実戦訓練5
少々短いです。
ついさっきあんな戦いかたを見せたんだ、そりゃあ注目されるよな。まあ、予想はしてたけど。
「なあ、皆の言いたいことを代弁して言うけど、鬼龍。お前何者だ?」
春田優。俺のパートナーが真剣な顔をして訊いてきた。
「何者って? どういうことだ?」
俺はとぼけることにした。朱里と雫には話したが今はまだ公にするつもりはない。
「俺は魔力を感知することができる。最後の魔法以外は魔力を感じなかった。つまりあんな威力、速度の手刀や殴りは魔力抜きの常人には不可能ということだ。いや、魔法や魔術を使ったとしてもごく少数しか無理だろう」
優には教室での明るい雰囲気はなく、何かを探るような鋭いく重い雰囲気が今はある。
おそらく警戒しているのだろう。
ここはなんて言おうか?
ここで『黙れ人間。雑魚が誰に口を利いている』と言ってせっかく仲良くなれそうな人を手放すのは惜しい。
ならなんて言うか、それは。
「詳しくは言えないけど俺は魔力以外も使えるんだよ。そして武術も相当自信がある。それに近接戦闘が得意っていっただろ?」
まあ、実際は本当に身体能力だけでやったんだが、それをいったらさすがに言い訳が出来なくなる。
実際俺のやったことを身体能力だけで出来る人間もいるが、それは天才が何十年、何百年の月日を鍛え上げなきゃいけない境地だ。
まあ、神の加護を受ければ別だが。
「あぁ、確かに言ってなた。それに気やマナとか言う魔力とは別の力もあるのも確かだな、変なこと言って悪かった」
優は本当にいいやつだと思う。自分の悪かったところをすぐに謝るのはなかなかできないことだ。
だからこそ嘘をついたことに罪悪感を覚える。
いや、嘘はついていないけど勘違いさせたことにか。
「正直鬼龍が化け物に見えたんだよ。あの戦い方を見たら」
優は何かを思い出しながら苦笑いをした。
なるほど、戦いかたが悪かったのか。確かに手刀で白獅子の首を落としたり、黒い戦士の頭を殴り飛ばしたりしたのは良くなかったな。改めて認識不足だった。
最近まで居た世界では一撃で敵を殺す世界だった、しかもさっきみたいな殺しかたは相手の士気を下げる事ができるため無意識でとってしまった。
俺が戦っていた異世界はそういう戦いの世界だった。だが、この世界ではおそらくダメな戦いかただろう。それはこの世界が平和ということだ、そうこの世界では戦争はほとんど身近にないのだ。
いや、数年前に戦争はあったが被害はすべて当時の王によって治されたため記憶が薄れているのだろう。それに他の国からの侵略だってこちらはほとんど被害無しで迎撃しているため国民には危機感がほとんどないのが現状だ。
つまりこの世界での戦いとは自分を強くする修行みたいなもの殺し合いではないのだろう。
「正直あの戦う様を見たら人間だとは思えないけど、この国じゃ珍しくないもんな。ちなみに鬼族か?」
どうやら優は表面上では信用してくれる気になったみたいだが、俺のことを鬼だと思っているみたいだ。
「鬼族ではないな」
そうして午前の実戦訓練は終わった。
実戦訓練が終わり昼休みに入ったが、俺はまた紗那に呼び出しを受けていた。
理由は簡単。今日の明朝の出来事が原因だ。
「いったいなにがあった?」
いったいなにがあった? 紗那はそう訊くが正直俺は答える気はなかった。
紗那は禁呪の魔女と恐れられる軍の関係者だが、あくまでもそこまでの立場の人間だ。知る必要は無い。
それに旧支配者の復活は世界の危機になったかもしれない。だからパニックを防ぐためにもその事を公表するつもりもない。
「言えない」
俺ははっきりと言った。
だが、紗那は納得していないようだ。
「なぜだ? お前や龍鬼様が出たんだ。この国の守護神の二柱が。それは国の一大事じゃないのか?」
紗那はそう言うが俺は本当に喋る気がない。正直マスコミにも言わずに、鬼族、龍族各当主にしか話さないつもりだ。
「あぁ、この国どころの騒ぎじゃなかったさ。だから俺が出た。そして終わらせた、自分の仕事をしたんだ」
「あぁ、わかった。だが、私が必要になったら必ず呼んでくれ」
紗那は力強い目をしていた。
紗那はおそらく数年前の戦争のことを思い出しているんだろう。力がなかった自分を、大事なときに側に居られなかった自分を。それを繰り返さないように力を手に入れたのだから。
紗那はまだ話したそうだが、正直今は用事があるので話はここまでだ。
次回の投稿は次の日曜日です。




