表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/138

龍王対火の精霊竜とその主 

 朱里との戦い。 

 今回の模擬戦は桜井紗那が審判をする。


 今回、禁呪の魔女に審判をしてもらうのはいくつか理由がある。

 一つは、今回の模擬戦でどちらかが死ぬ危険性があるからだ。

 もちろん俺は死ぬ気も殺す気もないのだが、朱里が念のためと言っていた。

 

 そしてもう一つは、この時間に空いていて、この場を用意したのが紗那だからだ。 


 「一つだけ訊いていい?」


 闘技場で朱里が俺にそう言ってくる。

 今更何だろうか。


 俺はそう思った。

 改まって俺に訊くことでもあるのだろうか。


 「なんだ?」


 俺は少しぶっきらぼうに答えた。

 ただ、口調がそうなっただけで、そんなつもりはなかった。


 「昔、私と似た人を見たことある?」


 朱里が変なことを俺に訊いてきた。

 

 しばし、記憶を遡る。


 正直、記憶にない。

 恥ずかしい話、昔は人族など眼中になく、一部の巫女の人たちとしか交流がなかった。

 昔の俺は、人族をただの低俗で強欲な雑魚としか思っていなかった。

 己の実力を測れない愚か者だと思っていたので、記憶に残ってはいないのかもしれない。


 ただ、これはあまり誰にも言いたくはないので、秘密にしていた。

 

 しかし、それでも朱里に似た人は記憶にない。

 あったとしていたらあまり関りがなかったのかもしれない。


 『全知』を使えばわかるが、そこまですることではないだろう。


 「悪いがないな」


 俺はそう、朱里に言った。

 そうすると、朱里は無言で戻っていった。


 朱里が若干怒っているように俺は思えた。


 なんで怒ったかのは詮索はしないでおく。

 そこで、朱里の心を読むのは人としていけない気がした。


 

 なぜ怒ったのはわからない、しかし、俺のせいなのは間違いないだろう。

 ただ、だからと言って、この模擬戦で手を抜くつもりはない。


 「始め!!」


 俺がそんな考えをしていると、始まりの合図が紗那から発せられた。

 

 俺は異空間から、「龍皇刀 神霊龍 終始」を取り出す。

 「終始」はまだ、形が定まっていないのか、光の刀だ。


 「焼き尽くせ、猛火」


 朱里がそう言うと、どこからか竜の気配が近づいて来る。

 そして現れる。


 空から巨大な体で、闘技場にその姿を現す。


 『任せろ』


 赤黒い、体から溶岩を垂れ流し、燃えるような瞳で俺を睨むのはファイアードレイクと呼ばれるドラゴン。

 サラマンダーが大人になった姿であり、中位龍に匹敵する強さを持つドラゴン。

 個体では上位龍に匹敵する個体にまで成長するが、そこまで達するのは少ない。


 ファイアードレイクは精霊竜に分類されているのは、元は精霊のサラマンダーの成長形態だからである。そしてサラマンダーが最上位精霊なのもこのためだと言われている。


 「私ね、サラマンダーに猛火って名前を付けたんだけど、そしたら強くなったんだよね」


 先ほどと同じで少し怒気を含んだままだけど、少し嬉しそうに朱里がそう言った。


 確かに強いと思うよ、思うけど。

 朱里は俺を龍王だと知ってるんだよな。

 喧嘩を売ってるのか?


 龍王である俺に竜で挑むとか、調子に乗るなよ。


 「馬鹿にするな」


 俺は『終始』を抜き出す。

 「終始」は森羅万象を司る刀。

 

 俺が「終始」を抜き出したことで「終始」を模っていた光が定まっていく。


 それは炎の刀だった。

 刀身だけとかではなく、全てが炎。

 憤怒を象徴したかのような、激しい業火。

 すべてを焼き払うのではなく、焼き去る炎。


 「悪いが手加減するつもりは無い」


 俺は「終始」を縦に振るう。

 相手は俺にブレスをして来ようとしている、猛火にだ。

 

 「え?」

 

 朱里が理解できないみたいな顔をしている。

 猛火の身体が縦に真っ二つになる。

 切られた跡には業火が燃え盛っている。


 「なんで? どうして!?」


 朱里は俺を半狂乱の状態で睨みつける。

 そこで気が付く、俺がやったことの大人げなさを。

 

 今のはただ、怒りに任せた八つ当たりだ。

 さすがにこれは俺が悪い。


 俺はもともと持っていた「永久」の能力を使い、「全能」「再生」を行使する。

 

 すると、ファイアードレイクの身体は見る見るうちに、元に戻っていく。


 「よかった」


 朱里は少し安どした後にこちらを見る。

 その瞳は少し涙で潤んでいる。

 

 当然、怒気は先ほどよりも増している。


 「鬼龍君、私は少し怒ってるんだよね」


 朱里がそう言った瞬間だった、猛火が俺にブレスを吐く。


 猛火のブレスは高熱のブレス。青白い炎が凄い威力で俺に向かってくる。

 ただ、そう考えられるくらいには俺の思考の速度と、動体視力は優れている。


 回避してもいいが、する必要性が感じられないんだよな。


 とりあえずそのまま食らってみるか。


 

 炎のブレスが俺に直撃する。

 あたりが真っ白になり、音がうるさい。

 少し熱いが、やけどするほどではない。


 俺の身体も今は弱体化していて、しかも人の身なので多少ダメージを負うと思っていたんだけど、どうやら火傷すらしないみたいだ。


 いや違う。これはおそらく俺の再生能力もあって火傷していないだけなのか?  わからん。


 そういえば俺は無事だけど、俺の後ろは大丈夫なのかな?

 ただの壁では、龍のブレスは止めれないはずだけど。


 ブレスが止み、周りがはっきり見れる。


 後ろを見た居た俺の前には壁が健在であることがすぐにわかった。

 普通の壁じゃないのかな。


 いや、魔法の痕跡がある。

 これは... 紗那か。


 禁呪の魔女である、紗那が魔法で防御していたのか。

 恐らく、俺らが来る前に仕込んでいたのかも知れない。


 禁呪の魔女である、紗那は相当高位な魔法を使うこともできるはず。

 それに、禁呪でも使って魔法をブーストしているのだろう。


 「なんで無傷なの!?」


 朱里が後ろから俺にそう叫ぶ。

 俺は振り向き、ファイアードレイクと朱里を視界に入れる。


 そう言えば今着ている制服も焼けてすらないな。


 「いや、なんでかなんてわかりきってたね。その膨大な魔力量ですべてを防いだんだね」


 朱里が俺にそう言ってくる。

 俺の魔力は無限だ。


 魔力は、マナや魔素とも呼ばれているが、結局のところはすべて同じであり、俺はそれが無尽蔵な訳だ。

 魔力は一般的にも扱える人が多くいる。

 まあこの大陸だけだけど。


 「だけど何より凄いのは、纏っている魔力の密度だね」


 朱里は冷静に俺を分析しているが、俺ってそんなに魔力を纏っていたのか。

 自覚なんてなかったよ。


 てかそんな分析を俺の前で、しかも口に出してするなんて、やっぱり舐められているのかな。


 たまには、はっきりと実力の差を教えてみるのもいいかな。

 これで、俺のことを恐がって避けられたとしたら、それまでだったってことかな。


 これは一種の賭けだ。

 ここから先、俺を恐れずにまた挑んでくるのならば、伸びしろはある。

 逃げるのならばそこまでだ。


 「永久」と「終始」を納刀する。


 俺はファイアードレイクの顔面を鷲掴みにする。

 つかんだ瞬間、猛火の頭からミシミシと音がしたが一応竜なのでそのうち治ると思うので気にしない。

 

 そしてそのまま全力で、巨大なファイアードレイクを朱里に投げつける。

 

 あんな巨大な質量を投げつけられたら、普通は死ぬ。

 だが朱里には、前に不死の加護を与えてる。

 そのため死ぬことはないだろう。


 

 猛烈な速度で飛んできた猛火を避けるすべを朱里は持っていなかったのか、そのまま衝突していた。

 いや、おそらく朱里には猛火が衝突したことすら理解していないだろう。


 ただ、その速度でぶつけられても加護のおかげで体は無事だった。


 ファイアードレイクは炎になり姿を消し、朱里は気絶していた。



 「少しは手加減してもいいものを」


 遠くで俺らの様子を見ていた紗那が俺の元へきてそう言った。

 紗那は少し呆れているようにも見えた。


 実際何で朱里が怒っていたのかは知らんが、朱里の性格からしても怒っているからってね加減したら更に怒っていたと思う。

 まあ、この後目を覚ましたら話を聞こう。

今回も読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ