入学試験6
大きな要塞の会議室に男たちは集まっていた。窓がないので時間がいつかもわからない。
男たちがここに集まった理由はもちろん会議だ。この会議室には窓は無い、扉も更迭の扉で閉ざされているうえに、この部屋全体を結界で囲んでいるため盗聴もできない、更に核爆弾でも中の人は気が付かないくらい丈夫に作られている。
これらの情報からもわかるように、この会議は相当重要なことなのだろう。
現にここに集められたのはこの国では国防に関わっている最重要人物だけである。
「先日の西の海域での事件だが」
大柄な男が全員に目を配りながら喋る。
先日の事件は一般的には報道すらされていない。
理由は他国の軍艦が侵略してくるのは日常的なので報道する必要もないからである。だが、今回の理由は違った。そもそも、そんな日常茶飯事のことをここでの議題になんかしない。
ここでの議題になったということは、それだけ普通ではないのか、緊急事態ということだろう。
「焔龍殿の働きによって防げたが、戦艦の残骸から奇妙な魔導書が発見された」
魔導書とは、その多くが魔術関連な内容を記してある本のことである。
まあ、それは一般的な話だが現に、その場にいる多くの人がざわめいた、普通の魔導書ならこの議題に出ることは無い、その証拠に奇妙な魔導書と言われている。
「一体何が奇妙だったんだ?」
一人の男が大柄な男に質問した。
「この魔導書は白紙だったんだよ。いや、正確には白紙になったというべきか」
大柄な男はそこで話を区切り実物を持ってきた。
「それがさっき言ってた魔導書か」
小柄な男が魔導書を観察する。
「ここには魔力の痕跡が残っていた。ここからは推測だが」
ここにいる全員が大柄な男に注目する。
「この魔導書には邪神を召喚する方法、もしくは、復活させる方法が書かれていたと思う」
「ちなみにそう思う理由はあるのか?」
一人の男が訊いたいた。
邪神の召喚なんてそんな現実離れした話があるか。男はそう思ったから訊いたのだろう。
邪神つまり神なのだ、神を召喚するのに対価はどれだけ必要なのか。
そもそも、そんなことが可能なのかという疑問が生まれたのである。
「もちろん理由はある、この本には相当な魔力と血の匂いが付いている」
大柄な男がそう言うと他の男たちの目が変化したある者は金色の瞳にまたある者は赤くなっている誰一人として同じ色の者が居ない、これは竜人化、すなわちここにいる人は皆竜人であることを意味する。
この大陸の人間は約六割、残り四割は、竜人や亜人、獣人など様々だ。
昔からこの大陸では共存してきたので人間たちも恐怖無い。
「確認が取れたとこで話を進める」
大柄な男がそう言ったことで、他の男たちは姿を戻した。
「さらにこの本の最後のページにあることが書かれていた」
「この本は白紙ではなかったのか」
話に割り込んで最初に質問した男が発言した。
「だから最初に行っただろ白紙だったって」
大柄な男は男の質問に答えながら本を開いた。
「昨日までは白紙だったが気が付いたら文字が出ていて、こう書かれていたCthulhuと」
場は静まり返った。
「クトゥルフ、旧支配者か」