龍の反撃
屋敷に着いた俺は早速、他の龍家を集めようとしていたが、着いた矢先に既に皆二階の会合場に集まっていると寧々に言われてしまった。
何でも既に事の重大さに気が付いた龍鬼と焔龍勝が各龍家に連絡を取り、この場に集合させていたらしい。
各当主達、十二人とその補佐を勤める者のみがこの場に集ったらしい。
ここに居ないものは既に各守護を命じられている場所で蟻どもの撃退を始めているらしい。
俺は二階に上がり会合場の襖の前に立つ。
そして襖を開け中に入る。
襖を開け上座に敷いてある座布団に座る。
「誰だ」
「子供」
「なんでガキがここに居る」
「あれが龍王か」
俺が席に着いた途端にこの場が少しざわめき始めた。
そう言えば焔龍以外とはほぼ初対面だっけ?
まあ今はそんな事どうでもいいか。
とりあえず静かにさせるかな。
「全員黙れ!!!」
俺が言葉を発する前に焔龍勝がざわめいていた者達にそういい放った。
「龍王、龍神鬼龍様の御前だぞ!」
焔龍の言葉に少し不満そうな顔をしたものに、焔龍は更には言葉を重ねた。
確かに俺が龍王だけど、ほぼ初対面だし、子供みたいな見た目だけど、それでも龍王かどうかを疑われたのは初めてだな。
あ! もしかして今は完全に権能が使えないからか。
しょうがない出来ないのを覚悟で龍神化してみるか。
俺はそう思い、眼だけを龍神化させてみる。
「なんだ!?」
「何事だ!」
意外な事に龍神化をすることが出来た。
俺が龍神化をしたせいか、二人は驚き声をあげ、残りは固まってこちらを見ている。
まあこれで話ができるから結果オーライだけど、なんで今は龍神化が出来たんだろう。
「俺を龍王と思わないのならばそれでもいいが、それならばお前らの王は誰になるか教えてくれないか?」
ちょっと偉そうに俺は龍家の当主達に訊く。
「貴方様以外には居りません」
焔龍が代表で俺にそう言い、後の者達は皆頭を垂れている。
一応、力を見せて龍王と思わせたが、これで大丈夫だよな。
「わかればいい」
とりあえず今後のやることを皆に示すか。
「では龍王として命じる。大陸全土に住む龍どもよ、この大陸を侵略する害虫どもを滅ぼせ!!!」
俺はそう、全龍達にそう言った。
俺の命令はここに居る龍家だけではなく、全ての龍と呼ばれている者全てに命じたものだった。
「そして続けて命じる。龍家に連なる者達よ、国民を死守しろ!」
最後の命令は、俺の人として生きた部分の願いだった。
眼だけを龍神化させた今ならわかる。
この大陸に住まう人々の数が十分の一以下に成ったことが。
それは人だけではなくエルフやドワーフ、獣人に至る者までもが異常に数が減っている。
ただ、運が良かったのか朱里と雫の家族は皆無事みたいで、幻龍家に保護されているみたいだ。
それ以外の学園の生徒達は職員達が守っているお陰で皆無事だ。
あの学園の先生達は優秀だからあんまり心配はしていなかったが、よくよく考えれば禁呪の魔女、桜井紗那が居るから問題なしか。
それにあそこには幻龍姉妹が居るから心配無用か。
「お前らも早く自分の領地に行けよ」
俺はそういい残し、会合場から立ち去った。
俺は真っ先にアリどもの頭を潰す事を考えていた。
頭とはすなわち女王蟻の事だ。
ただ、それには一つ問題があった。
今回の事態は大陸全土に安全な場所が無い程に危ない状態だ。
ここも安全とは言い切れない。
ここは四神が東西南北を守護しているが、もしもの事がある。
地面から侵入されるとは考えにくいが可能性はゼロではない。
ならば龍那と凛那に護衛をつけるか。
陽月には寧々も居るし、ここに精霊王達を置いておこう。
「シルフィー、ディーネ、ミード、霞」
俺は精霊王三柱と神獣を呼び出した。
「お前らは陽月、寧々、時雨、龍那、凛那を守護しろ」
俺は精霊達にそう命令を出してた。
そして次に記憶を探り、龍那と凛那の護衛に最適な奴を選ぶ。
条件は龍族であること、歳が近いこと、そして強い事だ。
ただ、そんな龍族はあんまりいない。
ん?
待てよそう言えば居たな最強の龍族の中でも最強と言われている龍の子供が。
それも二柱。
俺は早速庭に出ていく。
そして怪物を呼び出す。
『龍王が命じる。古の終焉の黒龍と終末の白龍よ俺の元に現れろ』
俺が天に向かってそう言うと、空はどす黒い雲に覆われていく。
風が吹き乱れ、雷が空を時々照らす。
そして雲の上から姿を表したのは巨大な二柱の龍神の顔のみだった。
おそらくは地上に降りたら大陸が崩壊するとの配慮だろう。
恐ろしい程の圧を放ち、意図しないで天変地異を引き起こす二柱の龍神。
これが最上位龍神。
今この瞬間が人類にとって歴史的な瞬間になったのは間違いなかった。
『貴様ら事情はもう解ってるよな?』
そんな恐ろしい怪物どもに俺はそう訊いた。
二柱の龍神から二つの白と黒の光が落ちてきた。
『我らからもお願いしたいぐらいだ』
『龍王の娘達に我らの子が仕えれるのだから』
白と黒の龍神はそう言う。
喋る度に地面が揺れたり、雷が落ちたりするが、これが最上位龍神なんだからしょうがないか。
『しばらくしたらそいつらの様子を見に来る』
『そのときは少し話でもしよう』
そう言い二柱の化物は空へと消えていった。
龍神達が居なくなったことで天候は元に戻った。
視界をしたに向けると、そこには龍那と凛那より少し大人な少女が二人立っていた。
白と黒の髪を見ると本当に龍那と凛那が大人になったかのように思えるほどだ。
まあ目色等もろもろは違うのだけど。
「とりあえず二人は… ん?」
二人をよく見ると、龍では無かった。
龍神化した目で視たから間違いない。
この世界の人類では無いが間違いなく人だ。
あの二体やりやがったな。
俺が最上位龍神のポンコツ二人をそんな風に思っていると、目の前の少女達がこちらを見ているのに気が付いた。
「あの… 私たちはこれから龍王様に食べられるのでしょうか?」
突如白髪の少女が俺にとんでもない事を言ってきた。
もう訳わかんねぇ。
「そんな事しないよ。なんでそう思ったの?」
俺は普通にそうきいてみた。
流石にワケわかんない。
「実は私達は人と龍の間に産まれまして、まだ龍の力が使えないので」
「役立たずは龍王様に喰われるよと言われていたもので」
二人の少女は俺に泣きそうになりながらそう言ってきた。
あいつら俺の事をなんだと思っているんだ。
確かに昔は色々あったが。
今度あったら文句でも言ってやるか。
「そんな事しないよ」
二人はあいつらの子供で間違いじゃないが、龍の力が無いから人と思ってしまったのか。
龍の力がなければ龍ではないとどこかで思ってしまっていたか。
改めないと。
それにしてもあいつらが人との間に子供が居たとはな。
確か人嫌いだったはずだけど。
まあ、なんかあったんだろう。
「とりあえず二人は俺の娘の護衛を任せるから。後の事はこの屋敷の中にいる銀髪で赤い目人に訊いてね」
俺はそれだけいうと屋敷を飛び出した。
正直めんどくさくなったのだ。
見た限り龍の権能はまったくない感じだが、強さは上位の龍と同等以上だった。
もしも龍の力が覚醒すれば化けるだろうな。
俺はそんな事を考えながら目的地へと向かった。
龍族を舐めるなよ蟻どもめ。
今回も読んでいただきありがとうございました。