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3 ー奇跡と夜空ー




 拙作に お立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(*´∀`)



 出来立てホヤホヤです。(23:37現在)






 師匠に手を引かれて 細長い板に乗ったシャリテは、しっかりと掴まるように言われたものの 言われた通りに出来ずにいた。というより、師匠も一緒に板に乗ろうとした時点で慌てて飛び退いた。



「……シャリテ?」



 避けるように飛び退かれて ほんのり傷付いた面持ちの師匠の様子には気付かず、シャリテは あわあわと言葉を紡ぐ。



「しゃりて、きたない。ふく、きたない」



 親しく言葉を交わす者も無く、誰かの会話で聞いた言葉と投げ掛けられた言葉で覚えた僅かな語彙を駆使し、自分が汚れている事、そして師匠の巻き付けた黒い布……フード付きの外套の下にある、多少汚れていてもなお 町の人より上等な服が汚れてしまうことを一生懸命に伝えた。


 シャリテの言葉に暫し無言になった師匠の顔は、月を背にしているせいでわからない。けれど、軽く息を吐いて静かな声音で語りかけてくる。



「それは違うよ シャリテ。キミは汚くなんてないんだ。服や肌の汚れは 洗えば落ちてしまうけれど、一度汚れてしまえば なかなか綺麗に戻れないものが、シャリテは誰よりも綺麗なんだ。大丈夫だよ、おいで」



「……きれい……じゃない」



 “きれい”の言葉は知っていた。ずっと前に、沢山のキラキラやピカピカな大人を引き連れて町を通りかかった“おひめさま”が、町の人達 皆に言われていた言葉。太陽のように輝く豊かな髪と、布が沢山使われた服を纏った“おひめさま”を示す とても眩しい言葉。シャリテは、自分が あの人と同じように、そして師匠の髪のようにキラキラとした“きれい”と言われるものを持っているとは とても思えなかった。



「シャリテ……」



 下を向いて じりじりと後退るシャリテを見て、師匠はもうひとつ息を吐く。



「……仕方ないな。シャリテ、見ててごらん



【コール・エスピリトゥ・ノワール



 シエロ・トレケイン・オプターレ】



 聞きたまえ 夜の精霊達よ、夜空駆けんと欲す我が願い 今こそ叶えておくれ」



 師匠は懐から小さな煌めく欠片を取り出して、爪でピンと空に弾く。そして、また 耳慣れない響きの言葉を紡いで“何か”に語りかけた。



 微かに月光を反射しているのか、自ら光っているのか。淡く輝きながら空に放たれたそれは、風に解けるように形を崩して粉になり、サラサラと夜の闇に消えて行った。



 周囲に散った粉が呼び水となり、シャリテと師匠しか居ない筈のこの場で“何か”がざわめいた。




「わ……」



 それは、圧倒的な光景だった。頬を治した奇跡より、指先に光を灯した奇跡より、もっとずっと 途方もない奇跡の一幕。




 師匠の呼びかけに応えるように、星のようなキラキラが、草木から、岩や土から、空からと あちこちから飛んで来る。螺旋を描くように師匠の周りを飛び交いながら……一部は師匠の銀の髪に戯れるように纏わりつき……次第に足下の板へと集まり光を増して、板は師匠を乗せたまま ゆっくりと浮上した。



「ほら、これが 魔術だよ。これに乗って、一緒に町まで行こう。さ、おいで」



 空を駆ける板で シャリテの周りを軽く旋回して見せた師匠の差し出す手。魂消(たまげ)るの言葉通りに魂が何処かに行ってしまったように放心していたシャリテは、キラキラと光る板に引き寄せられるようにフラフラと近付いて……。






「はい、捕まえた。なるべく ゆっくり飛ぶけど、しっかりと掴まっているんだよ」



 しっかりと抱き上げられていた。敢えて説明するならば、子供抱き という乙女には夢も何もない抱き方であった。乙女と呼ぶには まだ早いシャリテなので、夢のある抱き方のなんたるか など知る由も無い。ゆえに問題はない。



 シャリテが あれ? と 思った時には、既に空の上。足下には いつも見上げている木立の枝葉。見上げれば 遮るものの無い夜空。青白く光る月は真円で、シャリテと師匠を煌々と照らしていた。



「ししょー!!」



 事ここに至っては、服を汚してしまうと 遠慮などしていられない。目も眩むような高さに、シャリテは師匠の服を握り締める。



「ははは、落としたりしないから大丈夫だよ。上を見てごらん、今夜は満月だ。月の光に魔力が満ちる夜、夜の精霊たちが最も力を持つ夜……折角だから、私たちも精霊たちと一緒に 月の光を浴びておこうじゃないか」



 楽しげな声にそっと見上げれば。風に靡く師匠の髪に、沢山のキラキラが纏わりついていた。



「きらきら、きれい」



「そうだね、月も星もキラキラしているね」



 少しだけ シャリテの言いたい事と違って伝わってしまったけれど、正しく説明する言葉を持たないシャリテには訂正できなかった。


 それに、光を纏って微笑む師匠が シャリテにはとても“きれい”なものに見えて目が離せず、それ以上の言葉を紡ぐのは止めてしまった。






 シャリテにとって師匠が“きれいなもの”の上位に在り続けたのは、この時の印象のせいかもしれない。











 呪文は、語学の堪能な方から見ると「なんじゃこりゃ?」と なると思いますが、パッと聞いて意味がわからないけれど 意味はある……という感じにしたかったのでm(_ _)m


 見直し時間ほぼ無しで投稿してしまいましたので、後で微修正が入るかもしれませぬ(>_<)



ーーーーー


 10月18日。本筋は変わりませんが、細かい所を修正&加筆いたしましたm(_ _)m

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冬童話2018に提出予定の新作も よろしければ(*´∀`)r【美女と魔獣ー星月夜に彷徨う異形ー】
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