はトウ姉だ。


 巨人のハンマーがトウ姉の頭に直撃する。

 そんなものを受けたら、ただの少女の頭は簡単につぶれて死んでしまう。いや頭じゃなくても死ぬ威力だ。


 だが実際は違った。

 石像の巨人が持っているハンマーの方が砕け散っていた。


 「なに?!」


 石製のハンマーを砕かれた石像の巨人が驚きの声を上げているのが聞こえる。

 同時にトウ姉に殴り掛かった石像と背後にあった石像が胸まで凍り付く。


 「てっきり戦士だと思っていましたけど。女の子の背後から不意打ちをしようとするだなんて、呆れました。砕けなさい」


 トウ姉がそう言うと、トウ姉の背後にあった氷漬けの石像が砕け散った。

 トウ姉の目が変わっているのに今気が付く。


 透き通るような淡い青色の龍の目。そして冷気を纏うトウ姉はまるで氷の妖精も見える。


 「貴方には訊きたいことがあったのですが、めんどくさいのでやっぱりいいです」


 トウ姉の龍の力は『停止』

 『停止』の力は万物を止める固定化の能力。その能力でトウ姉は巨人のハンマーが当たる前に、自身かその周囲の空間または物質を固定させて防いだのだろう。

 その停止による固定化の強度に勝てずにハンマーは砕け散ったというわけだ。


 トウ姉の龍化の影響で周囲の温度が下がり始める。

 この影響も『停止』の能力で、空気や空気中の水分や他の物質の動きを止めることで温度が氷点下まで下がる。


 「さようなら」


 トウ姉がそう言った時には石像は全身氷漬けになっていて砕け散っていた。


 正直あの『停止』の能力は、私の知る限り防御面で最強だと思う。

 今回はターゲットが石像がだったけど、これが生物だったとしたら血管が凍る苦しみや手足が砕ける恐怖などがあるんだろうな。 

 正直私はこの能力が恐い。

 だけどこれがこの能力の全てではない気がする。


 「命ちゃんの感はあたりますね」


 トウ姉が近づいてくる。

 気がつけば龍化も解けていて、周囲も少し暖かくなってる。


 「私の索敵も無機物には有効ではありませんので助かりました。さすがは私の自慢の妹です」


 満面の笑みでトウ姉が褒めてくる。

 トウ姉は、何かあるたびに私を褒める。

 最初は照れ臭かったけど今ではもう慣れた。


 「さあ、試練とやらに行きましょ」


 トウ姉が黒鉄の扉を指さす。

 

 そうここからが試練だった。


 私はまだ龍の力を覚醒できてないけど、トウ姉みたいに戦いたいな。

 私も龍神家なんだから


 「うん」


 私はトウ姉の後を追うようについていった。

 

今回も読んでいただきありがとうございました。

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