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人造神兵 10

 鬼族の里の周辺ではすでに戦闘は終わっていた。

 森の木々はなぎ倒されており、地面は抉られたような跡がそこらじゅうに確認できる。

 さらにあちらこちらには腕や首、胴体なの人体の部位が飛び散り地面は血が染み付いていた。

 ここには屍しかないが、そのなかで欠損していない死体は一つとして存在していなかった。


 辺りには血の臭いが充満しており、したいにはカラスや肉食の鳥がたかっている。


 ここまで悲惨な戦場にもか変わらず鬼族には死者は誰一人出ていなかった。


 結論からいうとここでの戦いは一方的な虐殺だった。


 鬼族の老兵達はまさに鬼神のごとき強さで敵を屠っていったのだ。


 「おい。なんだあれは?」


 戦いを終え、一応辺りを警戒していた鬼族の老兵が遠くで何かを見つけた。

 老兵の声に気が付いた者たちが次々と何かを見つけた老兵の視線の先を見る。


 そこに居たのは一匹の大きな銀狼だった。

 その大きな銀狼は美しい毛並みであり、音もたてずに戦場を歩いていた。


 「あれは魔物か?」


 「いや、あれは魔物なんて生易しい者じゃねえ」


 そんな会話が銀狼を見た者たちの中から話されている。


 「あれは神獣だ」


 そう話している男の額には大粒の汗が流れている。

 

 「さっきの賊共も一応紛い物の神格を持っていたみたいだが、あいつらとは別格の存在、本物の神だ」


 老兵の話を聞いた者たちは皆焦りを感じていた。

 ここに居る全員わかったのだ。


 勝てないと。


 神獣は最上位の龍と同等の強さを持つものすら存在する怪物。

 ここに居るのは長年戦ってきて前線を退いた老兵だけ、頼みの綱である龍鬼は先ほど街へ首謀者を屠りに行ったばかりでここにはいない。

 

 つまりこの場にはあの神狼に敵う戦士はいないのだ。


 できることはただ一つしかなかった。


 「全員、敵意を向けるなよ」


 出来るのは敵対しないことだけだった。

 

 銀狼が老兵たちを見る。

 老兵と銀狼の目が合う。

 

 老兵は時が止まったような感覚に陥っていた。

 たった一瞬しか目が合っていないのに数十分目が合っていたような感覚が老兵を襲う。

 

 その研ぎ澄まされた感覚の中では百戦錬磨の老兵ですら恐怖の感情しかなかった。


 対して神狼は鬼族を一瞥するとどこかへと去っていった。


 








 俺は自分で作り出したスケルトンどもを追ってビルの前までやってきた。

 念のため軍へは屋敷で連絡をしてきた。


 スケルトンどもの足が思ったよりも遅かったので全員に強化魔法をかけて移動速度を上げたら二十分ほどで付いた。

 付いたのは、この国では四番目に大きな都市桃園市にだ。

 

 確か桃園市には様々な企業のビルが並び立っているのだが、このビルもその一つだろう。


 「中に人は居るか?」


 俺は横に居る陽月にそう尋ねた。

 今の陽月は魔力を十分に体内にためている状態みたいなので、ほぼ全ての魔法を使用することが出来る。

 

 「四人ほど居るみたいだよ。一人はケイス王で残りの三人は武装してるみたい」


 俺にそう言った陽月だが、なぜか不満そうにこっちを見る。

 陽月に何かやった覚えはないんだけどな。


 「なんだよ」

 

 俺はその目線に耐え切れないので素直に訊いてみた。


 「は~ 自分で確かめればいいのに、その眼は何のためについてるんですか? 飾りですか? てかなんで私は千里眼まで使って鬼龍の言うこと聞いてるのかしら?!」


 陽月はもしかしたら疲れてるのかもしれないな。少し情緒不安定かもしれないな、後で話でも聞いてやるかな。

 てか、感知魔法じゃなくて千里眼を使ったのか。


 「ごめんって。今度飯でも食べて話聞いてやるから」


 そういえば最近は陽月と二人で話すことも会うこともなくなったな。最近は龍那や凛那と出かけることの方が多い気がする。

 それに時雨と居るのがほとんどだしな。


 たまには陽月との時間も作るか。


 「じゃあ、鬼龍の手料理がいい」


 陽月は俺の手料理がご所望なのか。

 たまには手料理もいいかもな。三年位前までは毎日俺と母さんとで作っていたんだが、俺がいなくなってからは刹那が作るようになってたから任せてたんだけどな。


 「わかった俺が作るよ」


 「やったー!」


 子供っぽく陽月が喜ぶ。

 少し行動が幼く見えるが、まあいいか。


 

 俺達が話している間にもスケルトンがビルの中に進軍していってる。

 中に一般の敵対していない人がいれば助けようかとも思ったのだが、居ないのなら問題はない。

 

 このまま大人しくスケルトンに殺されてくれればいいのだがな。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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