第26話 お願いしてもいい…かな?
借り物競争第一レースはジルのみがゴールし、他の生徒は第三地点へ行くまでに全員リタイアという結果に終わる
次の第二、第三レースでもリタイアが相次ぎ、他の達成者が現れないと最後にふさわしい超難関種目となるのであった
そして、第四レースではいよいよジャンヌを含む組み合わせがこの種目に挑むこととなる
「第三レースまで行ってきましたこの種目ですが、依然としてジルさん以外に達成者が現れておりません」
「アナトとうちのバカ息子が無理難題を用意しすぎなのじゃ。学園の生徒達には本当に申し訳ないことをしておる…」
「アキレウス王子が書いたと思うが、『西の森に生える伝説のきのこ』や『火山噴火口で取れる貴重な鉱石』とかはどうしろとというような感じだしな」
「簡単なものも入れていた筈なんだけどなぁ…。俺たちの基準で考えすぎていたようだ。正直すまないと思っている」
「巻き添えくらっているけれど、私は人間で賄えるものしか基本的には用意してないのよ?」
「…出たお題の中には人間関係が破綻しかけたようなものもあったようですが…。それはさておき、続いてはジャンヌ様がおられます組み合わせになります。このお方にはリタイアせずにゴールしてほしいものです」
「と、実況から言われてるぞ?」
「今までのを見ていると私たちには簡単なお題が出尽くしているんだよね…。ジルの引いたお題といい、アナトが入れているであろうお題はあんまり引きたくないかな〜」
「ま、あそこで未だ悶えているジルのようにならないといいな」
「アハハ…ちょっとだけ緊張してきちゃった」
緊張が拭えないものも他の生徒と共にスタート位置へと誘導されたジャンヌはスターターの開始を受け、ジルのときと同様に真っ先に第一のお題場まで向かう
「う〜怖いけど、簡単なのでお願いっ!!」
引いたお題は今までのを見ると比較的容易なものであったが、少し考えるジャンヌ
「ジャンヌが引いたお題は『苦労しているもの』のようね。今までのものと比べるとそこまで難題ではないけれど、考えちゃうわよね」
「苦労人なんてこの会場にいる者で一人しか心当たりがないではないか。と言っても公開されたのはつい最近のようだがな」
「間違いない。メイのとこのアイシェなんかも答えとしては近いが、あいつは好んであの変態にご奉仕しているからな」
「やりかたはよくないのじゃが、苦労人といえばこやつ以外おらんのは確かじゃな」
解説組のやり取りを聞いたジャンヌは正解に気づき、それにめがけて向かっていく
「アナト!借りていきます」
「え、お姉さん?」
「ああ、持ってけ、持ってけ」
「守のことでもそうだったが、何より聖騎士団を裏で支えていたのはアナトだろ?充分苦労人なんだよ」
「…さっきの話を直で聞いちまった以上、アナト姉に納得せざる得ない」
「歯切れが悪いのじゃ。そこは素直に『ありがとう、アナト姉』って思っておけばいいのじゃ」
「復活したのか、ジル?」
「なんのことじゃ?我は何も知らぬのじゃ」
「現実逃避しやがった…」
アナトを連れて第一中継地点まで向かう道中、ジャンヌはアナトに向けて言う
「…今までこういったことをちゃんと話す機会がなかったんだけど、アナトにはみんな感謝しているんだよ」
「お姉さんはただ若い子達の力になりたかっただけだから気にしなくていいのよ?」
「それでも、守も私も何度も救われているからっ!!本当に感謝だよっ!!」
「…ふふっ。成長したわね、ジャンヌも守も」
「数々の経験をしてきましたからっ!!」
第一関門を突破したジャンヌは他の参加者に圧倒的な差をつけたまま第二のお題場を目指す
「借り物競争の中で初めていいものを見た気がしました。ただ単にトラウマを植え付けるような種目ってわけではないようですね」
「そもそも体を動かす祭典でトラウマになるというのがおかしな話だがな…」
「そうこう話しているうちに第二のお題を引かれたようです」
「アナトが戻ってないから俺が見るが、『伝説の武具』のようだな。あいつ女神の加護のおかげで割と簡単な物を引きすぎじゃないか?」
「『伝説の武具』が簡単って言われるとは、世も末じゃのぅ…」
「しかし、守のデウスやアキレウス王子のシファーは契約者以外持つことすらできないだろ?ジャンヌのレヴィでは借りたことにはならないし、どうするのだろうか?」
「じ、実はな…あるんじゃよ。守くんやアキレウスとは別に所有者はおるが契約をしていない剣が…」
「まさか父上、俺たち以外にも所有者がおられるのですか!?」
「ヴェルヘルム様っ!!教えてください!!」
「うわっ!?」
解説たちの話を聞いていたジャンヌはすぐさま解説席へ直行し、所有者について尋ねる
「なるべくオフレコにしたかったのじゃが…。娘の元へ向かうとよいじゃろう」
「姫様?なるほど。そういうことですね」
「ちょっ、ジャンヌ…行っちまったか。アディリシアにも渡したのですか、父上!!」
「ほ、ほらな…?アディリシアも剣を扱うようになったじゃろ?戦場に立てるようになったら守くんの背中を守りたいと言われてのぅ…」
「本当にアディリシア様に愛されているわね守は」
「俺らが持つ剣シリーズは強さこそありますが、代償もあるのですよ?何を渡したのですか!!」
「それがのぅ…アディシアが直談判しに来たときに鬼々としておってのぅ。サタンが反応したからそれを渡してしもうたのじゃ。じゃが、戦場に立てるレベルまで契約はダメだと儂とロベルタで言ってあるからのぅ。持ってはおるが未契約ということじゃ」
「さすがに呆れたぜ…」
「まさかアディリシアまで愛剣持ちになっていたとはな…」
「さっきの話から守を絡めて考えればありえない話ではなかったのじゃが、国王は娘に甘すぎるのではないか?」
「言ってやるな、ジル…」
解説席から逆方向にある生徒達の待機場所へ向かうジャンヌはアディリシアを見つけ剣を貸して貰うよう願う
「姫様!サタンを貸していただけませんか?」
「大丈夫ですよ。では参りましょう」
国宝級の剣になるためにアディリシア同伴のもと、第二中継地点へと向かう
中継地点にて審判の前でアディリシアは空気懐からサタンを取り出し、お題に沿った回答であると判断され、ジャンヌは第二関門突破となるのだった
「ジャンヌ様無事に第二関門を突破されたようですが、あのように所有者を連れていけば守様でもアキレウス王子でも良かったのではないでしょうか?」
「俺らの持つ剣はな、契約をしているとあのように審判が少し持つことすらできないんだよ。だから今回は所有者が別でかつ未契約者の妹以外に正解はなかっただろうよ」
「確かに"物"の場合は、審判が判定のために直接手にしますので、触れなければ不正解となってしまいます」
「つまりヴェルヘルム様が姫様にサタンを渡してなければジャンヌはここでリタイアだったわけだ」
「女神の加護の効果ありすぎだろ…」
「さて、ゴールまでリーチといったところですが、第三のお題を引いたようです!」
「書かれているお題は『あなたの好きな人』のようね。これはもう言わずもがなでしょうね」
「ぐぬぬ…私としては許したくないお題ではあるが…」
「守に引かせたかったのに、答えが守のものを引きやがったよ」
「新入生代表挨拶で公開キスまでされていますからね。もはや知らぬ者はいないでしょう」
これまでのお題とは違い、笑顔でいっぱいのジャンヌは引いてすぐに守の元へ駆けて行く
向かってくることがわかっている守は気まずくもドンと構えるのだった
「その…お願いしてもいい…かな?」
「何を今更。むしろ新入生代表挨拶のときにこういうのが欲しかったわ」
「えへへ〜。もしダメって言われても連れて行くんだけどね」
「むかつくからさっさと行くのじゃ!!」
審判も学園側の人間のため、もはや判定するまでもないと、中継地点で足止めすることなくそのまま通し、守を同伴したままジャンヌはゴールするのであった
借り物競争ジャンヌパートでした。最後のお題で第一話のようなテイストを再びやろうか迷っていたのですが、この先にも機会があるために見送りました。
以前のあとがきにも少し出てきましたが、愛剣の名前が再度出てきましたので、その部分に触れたいと思いますが、
ジャンヌはレヴィ(アタン)、守は(アスモ)デウス、アキレウスは(ル)シファーを持っており、今回でアディリシアがサタン(未契約)を持っていることが判明しました。いずれも七つの大罪からとっています。契約や代償の話もそのうちどこかで触れていきたいと思います。




