邪神の眷属達3
少し長いです。
結構ギリギリだったかな?
そんなことを考えながら転がっている異形の死体を蹴る1つの人影があった。
「結構ギリギリの到着だったけどセーフかな?」
鬼神龍鬼は、後ろに居る少女に語りかける。
「アウトよ! 私がいなかったら貴方はここにはいないうえに、これらだって街にいってたのかもしれないし。」
少女は呆れ顔で続けた。
「森に行った大半は私が倒したんだからね!」
少女は深紅に目に銀髪で薙刀を持っていた。格好はいわゆる巫女だ。
「でも、砂浜で五万の数を倒したオレもやった方じゃないかな? 龍王の巫女様」
龍鬼はおちゃらけたように少女に言った。
「私が来たときには同じだけの数がもう森に入ってました!」
少女の持っていた薙刀が光になって消えていった。
「あとで鬼龍に言いつけてやる!」
少女は頬を膨らませそっぽを向いた。
「いやー さすがにそれは勘弁してほしいな陽月ちゃん」
龍神代陽月は巫女である。そして、鬼龍の婚約者でもある。
「ふん!」
陽月はそっぽを向いたまま口を開いた。
「でも、この数はさすがに鬼龍にお願いするしかないかな~」
陽月は異形の怪物の死体の山を見ながらそう言った。
この数の死体を放置するのはまずいし、今の段階では鬼龍に任せた方がいいと思ったのだ。
「そうだな」
龍鬼もあきれ顔でそう言った。
時雨達は意外にも苦戦していた。いや、正確には朱里と雫が苦戦していた。
理由は実践不足と万を越える敵と戦うスタミナ不足だろう。
まあ、普通は百を越える敵と戦うことすら無いのだから無理もないだろう。
二人は互いに二百五十体近くを倒したのだから凄いだろう。
「やっぱり人間にはきついよね~」
シルフィードがそう言った。
シルフィードは二人の魔力が回復するまで風のバリアで二人を守っているみたいだ。
でも、シルフィード程の力を持つものなら攻撃しながらでも風のバリアを張れるのになぜか攻撃しようとはしない。
「あんなに来るなんて想定外すぎ」
朱里が砂浜に倒れながらそう言った。
横には十センチくらいのサラマンダーが心配そうに朱里を見ていた。
雫も二メートルくらい離れた場所に倒れているが二人には怪我は全くない。それはシルフィードが二人を完璧に守ってたということだろう。
「本当に」
雫も朱里には同感のようだ。
実は割れた氷からは最初、少しずつしか出てこなかったもだが、だんだん出てくる数が増えてきたのだ。
ちなみに時雨と白はシルフィードの風のバリアの近くで敵と戦っていた。理由は風のバリアで守られているとはいえ無防備な二人を狙った異形の者達がバリアに群がっているからだ。しかも、シルフィードはそれらに攻撃しないためにこういう状況になっている。
まあ、時雨や白が本気を出せば異形の者達を一掃できるのだが、時雨は鬼龍との約束で全力を出せないうえに、実は異形の者が街に行かないためにとてつもなく大きな結界を先ほど張ってしまったので能力をあまりに使えないのだ。
白は、本気の力。白虎の姿になれば異形の者にたいして無双ができるが、力が強すぎるてシルフィードのバリアや中に居る朱里と雫にまで被害が出る可能性があると時雨に止められていたのだ。まあ、それ以前に白は加減が苦手なので地形が酷いことになって、もしかしたらクトゥルフが攻めてきたときより被害が出るかもしれないからだ。
「鬼龍が来てくれればどうにかなる」
時雨はどこにいるかもわからない鬼龍を思ってそう言った。
実は鬼龍が時雨達に経験を積ませるためにわざと助けに行かないとは知らずに。
刹那達はもう、数万の異形の者を倒した終わっていた。まあ、実際には冬姫と命が倒したのだが。
そこにあったのは海辺を埋め尽くす氷の塊だった。その氷の塊は、元々は異形の者だ。
最初の方は冬姫と命は別々に倒していたのだが、途中から飽きて冬姫が異形の者達を凍らせて、命が無数の短剣を飛ばして砕いていくという作業に変わったのだ。
「さすがにちょっと寒いわね」
刹那が白い息を吐きながらそう言った。
気温はマイナス二十度。今の季節は春である、間違っても冬ではない。
なぜこんな温度になっているかというと、理由は冬姫にある。冬姫が龍化したため空気の振動が少なくなり温度が低下したのだ。しかも、凍らせた死体も温度を下げる原因になっている。
そのうえ、本人も自覚していないが、水と氷を司る能力が覚醒しつつあるのも要因の一つだ。
「そうですか?」
冬姫は思わず首をかしげてしまった。
まあ、冬姫は龍化しているので温度の差に気づかなかったのだろう。しかも、自分の能力なのでなおのことだろう。
「寒いよ! 冷た!」
命が寒いと主張して冬姫に抱きついたが、冬姫も冷たかったみたいで、すぐに離れた。
「命ちゃんおいで」
刹那に呼ばれ命は転移で刹那のもとに行った。
刹那は命に抱きつき、一つの魔術を発動した。その魔術とは炎の魔術。さらに上以外を結界で囲み暖かい部屋を作った。
「暖かーい」
命は刹那を抱きかいした。それを見た冬姫は少し寂しそうだ。
「暖かいね~」
刹那は冬姫の方を見ながらそう言った。
「どうせ私は寒い女ですよー!」
冬姫は八つ当たりに海を刀で切り裂いた。
切り裂いた海は瞬く間に凍りつき海に渓谷が作り出された。
「姉さんのバカ」
冬姫はそっぽを向いてしまった。
刹那と命が結界から出てきた。どうやらあの短時間でだいぶ暖まったようだ。
「ごめんごめん。機嫌直して次の所に行こう? 次は私も手伝うからさ?」
刹那は冬姫の頭を撫でながらそう言った。
「しょうがないですね、姉さんは」
冬姫は顔を赤くしながらそう言った。
単純だと思われるかも知れないが、冬姫は鬼龍と刹那に憧れているのだ。毎日二人のように強く成ろうと努力をしているのも二人を慕っているからだ。
まあ、普段から素直に成れないこともあるのだろうけど。
「じゃあ命ちゃんお願いね」
刹那命にそう言った。
「うん!」
命は元気のよい返事をした。
命は空間魔法が得意でその中には転移魔法以外にも、探知魔法も含まれている。ちなみに両方の効果範囲は、余裕でこの大陸の外にまでおよぶ。
三人は時雨達の居る海辺に転移した。
突如私の目の前に白銀の少女が現れた。
あれは一体誰? それ以前に人間なの?
朱里は目の前の少女を見て、ある人物を思い出した。
鬼龍君みたい。
「結構残ってるみたいね」
後ろから知らない人の声が聞こえてきた。
なぜか少し肌寒い気がする。
「とりあえず倒しますか」
白銀の少女がそう言った。
だが、少女はある人物に気が付いた。
「時雨さん? 白虎の、白ちゃんですよね」
白銀の少女が時雨ちゃんと白ちゃんを見てそう言った。
白虎? どういうことだろう?
「冬姫ちゃん、白ちゃんのことは内緒だよ」
時雨ちゃんは白銀の少女、冬姫にそう言った。
どうやら二人は知り合いみたい。てか、冬姫って言ったら確か龍神家の二女のはず。ということは鬼龍君の妹かな。
「すみませんそうでしたね。てか、苦戦してるのですか? 時雨さんだったら一瞬で全滅させれると思うのですが」
冬姫はそう時雨と話してた。
「いろいろあって」
時雨はそう言った。
「そうですか。わかりました、ここは私たちに任せてください」
「いやここは私がやるよ」
後ろにいた、紫の髪の人がそういうと、目の色が変わった。表現ではなく本当に目の色が変わったのだ、その色は私の言葉では表現できなかった。
幻想的な目
「そうですね。任せました姉さん」
冬姫がそう言った。
姉さんと言うことは龍神刹那なのかな。
「とりあえず結界を張って、それから落雷」
刹那はそう口ずさみながら、一辺十メートルの正方形の結界を張って、それから異形の者達に雷を落とした。
一瞬で正方形の立方体に囲まれたと思ったら、周りが一瞬で明るくなった。光が収まったと思ったら今度は砂浜が穴だらけになってたり、焦げたり、一部がガラスになっていた。しかも、驚いたことに怪物の姿がなくなっていたのだ。いったい何をしたのだろうか?
「こんなものかしら? まあ、結界内のは冬姫ちゃんが倒したからこれで全滅よね」
刹那がそう言った。気がついたら目も元通りになっていた。
「もう少しでキー君がここに来るよ!」
命が時雨にくっつきながらそう言った。
流れからいくとあの女の子は龍神命かな?
龍神家の名前は大陸中に知れ渡っているので推測は簡単だった。
「命ちゃんそれ本当?」
時雨は命にそう言った。
やっぱり龍神命だったんだ。
「本当だよ」
そう命が言った瞬間だった。こっちの様子をうかがっていたかのようなタイミングで鬼龍が目の前に現れた。
「皆お疲れ様。そしてありがとう」
突如目の前に現れた鬼龍がそう言った。
やっぱり鬼龍君と冬姫さんの姿は似てる。きっとあれが龍化なんだ。
私は自分の中に悔しさが涌き出たのがわかった。理由は簡単だ鬼龍君は私を敵とは見ていなかったからだ。
「鬼龍君これからどうするの?」
私はさっきまでの感情を隠してそう聞いた。
「とりあえずは話があるから家に行こうか皆」
鬼龍はそう言うと、人の姿になった。続いて冬姫も人の姿になった。
あれ? なんか体が軽くなった?
「あ、皆の疲労を回復させといたから。どうやったかは内緒だけど」
朱里はおそらく気がつかなかっただろう、体が軽くなったのは鬼龍の龍神化と冬姫の龍化を解いたのが原因だとは。
今度の投稿も来週の同じ時間にします。
まあ、早く投稿するかも知れませんが。