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閑話 ー師匠と呼ばれる者ー




 拙作へお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(*´人`)



 やっと師匠の名前が出てきます。不都合があれば、変更になるかもしれませんm(_ _)m



 ※手違いにより、本日2話目の更新です。前話を未読の方はご注意下さいませ。






 大陸最大級の帝国に古くから続くアルジャン家に生まれた奇才。若くして6つある魔術師の位階の上から2番目〔半月(メッツォ)〕の位を賜った オリヴィエール・アシュリー・メッツォ・ド・アルジャンにとって、その孤児との出会いは 驚きに満ち、ささやかな喜びを知り、そして ほんの少しの哀愁を抱くものだった。


 彼の居た場所は、食べる物で満たされ 煌びやかな衣を纏いながらも、更に何かを、より素晴らしいモノを、誰もが持たぬ唯一を、と貪欲に求める欲の皮が張った人々が溢れ返っていた。






 ある者は、その名に附随する利権のおこぼれを浅ましく啜ろうとし。



 ある者は、その力を利用して並み居る人々の上に立つべく驕傲にも目論む。



 ある者は、その珍かな色に輝く髪と美しき見目に惑い、あたかも装飾品のように傍へ置きたがる。





 そんな人々に囲まれる日々に嫌気が差して。そして、自分がそんな人々の一員である事が 堪らなく不愉快で。オリヴィエールは自分の居た場所を飛び出していた。



 自分は決して あの場所の人々 と同じではないと思いたくて。オリヴィエールは沢山の食糧を持って、近隣の貧しい小国へと足を向けた。貧しいと言っても、一部の特権階級が搾取を重ね、近隣諸国へ威嚇するかのように武力強化ばかりをしている国である。国の出入りは取り締まりが厳しかったが、そこは彼が疎ましく思っていた名が力を発揮した。



 揉み手をしながら王都への道を指し示す 境界の監視役たる兵士長を無視し、貧しい村のある寂れた道を行く。



 最初の村は酷かった。オリヴィエールの届けた食べ物を、我先にと奪い合う 痩せこけた人々。幼けない子供を蹴飛ばしてでも食べ物を奪う成人した男(労働のできる者)の姿さえ見え、愕然とした。



 次の村では、国の役人に見咎められない場所に魔法で井戸も掘ってやった。食べ物に喜んでいた人々は 彼が魔術を使った途端、恐れおののいて 石を投げて来た。食べ物が足りずに、残り少なくなった自分の分を与えた子供は 母親の背に隠れ、オリヴィエールと目も合わせてはくれなかった。



 そして。無くなった食べ物を買い足すべく立ち寄った近くの町では、オリヴィエールの青みを帯びた銀の髪色を気味悪がった門番によって文字通り門前払いをされた。国の内陸部、特権階級の者(国外を知る者)が少ない町では オリヴィエールの持つ名は何の意味も成さなかった。



 次の町も駄目で、その次の町に向かう途中、空腹と渇きから魔術を使う気力さえも失った。町の手前の森に墜落し、ここまでか と思う。



 近くにみすぼらしい子供がいたけれど、明らかに日々の糧にも事欠いている様子だった。これ迄に見て来た人々の姿を思うと、助けを求める言葉も虚しくなり、投げやりな気持ちで諦めた。



 ふと。それでもせめて。意味の無い ただ無駄なだけの死を迎える前に、この子供へ金品でもやるべきかという考えが過った時。



 ほたほたと近づく足音とともに、オリヴィエールの傍に寄ってきた子供の気配がした。何をされるのかと目を閉じたまま様子を窺えば、口に乾いたパンの欠片を押し込まれた。



「げふっ! ゴッホ……ゴホ!!」



 思いもよらぬ行動への驚きで 乾いたパンの粉が変な場所へと入り、危うく死期が早まるかと思ったオリヴィエールだったが、彼に施されたものは 明らかに善意によるものだった。



 小さな善意の結果は悲惨だったが、気のせいや悪戯などでは無かった。その証のように、咳き込むオリヴィエールから いつの間にか離れていた子供は、次に岩の隙間から現れた時には 透き通る水で満たされた 縁の欠けた器を手にしていた。



 残り僅かなパンを千切り、カップの水に浸してから、自ら食べるのでは無くオリヴィエールの口許へ運ぶ。



(此処に在った。人の真心……清らかなものは此処に在った……)




 それは驚きだった。

 諸外国から煙たがられる国の中、食べ物を奪い合う人々の溢れる国の片隅で、そんな人々の集まりからも外れ、独り隠れるように岩の隙間に住まう少女。まだ十にも届かぬような姿で 庇護する親も無く、ろくに食べ物も得られないであろう状況で、得体の知れない男に食べ物を与えるという事は、どれほど為し難き事だろうか。


 痩せ細った指が口に運ぶ パンの欠片の一つひとつが、オリヴィエールが干す度に 欠けた器に注がれる水の一滴が、何かとても 尊いモノのように思えた。




 そして 名前すら持たず、投げかけられる悪意ある言葉の意味さえも知らない子供。治癒のために差し延べた手に怯える姿には、胸が痛んだ。



 頭を撫でれば 不思議そうに、けれど 心なしか嬉しそうにする姿に和み。粗末な物を寄せ集めて、少しでも快適に過ごせるように 住み処を整えている聡明さに感嘆した。



 何よりも。指先に小さな光を灯すだけの些細な魔法を映した夜闇の瞳に 驚嘆と興味の星を輝かせる純真無垢な反応が新鮮であった。ただ 才能があったから、必要だったから使う というだけの自らの魔法や魔術に、ささやかな喜びを覚えた。




(そうだ。この子を連れて帰ろう)




 そこに思い至れば、オリヴィエールは浮き立つような気分になった。まともな服を着せ、満足な食事を与え、悪意の言葉では無く、もっと この子供に相応しい優しく美しい言葉を沢山その身に詰め込めば、素晴らしい存在となるかもしれない。


 そんな存在が実在し得る事を証明できれば、虚ろなオリヴィエールの心も 幾ばくかは満たされるだろう。


 どうせ、こんな場所に 独りで捨て置かれている子供だ、自分が拾っても構わないだろうと 開き直りにも近い思いで 言い包めるように言葉を連ね、エサ(魔術)をちらつかせ、半ば拐うように連れ出した。



「私は とても身勝手な人間だな」



「ししょー?」



 国へ帰る道行きならぬ空行きで、こぼれ落ちた自嘲を聞いて“師匠”を見上げる、空の上に少し慣れた様子の まっさらな弟子。出会って間もないオリヴィエールに懐いてくれる可愛い弟子へ穏やかに微笑んで、小さなリボンの揺れる頭を撫でた。



「これから忙しくなるね。先ずは 当面の住み処を見繕わないといけないし、生活に必要なものも揃えないといけないな」



「すみか?」



「キミの言う“基地”だよ。正しくは“家”と呼ぶものだ。シャリテの教育には 騒がしい場所ではない方が良いだろうか……よし、帝都に帰るのは止めて静かな所を探そうか」



 後半の独白に、更に謎を深めた様子の弟子に クスクスと笑いながら、久しく感じなかった“楽しみ”な気持ちを味わうオリヴィエールだった。











 手口は誘拐犯! Σ( ̄д ̄;)


 え、えぇーと、悪い人では無い筈です。自分や周囲に嫌気が差して 飛び出した先ですることが慈善活動である辺りが。

 理由が周囲との差別化と自己満足の為であっても。


 メモとして残っていた初期設定では、知的で穏やか、ちょっぴり天然? だそうです。……どうしてこうなった??!! 10/13 頃の自分を問い詰めたい。疲れてたのでしょうか?



 ちょっとだけ補足すると、師匠はすぐに死にそうなほどの飢餓状態ではありませんでした。旅慣れないお坊っちゃま育ちなので、色々と打ちのめされて、2~3日ほど水だけで飢えをしのぎ、水も尽きて「もうだめだ……」的な感じで(;´∀`)

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冬童話2018に提出予定の新作も よろしければ(*´∀`)r【美女と魔獣ー星月夜に彷徨う異形ー】
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