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かくれんぼとイスの痕跡

 イス人。それは超高度な宇宙から飛来し地球に来た精神生命体。

 彼らは度々地球の生物の精神を則ることがある。それは人間も例外ではない。彼らが何を考えているかはわからない、なぜなら彼らは我々とは違う種族で高度な文明を造り上げた精神生命体なのだから。



 鬼龍たちが公園でかくれんぼをしている同時刻。焔龍家当主の焔龍勝は軍の一個分隊、七人を指揮して表の世界、太平洋上にある小さな島にいた。

 

 なぜ勝がここに居るかというと、先日のクトゥルフ関連の魔導書ををムー大陸に持ち込んだ艦隊の出所がここだと分かったからだ。


 勝は軍人で、軍のほぼトップに位置する人物だ。そんな人物の率いる隊は驚くことにほとんどが新兵。二等兵か一等兵だった。

 彼らのほとんどは教育学校と軍事学校以外では戦ったことがなかった。

 なぜそんな新人を連れてきたかというと実践経験を積ませるためだ。少なくとも演習ではなく実際に調査させることでの経験値はだいぶ違うと勝は考えている。


 「隊長、何もありませんね」


 勝にそう言ったのは新兵の一人である森二等兵だった。

 本来なら口を利くのも恐れ多い程の階級の差があるのだが、普段から勝は軍でぶらぶらあちこちに顔を出しているので距離感が近いのだ。

 まあこれは勝の性格なのでしょうがないが。

 ちなみにこの作戦中は勝は自身のことを隊長と呼ばせている。


 「そうだな森二等兵。だが油断するなよ」


 勝はこの島に上陸する前に大きな気配を一つ感じていた。

 その正体は中型の魔獣なのだが、これをちょうどよい練習相手にしようと勝は思った。


 「隊長! 前方四百メートルに大きな生命反応を感知しました。 これは... 魔獣です」


 「でかした岩原二等兵。今よりその魔獣を討伐する指揮は...]


 ここで勝はある反応を知覚した。これは数年前の戦争で覚えた感覚。空間の歪む感覚だった。

 勝は嫌な予感を覚え魔獣を早く討伐することに決めた。


 「いや、魔獣は遭遇次第俺が倒す。このまま島の中央に行くぞ」


 隊長の表情の変化に気が付いたのか、兵士たちは隊長の言葉にうなずいた。


 


 進むこと十分、魔物と遭遇した。大きさは約四メートル。見た目はクマに似ているが大きさと色が明らかに違った。

 熊の魔獣は赤色の毛の覆われていて、口からは火を噴きだしていた。

 赤色の火を噴く熊の魔獣は長年生きる勝ですら見たことがないものだった。


 だが、そんなことはどうでもいい邪魔になるのなら殺せばいい。


 勝はそう考え、腰にある二本の刀の内一本を鞘から抜き出す。


 その動きは洗練されていて無駄がなかった。


 勝は赤い熊の首を瞬時に切り落とした。


 「行くぞ」


 勝はそれだけ言うと熊の死体には目もくれずに先に進んでいった。

 まるでこの先にもっと強いものがいるかのように刀はしまわずに勝は前しか見ていなかった。


 だから気づかなかったのだろう。赤い熊が最後に口にした言葉に。


 赤い熊の生命力はとてつもなかった。いや、赤い熊もだが中の精神生命体がかもしれない。

 頭を切り飛ばされたのにも関わらずわずかに息があったのだから。


 「...大なる..族....イ....万歳....]


 赤い熊ははっきりと日本語でそう言った。

 赤い熊はもしかしたら元々は人で、誰かに魔獣へと変えられたのかもしれない。






 勝たちが太平洋上の島にいるとき、鬼龍は鬼ごっこをしていた。

 鬼龍の横に居るのは双子の少女の妹の方のユニ。


 俺は侮っていた、彼女たちを。まさか彼女たちが鬼龍が雑木林に入ることを予想して一人をおとりにして二人がこっそり雑木林を出ていたなんて思ってもいなかった。


 ユニに聞いたらこれを考えたのは白だそうだ。

 俺のことをよくわかっている白が考えたのなら納得がいくが、人見知りの白がユイたちと作戦を実行したのには本当に驚いた。


 「さて遊具の後ろでも見に行くか」


 「うん」


 俺はユニそう言って二人で雑木林を出た。

 遊具の後ろって言うのは公園入ってすぐあった大きな遊具のことで、そこを探すのはただの感だ。

 

 「ねえパパ」


 ユニがまた俺のことをパパと呼ぶ。

 なぜ俺のことをパパと呼ぶのだろうか。


 「俺はパパじゃないぞ」


 俺は一旦立ち止まりユニにそう言った。

 なぜ俺のことをパパと呼ぶのかは知らないが、本当の父親にでも見られたらなんていえばいいのか?


 「パパだよ? 私ね未来を見ることが出来るの」


 ユニは突然俺をパパと呼ぶ理由を話し始めた。

 

 「そう遠くない未来にあなたは私達のパパになるの。だからパパなの」


 ユニはそこまで話したら俺の手を笑顔で握った。

 その笑顔には俺を騙そうとしている意志は感じられない。

 未来を見ることのできる者が居ることは知っている。身近な人なら陽月や刹那、時雨がそうだ。制限されていない状態なら俺だって未来を見ることが出来る。


 「わかったよユニ。だけど今はまだパパはやめような。ユニが本当に娘になった日に言ってくれ」


 俺はユニにそう言った。

 

 「んー パパがそこまで言うならわかった。じゃあ、お兄ちゃんって呼ぶね」


 俺が言ったらユニはわかってくれたみたいで、これからはお兄ちゃんと呼ぶことにしたらしい。

 

 「おう。じゃあ二人を探しに行くか」


 「うん!」


 ユニは満面の笑みで俺に答えてくれた。


 

 この時の俺は勘違いしていた。ユニの能力を。

 ユニは未来を見ることが出来るのではなく、運命を捻じ曲げ新しい未来を創ることが出来る能力を持っていることを。

 そして知らなかった。このユニの能力は彼女に悲劇をもたらす呪いだということを。そして、その呪いをかけたのが過去に原初の龍神王として恐れられていた原初の神であることを。

次回の投稿は来週の日曜日に予定しています。

次回もよろしくお願いします。

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