少し変わった兄妹2
なんで停めたはずの世界が動き出すの?
やっぱり兄さんはおかしい。
今出せる私の龍の力の全力を出して全てを停めたのに。
動き出した理由はわかっている、兄さんだ。
「地球規模で全てを停めるなんてそこら辺の最下位龍神じゃ相手にならないな。だが、俺はそいつらより強いからな」
息を切らしている私に漆黒の太刀を向けそう言う兄さん。
「ここからは第二ラウンドだ」
そしてその言葉のあと、兄さんの雰囲気が変わったのがわかった。
まだ、兄さんは龍神化どころか龍化すらしていない。ただの人間の状態だ。
まあ、能力と身体能力だけは完全に人外だけど。
息を整え刀を構える。大きい能力はあまり使えない。
だけど私が能力の使いすぎで疲れていると思っている今ならチャンスだ。
実際疲れている、だけどここで頑張らなきゃ兄さんには絶対に勝てないと思う。
私は兄さんが攻撃を仕掛ける前に全力で斬りかかる。
右から太刀を振り下ろす。
漆黒の太刀に防がれる。
左から斬りかかる。
またしても防がれる。
上から下から斜めから、全方位から斬りかかる。
十秒位ずっと斬りつけているが、全て兄さんには防がれる。
私が剣術をメインで戦うのは兄さんのスタイルの真似だ。
私が知る限り兄さん以上の剣の使い手は居ない。
そんな兄さんを私は誇らしく思っているし憧れてもいる。
だから恥ずかしいところは見せられない、兄さんが居なかった三年間で私も強くなった。
今その証明をするんだ。
「どうした? もう終わりか?」
私が剣撃を辞め後ろに距離を取ったのに対してそう言ってくる兄さん。
兄さんはまったく息が切れておらず、見てとれるダメージもまったく無い。
ダメージが無いのは私も同じだ。兄さんあまり攻撃をしてこなかったからだ。
やっぱり手加減されてる。
その考えに達した私はどこかで一瞬気を抜いたのかもしれない。
兄さんの姿が一瞬にして消え、気が付いた時には私の目の前に姿を現し漆黒の太刀を私の首に突きつけていた。
「俺の勝ちだな。それにしても剣速がビックリするくらい速くなったな、もしかしたら光にも追い付けてるんじゃないか?」
そう私に称賛の言葉をくれる兄さん。
やっぱり兄さんは強い。
その言葉は心のなかに止め、ニッコリと兄さんに笑い掛けるだけにしといた。
最初に言っておこう、俺は悪くないな。
神格を持った水の精霊のディーネや時雨そして冬姫に刃物を突きつけられているが、俺は悪くないな。と、思いたい。
実際さっきまで風呂に入っていて今出てきたところなのだが状況がわかんない。
冬姫と遊んだ後に汗や土を流すために風呂に入ったわけだ。最初に冬姫が入って次に俺が入ったわけだ。
少なくとも風呂に入る前までは冬姫も時雨も機嫌は悪くなかったはずだ。
ディーネは俺が風呂から上がったらいつの間にかそこに居るし、シルフィーと刹那は笑って面白がっているし。
白を除く四神達は皆、一瞬だけ俺を見たと思ったら目を反らすし、白もまだ、寝ているみたいだし。誰も俺に助けをくれない。
陽月はまだ、風呂に入っていてここには居ない。
この屋敷の風呂は露天風呂になっており男女も分けてある。
なぜ旅館でもないのに男女が分けられているかと言うと、実は年に何回かここに客人が来ることがあるので分けているというわけだ。
話は戻るが何故俺は三人に刃物を突き付けられているのだろうか?
ディーネは水で作った剣を俺の首に突きつけている。
魔力が相当な量を使っているのか凄い切れそうだ。俺の首を跳ねるには十分だろう。
時雨も青い時間の剣と紫の空間の剣に雷を纏わせて戦闘モードだ。
クトゥルフの眷属と戦わせたときよりも力を感じるし、殺気も凄い。
冬姫も白銀の太刀を構えて俺を斬ろうとしている。
あの刀も神器だから凄い切れ味だろうな。
「兄さん。陽月さんと子供を作るそうですね、何故一言も話してくれなかったんですか? しかも前言ってましたよね。結婚はまだしない、少なくとも陽月さんが結婚できる歳に成るまではって、結婚はしないのに子作りはするんですか?」
刀を見ながら馬鹿なことを考えていた俺にビックリする内容の話をしてくる冬姫。
誤解が生じているのがわかった。おそらく陽月も勘違いしていたのだろう。
こんな状況なのに冷静に頭で分析する俺自身に少し呆れる。
「鬼龍。私は味方だよ? だから話して」
時雨が優しい声で俺に訴えてくる。
その持っている凶器が無かったらまるで聖母のような優しい光景だっただろう。
「そして一緒に死のう? 私はずっと一緒だからね」
前言撤回。聖母の皮を被ったヤバイ奴だった。
「言い訳するなら今のうちよ。じゃないとアナタを殺しそうだから」
ディーネの目はマジだった。
正真正銘の殺気を感じた。
言わなくてもわかると思うが陽月が風呂から出てくるまで俺は必死に誤解を解く羽目になった。
この後しばらくして陽月が戻り事情を話してその場は収まった。
今回も読んでいただきありがとうございます。