第63話 これはやってしまったのじゃ
「それで守様。元に戻る手段はあるのですか?」
色々な妄そ…想ぞ…悦に浸り、少しの間、お見せできない顔を晒していたメイが唐突に素に戻り、守に尋ねる
「お前は唐突にだな…。いや、もう疲れるからいいんだけど…」
「今回の騒動の発端は守の姉であるあの女だそうよ。守の魔法解除が通用しない程の魔法改変なんてどうかしているわ本当に…」
「アイシェさんは、変身魔法が得意とお聞きしましたが、何かいい方法は知りませんか?」
「…いくら精進したとはいえ、私の変身魔法など守様とアナト様の合体魔法を目にしては、その足元にも及びません。お力になど…」
「ある意味では合体魔法じゃが、これをそう呼ぶのはのう…」
「守様が解析を続けている間にアナト様を探すのが一番よろしいかもしれませんね」
「…やはりそれが一番だよな。幸いなことに頭数はいることだし、みんな協力を頼めるか?」
「…も、もちろんです(ボソッ」
「早くこの騒動をおしゃめましょ!!」
「それでしたら、私はお父様の元に所在を確認しにいきましょう」
「私は姫様についていきます。ついでに守さんがいつでも戻れるように守さんの私服を取りにいきます」
「それでは、私とアイシェは何か手がかりになりそうな情報を探りましょう。確か変身魔法の文献がアイシェの部屋にありましたよね?」
「あ、あの!!私も一緒に行ってもいいでしゅか!?」
「エキドナさんでしたっけ?なぜか聞いても?」
「さきの会話でお付きの方が変身魔法が得意とききましゅたので、お話を少し聞いてみたいのでしゅ」
「…私でお役に立てるのでしたら喜んで」
「私とノームはここから離れて聞き込みでもしようかしら」
「…こ、怖いですが、守さんのために頑張ります(ボソッ」
「う〜む…我も聞き込みじゃな。ちょうどこっちに同胞が来ているという話を聞いたのじゃ。あれほどの有名人がフラついておれば、誰か行方を知っているじゃろう」
「それでは、再びここに集まりましょう。守様は、どこに同行されますか?」
アディリシア&ニースの王宮組、メイ&アイシェ&エキドナの変身魔術の情報探索組、ウンディーネ&ノーム、ジルの行方情報探索組
この四班のうちで最も効率的なのはと守は考える
「そうだなぁ〜…。やっぱりアナト姉に関しての情報が一番確固なのは王宮だと思うからアディリシアとニースについていくよ」
いつもであれば、自分を選ばなかった組たちがいざこざを起こすが、守を男に戻すのにみな必死なため、各々がすぐに行動へと移るのであった
〜ジルサイド〜
アストン皇国に来ている同胞からアナトを見ていないかの情報を聞き出そうとするジルは、吸血一族がよく訪れるという街はずれへと向かう
「ジル様では、ありませんか!!わざわざこのようなところにどうされましたか?」
「うむ。ちょっと情報を集めたいのでな。少し騒々しいようじゃが、誰か来ているのか?」
「本日は吸血族の里より、ヴラド様がいらっしゃっているのです。なんでもジャンヌ様とお話があるそうで…」
「…つまりジャンヌもおるのか。つくづく運が悪いのう守は…」
今から入ろうとしている建屋の中に大物と大物がいるということを知ってしまったジルはどうしたものかと案内されながらに思うのであった
「ジル姫、ご機嫌麗しゅう。わざわざこのような場所にどうされた?」
「確か守の付き添いをしてるんじゃなかったっけ?」
「色々とあったのじゃよ。それより、この組み合わせこそなんなのじゃ?」
「ジャンヌくんより以前守くんが吸血族の里に来た際の話を聞きたいということで本日はこちらに出向いたのだよ」
「ほら、ペットボトルだっけ?守の世界の物が今後も出てくるのなら安易に他の手に渡るわけにはいかないからね」
「それなら我でもよかったじゃろうに…。まぁ第一発見者はたしかに我ではなかったのじゃが…。それで話は終わったのか?」
「ちょうど今ね。で、ジルはどうしてここに?もしかして、守が私を呼んでいたり…」
「それはあり得ないのじゃ。アナトを探しておるのじゃが、何か知らぬか?」
「申し訳ないが、回復役殿は見ていないな」
「アナト?見ていないけど、なんだか怪しいね〜」
「ギクッ…し、知らぬならいいのじゃ。じゃあ我はこれで…」
「おっと!!ジル〜、そういう焦らしは私好きじゃないのしってるよね〜。さ、吐いてもらうよ」
「ハハハ…守すまぬが、これはやってしまったのじゃ」
逃げるのに失敗したジルは仁王立ちながらも笑顔のジャンヌに事の説明を行う
「むぅ〜女版の守なんてそんな新鮮な瞬間を見ることができないなんて!!」
「…同じ男として、男に求婚されるなど同情しかないな…」
「ほんとだよ!!私が舐め回していないのに、絶対に許さないんだから!!」
「「え?」」
「こほん…アナトを探せばいいんだね?協力するよ!!やっぱり守は男じゃないと困るからね!!」
「私も及ばずながら協力しよう」
「(なんだか大ごとになってしまったのじゃ…)」
ジルは情報を得る代わりに新たに(半ば強制的に)ジャンヌとヴラドを仲間に加えるのであった
〜メイ&アイシェ&エキドナサイド〜
アイシェが所持しているという変身魔法の文献を取りに行くために、三人はメイが守のストーキングをするためだけに立てた屋敷へと向かう
屋敷といっても本家のような堂々としたものではなく、街の人たちが住むような一般的な家の大きさのものである
しかし、メイのプライドであくまで屋敷と言い放っているのである
「あ、あの〜聞いてもよろしいでちゅか?」
「なんでしょうか?なるべく急いで守様に褒めていただきたいのですが」
「先ほどと態度がちがうのでしゅ〜…お付きの方はなぜ変身魔法を取得しようと思われたのでしゅか?」
「…お嬢様の役に立つためでございます」
「メイさんのため、でしゅか?」
「…はい。私の全てはお嬢様のためにですから」
「アイシェ、あまり余分な話はしてはいけません」
「…申し訳ございません。それでは、私は文献に目を通しますので、少々お時間をいただきます」
「わかりました。それはそうとあなたのスキルである小蛇王眼ですが、我がファントム家の人間には効力がありませんので、私たちだけの今は肩の力を抜くといいです」
「本当に大丈夫でしゅか?石になんてなってしまったら…」
「ファントム家は闇を司るお家。闇というのは、魔族に近しい力です。私たちの存在というのは、ジルさんの吸血族やあなたのラミア族と同様なのです。お家の力が強い限り、私たちにあなたのスキルは効きません」
「守しゃんたち以外にも自然体で接しゅることができる方がいましゅたとは…。お言葉に甘えさせていただきましゅ」
半信半疑ながらもメイの提案にのり、自身の変身魔法を解除し、本来の姿に戻るエキドナは、緊張のままメイたちを見る
メイの話の通り、二人を見ても石化しないことに安堵を覚えるのであった
「あ、あの!!本当に大丈夫そうでしゅが、本当にあなたたちは一体…」
「ファントム家は例外を除き、その実態は公にはしないのです。詮索はご勘弁を」
「す、すみましぇん!!」
メイとエキドナが話している最中、文献に目を通していたアイシェがやはりダメだと言わんばかりに結果を伝えるべく、口を開く
「…申し訳ございません、お嬢様。やはり解決にいたる情報は見受けられません」
「ですよね〜…いい手がかりが手に入れば、守様の方からお褒めの言葉がいただけると思ったのですが…。ま、そんなこと言われたら軽くイッてしまうかもしれませんが」
「…やはり他人の魔法に自身の魔法術式を介入させるという他が有することを許さないレベルの話では、私ごときではどうこうすることはできませんでした」
「つくづく規格外ということを再認識したということですね。そんな人たちに師事できるあなたは幸せ者なんですよ?」
「あの〜少し文献を覗いて思ったのでしゅが、この文献をお借りすれば、特訓の効率があがるのではないでしゅか?」
「そうですね!!あなたに割く時間が減れば、守様個人の時間が増やせます!!アイシェ、たまにこの子に協力してあげなさい」
「…了承致しました」
文献サイドの三人は有益な情報を得ることができなかったが、守の負担を軽減する方法を見つけることができるのであった
守がいない、絡んでいない、絡んでいるけど真面目な場面のメイは少しだけ真面目モードといった感じな今回でした。流石に第一位のお家なだけはあります。今まで触れてこなかったファントム家についてほんの少しですが、新たな情報を交えることもできた今回でした。




