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鬼龍対龍鬼

話し合いで確かに龍鬼は俺にこう言った。


「そもそもだ、彼女はすでに国民を殺している。その事実は変わらんぞ」


龍鬼は間違っていないと俺も思う。

すでに複数の死者が出ている以上、対処するのは当然だ。


朱里を元に戻したところで罪悪感が生まれるだけだ。

朱里を元戻すことや、死んだ人間を蘇らせることも可能。


しかし現代ではそれを奇跡と呼ぶ者もいる一方で、異常だと驚き恐れる者もいる。

少なくともこの世界でも死者が蘇るのは普通ではないのだから。


「それを言うのならば、朱里も国民のはずだろ。彼女も被害者と言える状況ではないのか? そもそも朱里を、いや国民を守りきれなかった時点で俺達の失態だろう。それを一方的に朱里だけを断罪するのはどうなんだ」


朱里は、この学園での初めての友人だ。

正直に言えば俺は朱里を助けたい。


出会いはあまり良くはなかったかもしれないけど、それでもシルフィーと出会えるきっかけになったりと色々とありがたい場面もあったのは間違いない。


それを考えれば、俺個人では朱里を助けたいと思った。


「お前がなんと言おうとオレは彼女を断罪する」


椅子から立ち上がろうとテーブルに手を置く龍鬼。

ただ、それを静止させるように声がかかった。


「鬼王様はもしかして朱里を恐れているのではないのですか?」


そう声をかけたのは雫だった。

普段ならばすぐに何かの反応をする龍鬼だが、雫のその言葉に睨み返すことしか出来ないみたいだ。


龍鬼は嘘をあまりつかない。

ただ、建前と本音を使い分けることが多い。


間違いならばすぐにでも言い返す龍鬼が黙ったと言うことは本当なのだろう。

しかしそれならば余計にわからなくなった。

こう言ったらアレだが、龍鬼にとって朱里は相手になら無いくらい弱い。


だとしたらなぜ龍鬼は朱里を恐れているのか。

その答えを雫は知っている。

そう俺は確信した。


そう言えば転入当初、朱里が気になることを言っていたな。


『今の私がどこまで神に通用するか気になったからだよ』


まるで神と戦いたい、神と何かあったかのような言い方をしていたのを思い出した。


「朱里は鬼王様を殺す方法を知っている」


雫はこう続ける。


「大事な人を殺されて、殺した相手を死ぬほど憎んで恨んで、そして朱里が見つけた方法。だけどその方法はこの大陸に居る全ての者を殺し尽くす。だから鬼王様は朱里を殺したいんじゃないですか」


雫は龍鬼の目を真っ直ぐと見つめ言い放った。


そして言われた龍鬼は表情一つ変えてはいない。

だけどその瞳には確かに殺気がこもっている。


龍鬼のその反応を見るだけで雫の言ったことが事実だとわかる。


「……そうだ。動機は知らなかったがオレが殺そうとした理由はお前が言った通りだ」


龍鬼が雫の言ったことを認めた。

そして殺気が微かに増している。


「オレ個人が狙われるのは別に構わない。ただ、他の国民を巻き込むのは駄目だ。大量殺戮を考えるテロと同じだ、未遂だろうとやる可能性があるのならば、今のうちに殺すべきだ」


龍鬼はそういい鬼神化した。

それと同時に巨大な戦斧を権能で作り出し、俺を攻撃してくる。


横薙の攻撃はおそらく俺と雫の位置を計算してわざとしているのだと思う。

俺が攻撃を回避しないのを見越して。


だけど俺が思い通りに動くと思われるのは嫌だな。


こんな見え見えな誘導に引っかかる訳が無いのに。


俺は所持していた『終始』を最硬の刀に変化させ、したから戦斧を打ち上げ空に舞っていった。


カーンとぶつかり合う音が鳴り響く。

そして簡単に大理石のテーブルは砕けた。

だけど威力の割には音は静かで微かに不気味だ。


森羅万象を象徴する『終始』は龍鬼の権能で作り出した武器を凌ぐ程の強度を持つ金属に性質を変えることも出来る。


「安易に見え見えな罠を避けない方がいいぞ鬼龍。それが罠かもしれないからな」


龍鬼にそう言われて気が付いた。

腹の右側に長刀が刺さっていることに。


油断した。

よく考えれば龍鬼があんな単純な攻撃をしてくるはずがないのに。


しかもこの長刀、俺の動きを封じる能力が付与されているのかうまく動けない。


「やっぱり大分鈍ってるな鬼龍」


龍鬼はそういい、また戦斧を作り出し、俺に斬りかかってくる。

それを龍鬼の背後に転移して回避する。


次に龍鬼の行動を未来視で先読みする。

俺の未来視は確定した未来を見ることが出来る一方で、未来を変えることも出来る。

矛盾した能力だが、両立させることが出来るのは俺が龍王だからだ。


「あまいな」


龍鬼が振り向きながら長刀で俺を斬ろうとする。

だけどそれはもう見た攻撃だ。


未来視ですべてを見た俺には普通の攻撃は通用しない。


龍鬼が切りかかる前に、長刀を持った左腕を『終始』で肩から切り落とす。


「お前俺を誰だと思ってる。全生物の頂点に君臨する龍王だぞ!」


そう言いながら時限式の魔法を龍鬼の後方に四連式で仕掛ける。


魔法の効果は爆発、武器破壊、麻痺と強制異界転移。


そして更に転移先にも禁呪をセットする。


禁呪『氷の牢獄』


この禁呪は世界そのものを永遠に氷浸けにして全てを停め、封印する禁呪だ。

それを行使すれば世界は終わるし術者も終わる。

だからこその禁呪だ。


転移先の異界も昔に俺が試しに創った、生物の存在しない世界だから禁呪を行使しても問題ない。


気が付けば今は龍化をしてないにも関わらず、人外の力を持ってるな。

今回も読んでいただきありがとうございました。

次回からは不定期にやらせていただきます。

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