第2話 隠し通せるなんて思っているのかしら
衝撃的な新入生代表挨拶が終わり、大講堂から自分たちの教室へ戻る道中、姫とメイドに加えて勇者を侍らせているために色々な視線をうけ、肩身狭そうにする守だった
そんな守に対し、アキレウスは先の出来事を爆笑しながら守に語りかける
「はははっ!!いや〜、あれは凄かったな!!まぁ、心中は察するぜ、守。ジャンヌのおかげで初日から一躍有名人だな」
「うるせぇ!!お前らどうせ知っていたんだろ?アディリシアが新入生代表挨拶じゃなくて、俺の横にいたから何かがおかしいと思ったんだ」
「申し訳ございません、守様。本当はお伝えしたかったのですが…」
「ごめんね、守。私がみんなに秘密にしておいて欲しいってお願いしたの」
「申し訳ございません。守さん…私の身分では口にするなんてできませんので」
「女の子たちは許す。だが、アキレウス、おめぇは許さねぇ!!どう料理してやろうか?あぁん?」
「なんで俺だけっ!!いや、ほんと魔物を瞬殺できるレベルの魔法使いの言葉は洒落にならないので勘弁してください…」
共に旅をしていただけあり、その殺傷性についての理解は高いアキレウスは即座に土下座しながら告げる
「…アキレウスをいたぶるのは後々に置いとくとして、とりあえずだ。ジャンヌ、自分でスピーチしていたから分かっていると思うが、俺とお前の仲は既に終わったものだ。今更俺の心にお前が映ることはないだろうが、それでも俺との学園生活を望むのか?お前が辛い思いをするだけだぞ」
「…守が私のために全てを背負ってくれたのは知っているよ。その結果、私たちの仲が引き裂かれてしまった事もね。だけどね、大講堂で言った事に嘘偽りはないの。守の心の中に私がもういなくても、ゼロからのスタートでもいいから私はもう一度、守と一緒にいる権利を勝ち取ってみせるって決めたの!!守の意地が勝つか、私の侵攻が勝つか勝負だね!!」
「そ、そうか…。俺の決意が変わる事はないと思うが、まぁ頑張ってくれ」
「うん!!ありがとう」
満面の笑みを見せるジャンヌにむず痒くなる守の様子を察したのか、アキレウスは土下座の姿勢から打って変わって教師面になりながら口を開く
「あ〜いいところで悪いが、再会話は済んだか?とりあえず終礼だけは済ませるぞ。ジャンヌは自分のクラスに戻れ」
「もっと話したかったけど、しょうがないね。ねぇ守、今日一緒に帰ってもいい?」
「断る理由は特にないな」
「やったー!!」
守はアキレウス、アディリシア、ニースと共に教室へ戻ると当然ながら先ほどの件を含め、クラスの生徒全員からの視線を浴びる
「(明らかに俺のことだろうヒソヒソ話が聞こえてくるがアディリシアがいる手前、誰も話しかけにはこないな)」
唯一エリカが代表で守に大講堂での出来事について問い詰めてくるも
「ジャンヌ様も勇者なので彼と幼い頃から仲良くしていたのです」と
アディリシアが皇国関連の話を絡めてうまくフォローしたことでなんとかその場は治った
「…では初日の連絡事項は以上だ。先ほどから扉の外でこちらが終わるのをワクワクしながら待っている元勇者様がいるからな。遅すぎて文句を言われる前に終わりにするぞ。ジャンヌ入ってもいいぞー」
「守ーーー!!」
アキレウスが終わりを告げると同時にジャンヌが嬉しそうに守に特攻する
「(世界を救った勇者様が平民にラブラブしながら向かってくるなんて平穏な学生生活って何なんだろうな本当に…。というかお前は飼い主が好きすぎる忠犬かっ!!)」
世界の誰もが知るその人が得体の知れぬ学生に求愛している様子にクラス中が止まるもその様子が面白おかしいアキレウスがクラス中に述べる
「…いいか?ああいうのを見たら"リア充爆発しろ"って言うんだぞ。これは異世界から召喚されし大魔法剣士の偉大な言葉だ」
「(…そんなことは教えなくていいアキレウス)」
「まぁ〜!!あの大魔法剣士様の世界のお言葉ですの?意味はさっぱりわかりませんが、私感銘を受けましたわっ!!」
「(やめてくれエリカ…どこに感銘を受ける要素が…。そしてこっちを見てニヤニヤするなアキレウス。いつか本当に殺してやる!!)」
教室の中に留まっているのが辛いと感じる守は、守の部屋が見たいと言い張るジャンヌとアディリシア、ニースを連れて寮へ戻ろうとする
学園を離れるために校門へ向かうとそこには知っている顔が二つあり、守は一気に青ざめるのだった
「ア、アナト姉にジル…」
「おっひさ〜守♪」
「(この人は聖騎士団で共に戦った仲間のアナト=アルカだ。魔王討伐時代では主にパーティの回復や魔法による遠隔攻撃をするポジションだったんだが、内に秘める残虐な性格ゆえ、傷ついている仲間をそっちのけでワンドで魔族を撲殺するという非常にやっかいな人だ。それゆえに(パーティ内で)ついたあだ名が撲殺天使もとい撲殺女神(俺命名)だ。俺が召喚される前は異世界人を召喚することを最後まで反対していたらしいが、司祭たちの決定には逆いきれず、俺が召喚されてしまったことをずっと悔いていた。そのためかこの世界に召喚され、何もわからなかった俺の面倒を見てくれた恩人でもあり、俺からしたらこの世界での姉と言っても過言ではない。アナト姉の教育のおかげで俺は魔力を高め様々な魔法を使えるようになった。世間では女神様〜なんて言われるくらい愛想振りまいているけど、その中身はくry…)」
「何か言ったかしら?守」
「…モノローグに反応しないでくれよ、アナト姉」
「さぁ〜てなんのことかしら♪」
「久しいのじゃ、守!!アナトばかりではなく、我にも構ってくれ!!」
「(このロリ巨乳はジル=バートという。このアストン皇国より南に位置する吸血鬼が支配していた旧王国の王女だ。吸血一族はどちらかというと魔族に近しい存在だが、一族のプライドから魔族には従わなかったらしい。その結果、魔族の侵攻により一族が壊滅状態に陥ったんだが、旅の途中で寄った俺らが助けたことで難を逃れた。それ以降吸血鬼達は魔族討伐に協力的になり、共に魔王を倒すことに成功したわけだ。ジルは助けた時に俺に好意をいだいてくれたようだが、当時はジャンヌと恋仲だったために深い仲になることを断ったのだが…本妻でなくても構わないといい懐いてくる。ロリなだけあって見た目は俺より若そうだが実際は俺より10倍年をくっている。つまりは合法のロリババアだっ!!)」
「…守よ、失礼なことを考えている時の顔をしておるぞ」
「だからですね…。というかお前、制服姿ということは…」
「そのまさかなのじゃ!!守も人が悪いのぅ。アナトとジャンヌから話を聞いて、我も学校に通うことにしたのじゃ」
「おいおい…ということは今回の全ては身内に仕組まれてたということか…!」
「そうそう、その顔〜♪守のその顔が見たかったのよ。アキレウスをおど…黙らせておいて正解だったわ〜♪」
「やはり裏ではあなたが糸を引いていたということですか。相変わらずいい性格してやがりますね。はぁ〜…俺の平穏な学園生活が…」
「守に平穏なんて言葉は似合わないのじゃ。騒乱という言葉がプレゼント付きで送られてくるような体質であろうに。そんな守を我は好いておるのじゃよ」
「そんなバカな…」
「ところでジャンヌよ。あんな大勢の前で守にキスするなんて、我は聞いてないぞ!!ずるいぞ!!」
「ジルだって初日の帰りくらいは譲ってやるぞって余裕ぶって言いながら結局現れたじゃんか!!」
「代表挨拶時の告白だけでなく、公開キスを見せられたら我も動かざるをえないのじゃ!!」
「それはその…守を目にしたら、こう…抑えきれなかったと言いますか…会えなかった期間が長かった反動といいますか…」
「なんでアキレウスみたいな猪行動するかね。ほんと」
「…私もあのように大胆な行動をすれば、守様に貰っていただけるのでしょうか…?」
「おそらく、姫様が同じことをしちゃいますと守さん慌てふためくと思いますよ」
「アピールって難しいですね…」
嘗て共に魔族に対抗した仲間たちが全てここに集結してしまったことに色々と察しがついてしまった守だが
自身の正体が世間にバレていないうちはまだ平穏な生活ができると甘い考えでいるのだった
「うふふ〜♪初日でこの結果なのに、正体を隠し通せるなんて思っているのかしら♪」
作者自身が思った以上の反響が結果として見えましたので急ぎ2話を公開いたしました。本当にありがとうございます。
守の魔法の師匠がアナトということを書きましたが、剣術の師匠もこの後の回で登場予定です。
アナトの最後の言動はすぐに回収されると思います。