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幻龍姉妹 3

 倒れる二人。

 

 「それまで!」


 そう決着の言葉を口にする紗那。

 そして倒れこんだ幻龍姉妹の治療のために駆け寄る。


 治療と言ってもこの学園の闘技場は特殊な神術で守られているので致命傷の攻撃はすべて精神ダメージに変換される。

 その原理は国家秘密で守られていて、唯一公開されているのは最初の竜王と鬼王により作成された宝玉による効果だということだけだ。


 「二人とも異常なし。多少怪我があるが問題はあるまい」


 二人の様子を見ていた紗那が俺に向かってそう言った。

 そして少し表情を鋭くして俺の持っている「永久」を見る。


 「なんだその刀、神器クラスの化け物ではないか。ん? いやそれ以上の。一柱の神か?」


 紗那はこの刀の正体の一端に気が付いた。

 そう、この刀は俺の、龍王龍神鬼龍の権能である「全知全能」を象徴する武器であり、俺の「全知全能」を封印している鍵でもある。

 俺の全知全能を象徴するため、神格でもある。


 だが、ただの神格ではない龍神という一柱の神性を持っている刀だ。


 「正解、名は永久って言うんだ」


 俺は「永久」を気絶している幻龍姉妹に向ける。

 そして「永久」能力を行使する。


 炎が幻龍姉妹を包み込む。


 「鬼龍さん!」


 俺の行動に驚いた雫がこっちを見てくる。

 本当に雫は驚きっぱなしだな。


 しかし、雫の心配は杞憂だ。


 この炎は再生の炎。

 永久が持つ能力、というよりは特性に近く、陽月と同等の陰陽の能力が使える。


 生と火の象徴である太陽、死と氷の象徴である月。

 その二つの力をこの刀は使うことが出来る。


 そして今使っているのは「再生の炎」。火と光の融合術にして陽の回復術である。


 幻龍姉妹の傷が癒えていく。

 その様子がわかったのか雫が幻龍姉妹を大人しく見ている。

 

 そして瞬く間に傷は治った。

 それは時間にして一秒にも満たない時間だった。

 だけど炎はすぐに消えなかったために、傷がなくなったのを確認するまでに時間がかかった。


 「これが「永久」の力の一つだ」


 俺は永久の能力を自慢げに見せる。

 

 ぶっちゃけると「全知全能」を使えばこれより早く回復をすることも、そもそも怪我を無かったことにすら出来た。

 ただ、ここでも全知全能を使えば封印した意味がなくなるので使わなかった。

 

 それに「再生の炎」は魔法の一つであり、魔法の奥義とも呼ばれている。

 そのため使用者はほとんどいないが、居ないわけではない。


 目の前に居る禁呪の魔女桜井紗那も使おうと思えば使えるだろう。

 この魔法は使用魔力量が極端に多いうえに、繊細な魔法だ。

 そのため使用者も少ないうえに、規模も小さい。


 そしてこの魔法の効果は回復だけではない、炎に包まれた者を炎で守る効果もある。

 そのためこの魔法の力を最大限に発揮で発揮さいすれば、戦争に勝利できる。


 だからこの魔法はこうも呼ばれている。


 「勝利の炎」と。








 国立学園。

 それは国が異能者を育成するために設立した学園である。

 この学園は教育機関であり、軍人を育成するための機関でもある。

 そのため各学園には数名の軍人が教師として勤務している。


 この学園では桜井紗那がその立場である。


 桜井紗那、国内外では禁呪の魔女でその名を轟かした最強の魔女。

 数々の禁呪を使い、単騎で一国を落としたとして各国に恐れられている。


 その禁呪の魔女として名高い彼女が教師として学園で生徒に教えているのだから、生徒達の戦闘能力は一級品に近い。

 なぜここまでして軍人を育成するかというと、この国は他の国からしても異色な国であるからだ。

 この国は他王制の国であり、人間が頂点の国ではない。そのため他国からの進軍が昔から多々あるからだ。

 そのうえ、この大陸は資源が豊富であり、広大なため他国からしたらいい土地だろう。

 

 だが、この大陸には太古から最強の守護神が存在する。

 それが龍神家。

 

 しかし、龍神家が守るのは大陸であり、この大陸の生物ではない。

 この大陸の人々を守るのは鬼神家。

 だが、鬼神家は龍神家のように最強無敵の生き物ではない、だからこそ国民の力を借り、国民一丸となって他国からこの国を守るのだ。


 そのための国立の学園であり、そのための軍人教師なのだ。


 学園は緊急事態には避難所と軍事基地としての機能もある、そのため広大な敷地があり、特殊な術で致命傷を受けないという異常な術も存在する。

 

 この大陸は今平和とは言いにくい環境であり、特に最近は色々なことが起こっている。

 しかし、龍神家、鬼神家がこの大陸を守ってくれる、そう思えるからこそこの大陸の民は幸せに暮らしていけるのだ。

 龍神家当主、龍神鬼龍、鬼神家当主、鬼神龍鬼は特にこの国では人気であり、龍鬼は最も国民と距離が近い王であり、ちょくちょく街で見かけることが出来る。


 鬼龍は数年前の事件でこの大陸、全国民を命を懸けて守り抜いたことから国民からの信頼は厚い。


 矛盾しているかもしれないが、国民は数年前の大事件の内容は記憶から消されている。ただ、龍神鬼龍に守られた事だけを覚えているのだ。


 だけど国民は知らない、鬼龍が民を守ったのはただの気まぐれだったことを。偶然だったことを。そして大陸を滅ぼしかけた大事件の犯人が鬼龍の父、先代の竜王だったことを。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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[一言] 親父!?!?
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