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感情

 屋敷についた鬼龍は屋敷で寧々と黄守に話を聞き終えたところだった。

 寧々は鬼龍と陽月が戻ってからずっと二人に謝り続けていた。

 黄守も侵入者に気が付かなかったことを謝ってきたが、寧々ほどではない。


 龍那と凛那は普段は鬼龍の部屋で寝ているのだが、最近は陽月の部屋で陽月と一緒に寝ることも増えきていたのだ。

 そして昨夜は陽月と寝るはずだったのだが、陽月は二人が寝た後に布団から出て庭で魔力を貯めていた。そして普段から陽月のお世話をしている寧々は陽月と同じ部屋だ。

 つまり昨夜は陽月が居なくなってきてからは龍那と凛那のそばに居たのは寧々だけになる。

 だから寧々は龍那と凛那が攫われたのに対して気が付かなかったことに深く責任を感じていた。


 「そんな顔をしないで寧々」


 すごい自分を責めている寧々に対して陽月はそう言った。

 陽月の顔には怒りの表情は無くただ優しく寧々に微笑んでいた。


 「鬼龍もそんなに怖い顔をしないで、寧々が泣きそうじゃん」


 寧々が謝り続けていたのは鬼龍の表情もあったかもしれない。

 鬼龍は眉間にしわを寄せていてまるで怒っているようにも見える。いや鬼龍は実際怒っている、だが寧々には怒っていない。

 鬼龍が怒っているのは龍那と凛那をさらった犯人に対してだ。

 一応犯人は女神アテナの可能性があるが、実際に見てみるまでは確定ではないと鬼龍は思っている。

 そして、そもそもこの屋敷には龍に連なる者以外の侵入を拒む結界が張ってある。もちろん屋敷の者が招けば例外として入れるが、ここに居る者でアテナを招いたと思える人物はいないと鬼龍は思っている。


 鬼龍はそのようなことを考えているうちに無意識に眉間にしわを寄せてしまっていたのだ。

 もちろんアテナに対する怒りは心の中にとどめている。


 「ごめん。俺は寧々が悪いとは思ってないよ。ただアテナはどうやって二人を誘拐したのかが気になってね。それより冬姫と命の気配がないけどもしかして二人だけでアテナの元に行ったのか?」


 鬼龍は二人がいないことは最初から分かっていた、ただ現状を理解する方が優先だっただけだ。

 鬼龍は二人が心配じゃない訳ではない、ただ二人が無策で女神に挑むほど馬鹿ではと思ってたから安心していたのだ。


 「はい、お二人は命様の転移魔法で龍那様と凛那様を救いに行きました」


 震えながら寧々は鬼龍にそう言った。

 寧々にとって鬼龍は兄のような存在でありそれ以前に信仰する最強の神そのものだ。

 その気になればこの大陸を海に沈めることもできる力があることを寧々は知っている。

 寧々が幼いころから鬼龍とは、かかわりがあり鬼龍が凄い優しいことは知っているが、本能は違う。


 寧々は幼いころから龍と心を通わすことが出来たため龍神の巫女として色々な龍達を見てきた。そのうちに龍達の格や強さなど様々なことがわかるようになってきた。

 

 そして鬼龍がいなかった三年間で龍達の心を色としてわかるようになっていた、更に寧々は龍達の本質や能力がわかるまでに力は強まっていた。


 そして寧々はここに来た時に鬼龍の能力の一部と本質の一部を見てしまった。


  寧々が感じ取ったのは龍族なら絶対に少しはどこかにある闘争本能。


 そして最も寧々が恐れているのは鬼龍の能力だ。

 それは万物を消滅させる力、概念すら消滅させるほどの力。

 鬼龍がその気になれば、この世界には元々居なかったことにすらできる能力だと寧々は理解している。

 時間軸から消滅させればその者の子孫はおろか歴史がなくなるのだ。


 寧々の今の力では鬼龍の能力の一端しかわからないが、それでもその能力は恐ろしい。


 絶対的強者に恐れを抱くのは弱者の本能。

 

 頭では鬼龍が自分が相当なことをしない限り攻撃しないのは分かっている。

 でも体がそれをわかってくれない、そんな自分が悲しくて情けなくて涙が流れてくる。


 「寧々どうしたの!」


 突然泣き出した寧々に陽月が心配そうに声をかける。

 陽月と寧々は長い間一緒に居る。

 そのため陽月は寧々のことはほとんどわかるし、寧々も陽月のことはほとんど理解している。

 お互い理解しあってはいるが全てをわかりあっているわけではない。


 寧々が何におびえてなんで泣いているのかを陽月は理解できない。

 そしてその逆も。


 陽月は寧々よりも能力が強い、簡単に言えば寧々の上位互換だ。それは寧々も理解しているし認めている。

 だから陽月が鬼龍の能力や本質を知っているはずなのになぜ、そんなに普通に接していられるのか寧々にはわからない。


 「私は、私は怖いです」


 寧々は陽月の胸でそう言うことしかできなかった。

 ただこの言葉だけでは陽月も他の誰も理解するのは難しい。


 「寧々がなんで俺を怖がっているのかは知らないが、俺と陽月は何があっても味方だ。それだけは忘れないでくれ」


 鬼龍は寧々の後ろからそう言った。

 その声には優しさが含まれていた。


「悪いけど陽月、寧々を頼む。俺は龍那と凛那を助けてくる。黄守達は引き続きここの守護を頼む」


 そう言うと鬼龍は転移して消えていった。




今回も読んでいただきありがとうございました。

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