女神降臨 7
夕暮れと月明かりが俺等を照らす。
目の前には笑顔で涙を流すウルカ。
記憶が薄っすらと蘇ったのがわかった今、ウルカが敵でないのは確定しているが、すべての記憶が戻った訳では無い為にどうすればいいのか困る。
幸にも今ならば会話もできそうだ。
「今後どうしたい?」
俺は率直にウルカにそう問いかけた。
泣いてる女の子に言うセリフではないが、相手は一応精霊神なので大丈夫だろう。
「とりあえずの目的は達したから帰ろうと思う」
そう言い終えたウルカに魔力の矢が飛んできた。
それをどこか異空間へと消し去るウルカ。
「陽月は相当怒ってるみたいね」
そう言いながら嬉しそうなウルカは、先程の矢を手に握っていた。
「彗星の矢を少しだけアレンジして」
ウルカは彗星の矢に魔力を少し込めて変化させた。
そして次に液体ミスリルを弓へと変化させる。
「名付けて三つ子彗星の矢かな」
そのまま矢が飛んできた方角へと打ち返した。
ウルカの矢は途中かや3つに分裂して、平行線で飛んでいった。
「やっぱり陽月の魔法には敵わないな」
三つの彗星は途中で炸裂して大爆発を引き起こした。
その爆風でかなり大きく揺れる海面。
魔力が安定しないで途中で暴発したな。
しかも本来の威力の一割にも満たない威力だ。
記憶を取り戻した今ならわかることもある。
「私の鬼龍に手を出さないで」
背後からの冷たい声の主を見ると、そこに居たのは陽月だった。
陽月は尋常ではない魔力を身体に纏いまるで羽衣のように着飾っており、まるで女神のようだった。
「あらあらこっちも覚醒しちゃったみたい」
ウルカは苦笑いを浮かべながら陽月を見ていた。
そして先に仕掛けたのは陽月だった。
陽月は魔力で生成した薙刀でウルカに斬りかかる。
それをウルカはミスリルの爪でガードする。
ウルカの筋力は並外れているが、陽月は自身を身体強化して筋力差を埋めている。
そして一旦お互いに後ろへと距離をとる。
そしてまた攻防へと発展する。
その戦闘を目の前で冷静に見ているが、どうすればいいのが正解なのか。
お互いに殺意のない攻防をしているので戯れているだけだとは思うが。
そう思っているうちに戦況は変わっていった。
空に巨大な魔法陣が浮き出てきた。
それと同時に海からの膨大な魔力も感じる。
二人の大技がぶつかるのを予感させるには十分であった。
「この対精霊神用封印魔法で終わらせる!」
「私もこの全海水の圧力を集めた水弾で撃ち抜いてやる!」
俺は間髪入れずに二人の鑑賞する魔力を支配して術を解いた。
「いい加減にして帰るぞ二人共」
俺はそう言いながら冬姫を回収して帰って行った。
今回も読んでいただきありがとうございます!