異界の神
長らく期間が空きました。
これからも読んでいただけたら幸いです。
アリの女王を一太刀で斬り伏せた後に周囲を探索している。
結界内は完全に氷漬けにされており生物の生きていける環境ですらなくなっていた。
切り裂かれた結界と禁呪を解除する。
ただし、解除したからといってもとに戻るわけもなく、氷のモニュメントと海まで続く渓谷は残っている。
「まったく」
自分のやったことに後悔は無いが、別の方法もあったと思わないわけでもない。
これではしばらくこの地は使えないままだろう。
とりあえず切り替えて、今回の主犯の元へ向かうとしよう。
俺は『終始』を炎の刀に変えて、氷を蒸発させながらアリの巣へ潜っていく。
『終始』の光で明るいと思っていたが、溶かされた氷の蒸気で視界が最悪だ。
だけど直感で下に潜っていく。
その先に今までの害虫とは違う気配を肌で感じ取りながら進
む。
進んだその先にには大きな空間が広がっていた。
酷い臭いだ。
大きな空間には巨大な卵や、色々な生物の死体が転がっている。
人や獣、魔物、更には龍などの死体もある。
ここは女王の居場所だったのか?
パット見た感じだが禁呪での影響を受けていないみたいだ。
更に進むと紫色の空間に出る。
足を踏み入れなくてもわかる。
この先は別の空間。
敵の領域だと。
「なにものだ?」
突如空間の奥から声が聞こえた。
余りにも普通な声。
この場には不釣り合いな声が、逆に不気味さをます。
「龍王」
俺はそれだけ答える。
すると奥から人影が現れる。
形は人だが人ではない。
俺が抱いた印象はそうだった。
「龍王? 確かこの地に君臨している王の一柱」
そう言いながら彼女は姿を見せる。
妖艶な姿をしているが、人ではない。
所々鱗や甲殻に見を包み、額には鬼族のような角、背中にはドラゴンのような大きな翼、肌の色は薄紫、だがベースは人のような形。
奇妙なキメラだな。
「兵士達では太刀打ちできないわけか」
彼女は敵意を感じ取れない。
しかし兵士という単語が気になる。
今までの状況から見て兵士というのはアリの事だろう。
彼女が歩み寄ってくる。
「龍王よ、話をしないか?」
彼女がその妖艶な姿で近づいてくる。
キラキラと幻想的な雰囲気で話しかけてくる。
思わず見惚れてしまいそうだ。
そこから敵意は感じ取れない、まるで友人に接するような声音。
だが嫌な予感がする。
なにか小さな違和感がある。
確かここはアリの巣の最奥。
ここに来るまでに色々な種族の死体を見かけてきた。
その最奥に居るものが普通なはずはない。
彼女の見た目も普通ではない。
そもそもキラキラと輝いているのはなんだ?
俺は目を凝らしよく見る。
翼からキラキラとしているものが出ているように思える。
直感だが、あれに触れるのは不味い。
俺は『終始』を風に変えて自分に纏わせる。
鱗粉が俺の周りから飛ばされるように流れていった。
「気がついた?」
鱗粉を飛ばされた彼女はそう呟いた。
やはり何らかの罠だったようだ。
敵意が殺意が無いから油断していた。
そもそも状況から考えてこいつが元凶なのに、俺は何故先手を取らなかったんだ?
もしかして認識をそらされていた?
警戒しなければ。
俺は錬金術で鋼の刀を作る。
「先手取られていたが、もう油断はしない」
そうもう油断はしない。
自分に言い聞かせるように口にする。
そして構える。
だが、一歩踏み込めば敵の領域、迂闊には入りたくはない。
そもそも奴が本当の元凶ならば、神格を持っているはず、ならば神域に踏み込むのは不味い。
いや、ごちゃごちゃ考えてもしょうがない。
考える事は一つ、殺すことだけだ。
「殺す」
俺はその言葉と同時に敵の神域へと一歩足を踏み入れ、一瞬で敵の喉元へと刃を滑らせる。
そしてそのまま首を切り落とす。
キーン
金属の音が空間に広がる。
まるで金属同士が打つかったかのような音だった。
そして俺の折れた刀身が宙に舞う。
クソ折れやがった。
俺は反射的彼女の脇腹に蹴りを入れ、彼女を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた彼女は数百メートル後方の壁に吹き飛んでいった。
「柔らかそうな首を狙ったのに俺の刀が折れるとは」
思わずそう言ってしまった。
首を狙った理由は甲殻や鱗がなく一番柔らかそうな部位であることだったのだがな。
見た目通りの硬度じゃないということか。
では次は更に強度を高めて付与までするか。
次は錬金術でミスリルの剣を作り出す。
更にその剣に魔法を付与する。
属性は風と火を付与する。
魔剣完成。
そうしている間に彼女が歩いてくるのが見える。
見た感じ先程の蹴りでのダメージはほとんど内容に見える。
「野蛮人め」
彼女が悪態をつく。
その瞬間俺は彼女の元へと移動する。
数百メートルを一瞬でだ、ただしこれは転移ではない、肉体能力任せの移動だ。
そしてもう一度首を狙う。
しかし彼女の目は俺を完全に捉えていた。
そして大きな翼で俺の感激を防ぐ。
俺の魔剣が当たった大きな翼は風で切れ味をまして、火で爆発力を得た魔剣により切られる。
次に腕、腹、足、喉へと連撃を切り結ぶ。
爆炎と防風の剣撃。
突如後ろに何者かの気配を感じ取る。
振り返ろうとする刹那、大爆が起こった。
大地は揺れ、今まで彼女の力で守られていた洞窟は崩落した。
今回も読んでいただきありがとうございました!
引き続きマイペースでの投稿となります。