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駆けっこ

少し長くなってしまいました。

 日曜日、天気は晴れ。この日は昨日であった双子の姉妹と遊ぶ約束をしていた。

 昨日街に出かけていた俺達は男たちに囲まれている少女二人を助けた。俺には妹がいるのでその少女たちを助けずにはいられなかったのだ。

 少女たちの見た目の年齢は白よりも少し年上に見えた。

 俺は白に友達を作ってほしかった、白は人見知りのため中々他者と交流ができない、それに加えて獣の王である白虎の一族のため孤立しがちだ。

 俺はこの機会に、少女二人と白に仲良くなってもらおうと思った。


 「白起きろ」

 

 俺は横で寝ている白をゆすって起こす。

 白はあまり寝起きのいい方ではないので中々布団から出ようとしない、その上俺にくっつきながら寝ているので俺も行動の制限がかかる。


 「白起きろって」


 俺は白を激しく揺らす。

 すると白がやっと目を覚ました。


 「ん~ あむ!」


 起こし方に問題があったのか、それとも白が寝ぼけていただけなのか。白が俺の腕にかみついてきた。

 本気の噛み付きではないのか腕に痛みは無い。


 「そろそろ出かける準備をするぞ」


 俺は腕に噛みつき続けている白にそう言い、腕から白を引きはがした。


 俺の腕には白の歯形が付いていた。普段ならあの噛みつきぐらいでは跡すら付かないはずだ。おそらく昨日の龍王との約束、罰ゲームのせいだろう。


 「ん」


 今度はおとなしく従ってくれた。





 出かける準備を終え、俺達は屋敷を出た俺と白。

 昨日は冬姫もいたが今日は刹那の手伝いがあるらしく、白と俺だけで双子の姉妹に会いに行くことになった。


 そういえば双子の姉妹の名前を聞いてなかったな。

 今日会った時にでも聞いておくか。


 今の俺は異能を使うのに制限がかかっている。そのため町に転移ができないので大人しく自力で行くことにした。

 屋敷から町まで直線でも数百キロは在る。制限のかかった状態なら全速力で行けば十分くらいで街につくだろう。


 「白街まで競争するか」


 俺は白にそう言った。


 「うん」


 白は短く返した。

 半獣人の姿の白はおそらく俺と大差ない身体能力だろう。もちろん制限されている今の俺とだ。

 ならばこれはいい勝負になるだろう。


 「よーい。ドン!」


 俺は全力で駆け出した。白を置いていくつもりで、じゃないと競争する意味がない。こういうのはお互いが本気だからこそ楽しいのだ。

 そしてお互いの力が拮抗していたのならなおのこと楽しいだろう。


 白が俺の横についてきているのが目の端に映った。


 大岩や小川を飛び越え森の中を走り抜ける。

 所々に最下級龍や下級龍の姿が見えたりしている。

 他にも幻獣と思わしき生物や魔獣などが徘徊しているのがわかる。


 目の前に大きな湖が見えた。

 この湖は屋敷の周りを囲っている。

 直径二十キロメートルの湖の中に直径十キロの島があるという地形だ。


 俺は迷わず崖から湖に飛び込む。

 だが、俺の体が水に沈むことはなかった。なぜなら水の上を走っているからだ。

 こんな速度で走っていたら沈まずに走ることも可能だ。


 水面で思い切り踏み切って向こう岸の崖を登る。

 また、森の中を疾走する。木々をかいくぐり街を目指す。

 まだ白との距離はほとんど最初と変わっていない。



 この後は特に変わったこともなく街についた。勝負は引き分けに終わり俺達は姉妹のもとに向かった。

 もちろん街中なので徒歩でだ。


 




 同時刻大陸の西にあるとある空港にて一柱の女神が秘かに降臨した。

 その女神の名はオリュンポス十二神の一柱であるアテナ。


 「ここが龍王と鬼王の国か。恐ろしい土地だな」


 アテナはそれだけを言うと姿を消した。





 時間は正午を少し過ぎたくらい。天気は晴天、気温は少し高くなった。

 女神アテナの襲来など知る由もない鬼龍は、双子の姉妹と出会い公園で遊ぶことになった。


 「そういえば二人の名前教えてもらっていいかな?」


 俺は歩きながら、双子の姉妹にそう訊いた。

 

 「私はユイ」


 「私はユニ」


 双子の姉妹はそう言った。

 姉の方がユイで妹の方がユニだそうだ。


 「お兄さんは名前なんて言うんですか?」


 妹のユニちゃんが俺にそう訊いた。

 そういえば俺も名前名乗ってなかったな。


 「俺は鬼龍だ」


 俺は苗字を隠し下の名前だけを言った。

 苗字を隠すのは面倒ごとを避けるためだ。


 「鬼龍さん?」


 姉であるユイがそう俺の名前を口にした。

 鬼龍さんはなんだか変な感じだな。まるで雫に言われている感じだな。


 鬼龍は、ユイとユニを妹のような感じで見ている。

 妹のような感じで見ている彼女たちに他人行儀で鬼龍さんと呼ばれるのはむずがゆかった。


 「鬼龍でいいよ」


 俺は双子にそう言った。


 「鬼龍」


 「パパ」


 姉の方は鬼龍と言ったが、妹の方は何を思ったのか俺のことをパパと言い出した。

 パパって言われるほど老けている見た目じゃないはずなんだけどな。


 「こら! 昨日話したでしょ」


 ユニが俺のことをパパといった瞬間だった。姉であるユイがそう言ったのだ。

 昨日何かあったのかな?


 「ごめんなさい」


 ユイがそういうとユニは大人しく謝った。

 何だったんだろう?

 

 「まぁまぁ。それよりせっかく公園に来たんだから遊ぼうよ」


 俺はこの場をどうにかしようとそんなことを提案した。

 そういえば白がずっとだんまりだな。


 「どうした白?」


 俺は少し気になって白に訊いた。


 だけど白は頭を横に振るだけだった。


 緊張してるだけなのか?


 白は人見知りであまり年の近い知り合いがいないのでこの機会に仲良くなってほしいのにな。

 

 「じゃあ何して遊ぶ?」


 俺は続いて白にそう訊いた。

 さすがにこれには答えてくれるだろう。


 「かくれんぼがいい」


 白は少し小さな声でそう言った。

 白がどこでかくれんぼを知ったのかは知らないが、かくれんぼはどうなんだろう。

 双子がかくれんぼをしてくれるといいが。


 「私もやってみたい」


 さっきまで怒られていた双子の妹のユニがそんなことを言った


 「いいわねかくれんぼ」


 姉であるユイもそういってきた。

 かくれんぼは思ったよりも好評なのかもしれない。


 「じゃあ俺が鬼をやるから三人は隠れてくれ」


 俺は自分から鬼を買って出た。


 「あと公園から出るのは無しな」


 俺はそれだけ言うと声を出して数を数えだした。


 「10」

 

 「白ちゃん一緒に隠れよ~」


 「9」


 双子の姉妹のそんな声が聞こえてきた。

 足音が俺から見て左後ろに行くのが聞こえてくる。足音の数は三人分。

 おっとこれじゃあかくれんぼも楽しくないな。


 俺は両手で耳を覆った。


 「5」


 「4」


 「3」


 「2」


 「1」


 「0。 よし探すか」


 俺は正確に十秒数え、最後に三人の気配があった方向へと足を進める。

 足を進めた先には小さな雑木林があった。


 感覚を研ぎ澄ませば雑木林に居る三人を見つけることくらい簡単だが、それをやったら楽しくないだろうし、しょうがないか。


 俺は三人を見つけるべく雑木林の中へと足を踏み入れた。





 

今回も読んでいただきありがとうございました。

次回はおそらく来週の日曜日に投稿しようかと思っています。

もしかしたら早くなるかもしれませんが。


次回もよろしくお願いします

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