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龍の卵

 風呂から上がったら陽月によって誤解が解けた俺は自分の部屋に籠っていた。

 籠っていると言っても拗ねて部屋に籠った訳でもなく一人でもない。目の前には陽月が居て、横にはさっきまで寝ていた白が居る。


 「痛くない?」


 風呂上がりのせいか陽月の肌が少し赤い、髪もまだ乾かしていないため、俺の部屋のなかにはシャンプーの匂いが微かに広がっている。


 「大丈夫、痛くは無いはずだから」


 俺はそう言いながら陽月の左胸に手を伸ばす。手には柔らかい感触が伝わってくる。


 「…………」


 静寂がこの部屋を支配する。微かに聞こえるのは陽月と白の呼吸の音。そして手には脈打つ陽月の心音が響き渡る。


 俺は陽月に触れている手から陽月の魂と遺伝子情報を読み取る。

 それと同時に自分の魂と遺伝子情報を解析する。


 そして読み取った陽月の情報と俺の情報を自分の体内で創造して構築する。

 次に構築した陽月と俺の情報を合成させる。

 だが、これでは情報が多過ぎて生物では無くなるので、合成させた情報をちょうど二つに分け、ユイとユニの双子の魂を入れ完成させる。


 そして俺の中の完成させた二人の情報を外に出す。


 外に出した情報は形を作り始めた。その形はまるで卵。いや卵そのものだ。


 「まだ終わらないの?」


 と顔を赤くした陽月が俺に言ってくる。

 少し名残惜しい気もするが俺は慌てて陽月の胸から手を離す。


 何故か少し手が寂しい。


 「まったく、いつまでも触ってるんじゃないわよ」


 陽月が俺を睨む。

 俺は陽月から目を反らすし、陽月の髪を無詠唱の魔法で乾かす。


 暖かい風が室内に起こり陽月の銀色の髪が靡く。


 「ごめんなさい」


 「別にいいわよ」


 目を細め暖かい風を気持ち良さそうに浴びている陽月。


 「で、この大きな卵は?」


 卵を見ながら陽月が訊いてくる。

 正直訊かれてもあまり俺にも答えられることは無いのだが、視た限り龍種の卵に近い形状をしている。


 「一応俺達の子供? 卵? だよ」


 うまく説明ができなくて変な言い方をしてしまった。

 だけどこれが俺達の娘達なのは確かだ。


 でも何故卵の姿をしているのだろうか?

 俺も陽月も産まれたときは赤ん坊のはずだ、そう考えると原因は遺伝子ではなくて能力によるものなのか?


 「そう。元気な子だといいな」


 陽月が二つの卵を撫でる。

 陽月の言う通りだ、子供が元気な姿で産まれてきてくれればそれでいい。


 「所でこの後はどうするの?」


 陽月が俺に訊いてくる。


 んー 卵だから温めればいいのかな?


 「温めればいいんじゃないかな?」


 俺がそういうと近くに居た白が卵の方によっていく。

 そして卵を抱き寄せて、いつの間にか出していた布団に卵と自分を入れた。


 もしかして卵を温めて孵化させようとしてるのか?


 「来て」


 俺を呼ぶ白。

 俺が白の方によっていくと白が布団を開ける。


 「寝て」


 俺は言われたとりに布団の中に入る。

 ちょうど両サイドに卵がある感じになった。


 「これでいい」


 と白が布団から出てそう言う。


 これはあれか? 俺が卵を温めればいいのか?


 「こっちに来て」


 と次は陽月の手を取って部屋から出ていく白と陽月。

 陽月はなんだか解ったような顔をしておとなしく白と部屋を出る。


 最近あの二人仲良くなったな~


 俺はそのまま眠りについた。






 白ちゃんに連れ出された私は今自分の部屋に居た。

 この部屋には私と白ちゃんだけ。

 多分寧々は今お風呂に入ってるのかな?


 「寝て」


 布団を指差しながらそう言う白ちゃん。

 なんで寝かせようとするのだろう?


 「どうしたの?」


 私は訳がわからなかったので白ちゃんに訊いてみた。

 わからなければ訊けばいいんだ。


 「鬼龍と寝たかったけど寝れなかったから」


 白が寂しそうな顔をしながら私の布団に潜って行った。


 なるほど、つまり誰かと一緒に寝たいのね。

 かわいいな~ あんな顔をされたら一緒に寝るしかないよ。


 「いいよ。一緒に寝よ?」


 私は布団の中で丸くなっている白ちゃんの元に行き、布団の中に入り白ちゃんの頭を撫でる。


 白ちゃんの髪は凄いさらさらで撫でるのが楽しくなっちゃう。


 撫でられている白ちゃんは最初のうちは無反応だったが、撫でられているうちに私の方に寄ってきて引っ付いて甘えてる。


 本当にかわいいな。


今回も読んでいただきありがとうございました。

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