過去短編3 誕生日をお祝いしたくて
これは守がテスタオロスに召喚され、1年目が終えようとしている時のお話
旅に出るために、修行に明け暮れている守は、本日の修行が終えたこのタイミングでアディリシアに呼び止められるのであった
「あ、守様。お探ししておりました」
「うん、アディリシア?何か用でもあったか?」
「い、いえ。その…ふと気になりましたことがありまして…」
「歯切れが悪いな。何でも聞いてくれ」
「うん?今、何でもって…。こほん。アディリシアはな、お前がいつこの世に生まれたのか、つまり誕生日が知りたいんだとさ」
「ここの人たちが俺の世界のネタをたまに使ってくることに違和感があるのだが…。それよりも、誕生日か。日にちという概念がテスタオロスと日本で違うようだから、換算すると…」
守はテスタオロスに召喚された時の日本の日にちなどを思い起こして、自身の誕生日をテスタオロス基準で考えてみる
「…ああ。どうやら明日みたいだな」
「あ、明日ですかっ!?」
「おいおい…そういう大事なことはだな…」
「お兄様、時間がありません!!急ぎましょう!!」
「ちょっ!!引っ張るなって〜!!」
「あ…あ〜行っちゃったか…」
今までにみたこともない形相のアディリシアに仰天の守は、唖然としながら連れ去れられ行くアキレウスを見送るのであった
そして次の日、いつもであれば、朝必ず守に顔を合わせるアディリシアの姿を見ることもなく、守はその日の修行を終える
「今日の修行は少し早いがここまでだ。守よ、水臭いではないか。今日はお前の誕生日なのだろ?」
「アキレウスから聞いたのですか?」
「いや、アナトだ」
「どこで聞いていたんだ、あの人は…」
「この後姫様より、守を連れてこいと言われていてな。すぐに向かうぞ」
ロベルタとの手合わせを終え、案内に従い守は、宮殿の中にある小ホールへ入る
すると中には、アディリシア、アキレウス、アナト、ヴェルヘルムの四人がおり、パーティでもやるのかと言わんばかりのセットがしてあるのだった
「す、すげぇ〜…なんだこれ?」
「守様、本日は朝会いにいけなくて申し訳ございません」
「いや、それは構わないんだけどさ、なにこれ?」
「その…守様の誕生日をお祝いしたくて…急いで準備したのですが、場所はここしか確保できませんでした」
「いやいや、俺には充分すぎる贅沢だよ」
「あの後のアディリシアはすごかったぜ〜。とても乙女とは言い難い形相で父上に迫って…」
「お兄様」
「すいません…なんでもありません」
「うふふ…守がこの世に誕生した大事な日、どうして教えてくれなかったのかしら?お姉さん悲しいわ」
「いや〜誕生日なんて念頭になかったんですよね」
「この国では、誕生日を祝うことに特別な意味があるのだ。今回はこの程度で終わってしまうが、アディリシアの行動力は凄まじいからな。次からはすごいことになるかもしれんぞ?」
「守くんよ。昨日の今日で何も用意できなくてすまない。そして、大事な客人に対して、このような小規模な場所しか用意できない国王を許して欲しい」
「何を言っているんですか。元の世界じゃこんな素晴らしい場所で誕生日を迎えることなんてありえませんよ」
「ありがたい。いつか宮殿内の全員が守くんを認めてくれるようになれば良いのじゃが…」
「守様なら必ず成し遂げてくださいます。そう私は信じております。守様、こちらを受け取ってください」
そういって渡されたのは、貴重そうな箱に入っている二つの小さなリングであった
「これは…?」
「魔力を高める効果と暴走を抑える効果を備えている魔法具です」
「こんな貴重なものをもらってもいいのか?」
「守様のこれからに役立つと思い選びました。是非守様のためにお使いください」
「今回は、満場一致でアディリシアのプレゼントのみと決めたんだよ。その方が特別になるだろ?」
「…こういうことを言っちゃうからアキレウスはモテないのよ」
「うむ。今のは言わない方がよかったことだと私も思う」
「この国の将来が心配になったわい」
「これがお兄様ですから」
「今日もフルボッコだぜ…」
「…ああ。大事にさせてもらうよ」
この時のプレゼントは、旅の最中肌身離さず持ち、その後の旅の幾度の場面で守を助けることとなるのであった
初投稿から無事1年を迎えることができました。いつも読んでいただいている読者様のおかげです。本当にありがとうございます。
一周年記念の投稿日である3月12日はそのまま守の誕生日という設定で、今回を投稿しました。
今回は過去短編という形でしたが、来年は本編で混ぜて書けたらなと思っています。




