悲劇の始まり
少し短いです。
このムー大陸にも巫女と呼ばれる者達がいる。
この大陸の巫女のなかには特殊な力を持つ者も居る。
その特殊な力の中に龍を呼び出す事ができる者達が居る、そのもの達の存在は世界のなかでも異様で、力の使い方を間違えれば街や国にとんでもない被害が出る可能性がある。
彼女達が呼び出せるのは下位龍以下の龍種だけだ。
龍は下位龍ですら一匹で町一つを滅ぼすことが出来るほどの力持つ危険な存在であり、生来系を維持する要でもある。
そんな龍を呼び出す事ができる者を悪用しようとする者達が居るので、そんな力を持つ巫女は国家レベルで秘密にされている。
だがある日その巫女達は突然姿をけした。
数にして十五人。十五人の巫女達が姿を消した。
龍を呼び出す事ができる魂の強い巫女を十五人。
十五人の犠牲を生け贄にすれば中位龍を呼び出すには十分な人数だ。
もしかしたら上位龍を呼び出す事ができるかもしれない。
晩飯を食べた俺達は少し雑談をしていた。
俺が作った料理は結構好評だったみたいだ。
「鬼龍君って学園に編入してきたんだよね?」
結城朱里が俺にそう訊いてきた。
なんだいきなり?
「そうだが。それがどうした?」
俺は朱里にそう聞き返した。
「いや…」
朱里は目線を俺から外しながら少し考えている。
そして決心したように俺に視線を戻した。
「学園に編入する前は何してたのかなって思ったんだよね」
朱里は少しためらいがちに俺にそう訊いてきた。
学園に入学する前までは俺は龍神王の所で数百億年の間戦いをして過ごしていた。
時間の感覚がこっちの世界とは違うためでたらめな月日を向こうの世界で暮らしていたが、こっちの世界では三年と少ししか経っていないみたいで少し驚いたな。
「えっと実は学園に編入する数ヵ月前まで俺はこの大陸には居なかったんだ」
俺は隠すことでもないと思い隠さずに話すことにした。
まあ、すべては話さないが。
「え?」
「え?」
俺の言ったことに対して二人の人物が同じ反応を見せた。
その二人とは俺のクラスメイトである結城朱里と泉雫だ。
「どうした?」
二人が凄い驚いた顔をしていた。
なぜだろう?
「いや、鬼龍君ってこの国の王様じゃなかったっけ? あれ王子だっけ?」
「朱里。あまり公にはされてないけど確か、龍神家の前当主で前国王は三年前に戦死したって言う噂だよ」
朱里が言ったことの訂正を雫が言った瞬間。空気が凍りついた。
龍神家の前当主で俺達の父親である人物は数年前に死亡している。
確かにその事は事実だが、その事を実の家族の前で言うのはけして良いことではないだろう。
「あぁそうだ、親父はもう居ないよ。親父が死んですぐに俺が王になったんだ」
鬼龍がそういうと一瞬重かった空気が軽くなった。
「俺は王に成って間もなく大きくて小さな国に行ってたんだよ」
俺がそう言った瞬間だった。家の敷地内に誰かが入り込む気配があった。
家の敷地内には結界が張ってあり敵意や害意を持つものは入れないように成っている。
この結界を破らずに入れるということはこちらに危害が及ばない者ということだ。
中庭に白い紙でできた小さな鳥が入ってきた。
それに一番早く気が付いたのは俺だった。続いて陽月。
なぜ陽月が気がつけたかというと、この紙は陽月達巫女が使う式神だったからだ。
「何か入ってきたな」
「これは式神?」
陽月が中庭に飛んでいる式神の元に駆け寄る。
鬼龍の妹である龍神冬姫が陽月の後に続く。
「これは寧々の式神みたい」
陽月が式神に手を差しのばすと、式神はただの紙に戻った。
「手紙みたいですね」
陽月の後ろから紙が見えたのか冬姫がそういう。
「私すぐに神社に戻らないとならなくなったから、今日はここで失礼するね」
手紙を読んでいた陽月が突然そう言い出した。
おそらく手紙に何か書いてあったのだろう。
「どうした陽月?」
様子がおかしい陽月に俺はそう訊いた。
「なんでもない! 鬼龍は皆と楽しんでて」
陽月が俺にそういう。
少し冷たい言い方にも思うがいつもの陽月はこんなかんじだ。
何が書いてあったのかは気になるが陽月が言わないなら別に気にすることでもないのだろう。
「あぁ、わかったよ」
俺の返事を聞かずに陽月は屋敷を出ていってた。
あけましておめでとうございます!
今年も『龍王たちの物語はもう、始まってしまいました。』をよろしくお願いします!
次回の投稿は来週の日曜日に予定しています!