改変
大陸を沈め、この星すら壊れかけるほどの闘いが繰り広げていた。
ただし、これほどの被害を出しておきながら両者は全力を出してはいなかった。
天変地異すら気にも止めないほどの戦い。
これが神々の戦い。
龍と鬼の遊びだ。
もしもここが鬼龍の作り出した異世界ではなかったのならば、人はおろか微生物すらも生きては居ないだろう。
「もうここも終わりだな」
壊れかけの星を見ながら鬼王がそう呟く。
「だから手加減しろと言っただろ。もう直さないからこれで終わりだ」
鬼王の独り言に龍王が返す。
ここでの闘いは激しかった、しかしこの星はまだ生きていた、それは龍王が何度も何度も、元に戻し、強化していたからである。
それでもこの星は二人の戦いにはついていけなかった。
「まあ結構な時間楽しんだしな、これくらいにするか」
鬼王が龍王の返しにそう言う。
鬼王は若干悲しそうな、名残惜しいような表情を浮かべる。
『時空改変』
鬼王の言葉が終わった直後、龍王の能力が発動した。
それは龍王の思いのままに世界を変える能力。
過去、未来、現在の全て、ありとあらゆる事を変える能力。
龍王は悩んでいた。
出来れば知り合い同士が殺し合いをしないでほしい。
しかし今のままでは駄目だと。
全てを見ることのできるの龍王は、なぜ彼女が鬼王を殺し得るのか、なぜ殺そうと思ったのかを知っている。
その隠された殺意にすら、全てを見て知った。
知ってしまったからこそ、彼女に同情をした。
鬼王が原因だったとはいえ、龍族にも責任があることもわかってしまった。
ならば全てを変えればいい。
龍王はその結論に至った。
そして龍王にはその力がある。
龍王が身内、特に龍神の巫女以外にこういう決断をすることはなかった。
しかし今回も、結論には巫女のためと言う部分がある。
一人の巫女のために世界を変える。
龍王は過去に一度同じ事をしたことがあった。
今回も同じ、龍神の巫女に危害が及ばないようにするのだった。
変える歴史は、少女の、朱里の祖父母が死ななかった事にすることだけ。
そうすればその少女は復讐なんて考えないですむ。
まあ元は彼女の祖父母がこの国の敵に回らなければよかった事なのだけれど。
全知全能の龍王は能力を発動した。
今回も読んでいただきありがとうございました。