雷
森林が広がる世界で俺達は川を挟んで対峙していた。
俺の方には白と朱里。
時雨の方には雫がいる。
時雨と雫は二人とも武器を装備しており、すぐにでも戦える状況だ。
「サラマンダー」
朱里がサラマンダーを呼び出す。
今考えればこの場所は少し失敗したかも知れない。
サラマンダーの体は炎で出来ており周りの温度もあげる。そのため森林であるこの場所では火災が発生しかねない。
木々を全て消し去るか。
俺は全知全能の消滅で視界に入る木々を全て消し去る。そして根っこごと消し去ったため地面がぼこぼこになったので、創造で土を造りだし地面を綺麗にする。
森林を戦う場にした意味は無くなったが、これで思う存分戦えるだろう。
「やっぱり鬼龍君ってデタラメだよね。さすがは龍王様だよ」
朱里が呆れたような顔をしながら俺にそう言ってきた。
さすがに能力の規模が大きすぎたかな、でも朱里と雫は俺の事を知っているから大丈夫だろう。
「でも、今の森を消した力は二人に使っちゃダメだからね! あと少しは手加減しないと雫が怪我そちゃうから気を付けてね」
朱里が俺にそう注意してくる。
きっと朱里は雫の事を心配しているのだろうけど、それは無用なのに。
「わかった少しは手加減するけど、朱里にも雫にも不死の加護があるから多少の怪我は覚悟してもらうよ。もちろん怪我は後で治すから」
俺はそう言い赤槍ダディレクを構える。
槍を構えると槍二つに別れた先端が振動し始める。
この槍を造り出した龍の司る力は地震。
そのちからがこの槍にも宿っているというわけだ。
「サラマンダー 二人を炎で包み込んで!」
朱里がそうサラマンダーに命令すると時雨と雫の周りに巨大な炎の壁が現れる。
その炎の壁は天高くまで続いており上空からの脱出は無理だろう。
そして周りの草すら焦がすほどの熱量だ、並の相手ならばこれで完全に封じ込めるだろう。
普通の人間や動物なら死んでいるだろう。だが、生憎とこの学園に通っている生徒は普通ではない。
突如、何の前触れもなく炎の壁が小さくなっていく。
よく見れば焦げた草も青々と茂っている。
あれは時間が戻っているという表現の方が正しいだろう。
この時間を戻した能力を使えて、この場に居るのは俺ともう一人だけ。
「早速能力を一つ使うのかよ時雨」
俺はそう言いながら炎の壁から姿を表した時雨の横で、刀を構えたままの雫に突撃する。
おそらく俺が時雨に話しかけたことで雫は自分が狙われるとは思っていないだろう。
少なくても無意識ではそう思っているはずだ。そんな相手に奇襲のように一撃を与えに行く。
戦場ではそういった油断が命取りになる、悪く思うなよ。
俺の二股に別れている槍が雫の喉と腹を狙う。
だが、当たると思ったその一撃は雫には当たらなかった。
雫は避けたわけでも防いだ訳でもない、雫は何もしていない。
なにかをしたのは時雨の方だった。
「鬼龍の相手は私」
金属がぶつかり合うよりも高い音が響きわたる。
手元を見れば時雨の青い刀が俺の槍を止めていた。
そして気がつけば紫の刀で俺を切ろうとしていた。
油断ならないな。
俺は槍を手放し最速の動きで時雨の後ろに回り込み脇腹を蹴る。
俺の最速の動きは今の人間の状態でも軽く光の速度を越える。だが、そんな勢いで時雨を蹴り飛ばせば、いくら時雨といえど命の危険が伴う。
そのため蹴る瞬間だけ少し手加減をした。
さすがに女の子の肉片は見たくない。
時雨が丘までノーバウンドで吹き飛び、丘にあたった瞬間凄い土煙が舞った。
さすがに今のでは時雨は死にはしないだろう。正直手加減が難しい。
本気を出せば瞬殺出きるくらいの筋力は持っているのに、相手に合わせて力加減が上手くいかない。
これは経験かな。
俺がそんな事を考えていると土煙から気配を感じた。
気配から察するにどうやら時雨はまだ戦う気のようだ。
「白、時雨の相手をしてこい」
後ろにいた白に命令する。
すると白は一度だけ頷き、時雨の方に神速の速さで追撃しに行った。
白も時雨もほどほどに戦うと信じて俺は、雫を相手にするために先ほど手放した赤槍ダディレクを拾い上げる。
「水刃」
雫が一言そういうと空中にどこからか水が集まり形を成していく。
その形はまるで小さな三日月状の刃。
その刃が俺に飛んでくる。
だが、前戦った時の技とは違い刃の大きさはそれほど大きくもないし数も少ない。
ただ、多少スピードが速いだけだ。
簡単に避けられるがそれでは面白くないだろう。
俺は襲い来る水の刃を槍で叩き壊す。
槍の先端が常に振動しているので、魔力で操られている水はあっという間に制御を失いただの水に戻り弾け飛ぶ。
「サラマンダー 雫にブレス」
サラマンダーが雫に強烈な炎をはきかける。
その炎でさらに周囲の温度が上がる。
雫はなんとかサラマンダーのブレスを横に飛んで回避した。
そしてその瞬間大きな落雷の音が響き渡った。
一応言っておこう今の天気は快晴。
そんな天候に落雷が自然発生する可能性はまったくない。
すなわち自然発生以外の原因が存在する。
そして俺はその原因に心当たりがあった。
「時雨のやつ」
俺は思わず声を出してしまった。
そして落雷がまた発生する。
明らかに自然現象ではあり得ないような強烈な音と光、そして熱量が遠くからでもわかる。
「ガオォォォ」
次に響いたのは獣の鳴き声だった。だた、普通の獣ではない巨大な神獣の雄叫びだった。
その巨大さは遠くからでもはっきりとわかる。
巨大な白い虎の姿が。
白虎、すなわち白の本来の姿で戦い始めてしまった。
さすがに止めないといけない気がしてきたな。
今回も読んでいただきありがとうございました。




