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鬼神と龍神

龍鬼が仕掛けてきた攻撃を未来視ですべてを先読みして、事前に罠まで仕掛けた。


ただ、仕掛けた罠には広範囲を爆破する魔法も仕掛けているので、この場に居る雫と白、霞とミードを巻き込むかもしれない。


まあそれならば安全な場所に転移させるだけだけど。


白、雫、霞、ミードを学園の朱里が寝かされている場所へと転移させる。


彼女等に否定権は無いので強制的に転移させてもらう。


龍鬼の強さは焔龍勝や黄龍の黄守と同等以上の強さで、白虎である白や土の精霊王のノーミードがどんなに頑張っても今のままでは一方的に殺されるのが落ちだ。


皆を転移させた途端に俺は龍鬼に殺気を放つ。


俺が放った殺気に反応して龍鬼は後ろに下がる。


「糞が!!」


後ろへ回避した龍鬼がそう声を出した。

おそらくは俺が仕掛けた罠に気が付いたのだけど、もう遅い。


俺が罠を仕掛けた場所は、龍鬼がギリギリで気が付いて、だけど避ける事の出来ない位置に設置した。


罠を仕掛けた場所に龍鬼が踏み入れた途端に、龍鬼の動きが止まる。


「この程度の拘束にオレがいつまでも封じられてると思うなよ」


龍鬼の言葉を待って、次の効果が発動する。


武器破壊。

この魔法の名前が意味する通り、龍鬼の手に持っていた武器にヒビが入り砕け散る。


砕け散った長刀と戦斧が光の粒子に成って消えていく。


そして間を置かずに次の魔法が発動する。


太陽の如き光は俺らの居る島を飲み込んでいた。

事前に効果範囲を限定しなければ、大陸すら飲み込み、全てを原子の粒子に還していたことだろう。


ただし、これですら龍鬼を倒しきる事は不可能だ。


不死身の肉体を持つ龍鬼を殺すのは難しい。


だからこその次の手。


禁呪の行使こそ、この攻撃の本命。


龍鬼の姿がこの世界から消えた。









龍鬼が消えたあと鬼龍は何も無い空中に立っていた。

この場にはもともと島が存在していたが、鬼龍の魔法で島が消えてしまっていた。


水も土もすべてが蒸発し、海面からは水蒸気が立ち込め、渦を巻き、沸騰している。

空は曇り、夕日すら見えなくなっている。


「これで龍鬼も俺の本気度がわかったかな」


鬼龍は誰も居ない空中でそう独り言を言う。

その言葉には「わかってくれ」という願いすら込められているようだった。








気が付けば龍鬼は知らない土地にいた。

見渡せば草原が広がり、野性動物も数多く生息している。


龍鬼が見たことの無い生物も多くいた。


自然豊かな世界で龍鬼は場違い感を覚えた。


なぜ自分がここに居るのか。

そう思った。


そして一瞬で答えが出た。


こんなことをするのは考えれる限り鬼龍しか居ない。

あの最強の龍王ならば何でもできる。


そう龍鬼は答えに行き着いた。


だけど龍鬼は致命的なミスを犯した。

このようなのどかな場所だからこそ龍鬼は警戒をするべきだった。


空を飛ぶ鳥が動きを停めて空中に停まっている。


その光景を龍鬼が見たときには全てが手遅れ。


周りの草木や動物、龍鬼以外の物全てが動きを停めていた。


ただ、雪が降り狂い、暴風が荒れ狂う世界でただ一人、龍鬼だけがまだ、動けていた。


今の龍鬼は鬼族の頂点に位置する怪物。


普通の生物が死に絶える世界でも平然としているだろう。



だけど今回は別だ。

これは世界の終わり。

龍王がもたらした終焉の一つ。


この忘れられた世界でも人々は家庭を築き生きていた。

それを簡単に終わらせる事が出来るのは龍王だからだろう。


そんな龍王の攻撃は、流石の龍鬼でも終わりが見えてしまった。


体が固まり始めた。


元々鬼龍の攻撃で片腕を切り落とされ、至る箇所を消し飛ばされてのこれだ。


ここまで龍王の攻撃を受けて、今生きているだけでも龍鬼を称賛するべきだろう。



寒い、痛い、眠い。



死に行く世界のなかで龍鬼はそう思っていた。


破壊する者。


次に龍鬼が心で思った事はこれだった。


破壊する者。

それは龍鬼自身が自分に思っていること。


そう、鬼王は大陸を破壊の力で守っていたからこそそう思ったのであろう。


大陸を攻めて来るものを破壊する。

民の平和を脅かすものを破壊する。


だからこその守護神。


守護神にして破壊神。


それこそが鬼王、鬼神龍鬼だった。


破壊しか出来ないのならば、この世界自体を破壊して、元の場所に戻ろう。

そして鬼龍に一言だけ言おう。



そう龍鬼は思った。


もう声も出ないが、これだけはわかった。


オレは壊す者でもあり守る者でもある。

だけどその破壊の才能を見つけてくれたのは鬼龍だった。


何故か龍鬼の頭の中で鬼龍との思い出が蘇るのは。


共に戦った戦の日々。


最初に産まれたのは龍鬼だが、異世界の時間の流れで気が付けば鬼龍の方が年を重ねていた。


死んで行く世界のなかで龍鬼はまた一つ思い出した。


「相談ぐらいあってもよかっただろ」


鬼龍のその言葉が龍鬼の頭の中でループする。


オレは鬼龍に使えるはずだったのに、自分勝手に行動してしまっていた。


最近溜め込みすぎていたかな。

さっさと戻って鬼龍に謝ろう。


龍鬼は最後にそう思い、力を解放した。


龍鬼は以外と単純な一面を持つ。

自分の悪いところを考えさせる時間さえ作れば勝手に答えを導き出せるのだ。


ただ、そのためには少々荒っぽい方法が必要ではあるが。



力を解放した龍鬼により、禁呪『氷の牢獄』ごと世界を壊した。


世界が壊れれば、鬼神である龍鬼は元の世界に戻れる。


そこら辺は本能でどうにでもなるのが龍鬼だった。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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