12 ーおんなのこー
拙作へお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(*^人^*)
……間を開けてしまって申し訳ありませんm(__)m
食事を終えて。再び ガヤガヤ(ザワザワ?)と 騒がしくなった食堂を後にしたシャリテと師匠は、先ほど案内された客室へと戻る。
流石の師匠といえども、方向音痴という追加要素は無かったようで なによりだ。
客室では、シャリテの入浴の準備を整えてくれていたらしい ロザリア騎士が出迎えてくれた。その後ろで 大きな衝立を設置していたらしい大柄な騎士2人も、振り向いて 右手の親指人指し指で輪を作り、残りの3指は伸ばしたまま その輪を喉の下 胸の上部に当てる“けいれい”というものをしてくれた。
初めて見た時に目を円くするシャリテへ説明してくれた師匠によると、“けいれい”は騎士達の“あいさつ”なのだそうだが、“あいさつ”と聞いて真似をしようとしたシャリテに「あれは騎士達の挨拶だから真似をしなくても良いんだよ」と言って止められてしまったのだった。
そんなことを思い出したシャリテは、旅の間に教わった スカートを指先でちょこんとつまんで 膝をちょっぴり曲げる“あいさつ”を返しておいた。
「……くっ…か、かわ……」
やや驚いた顔をした後、2人の騎士は微笑んでくれたけれど。その1歩前……シャリテの正面に居た ロザリア騎士は、クリティカルヒットを食らって一瞬たじろいだ。が、そこは部下の手前 直ぐに立ち直り、蕩ける笑顔でシャリテを褒める。
「上手に ご挨拶できたわね。それも蒼月卿に教わったの?」
「うん。あいさつ は れいぎ なんだって」
本当は“れいぎ”の何たるかも まだよく分からないけれど「おはよう」や「おやすみ」、食事の前の「しゅくらん」など、師匠が当たり前のように口にする“あいさつ”という言葉や身振りは、なんとなく大切な事なのだろうと シャリテは思っていた。
そんな漠然とした理由ながらも返された礼に和んだ空気のまま、2人の騎士達は 衝立の設置を終えて客室を出て行った。片方のふわふわした金の髪の騎士が、退出際に シャリテへと ひらひら手を振って ロザリア騎士に睨まれ、慌てて去っていったのは見なかった事にするべきか悩むところだ。
シャリテの後ろで 騎士を見送った師匠の切れ長の目が 刹那に妖しい光を帯び、金髪騎士の足元の絨毯が 不自然に波打ったことで 危うく顔面から廊下にダイブしそうになったのは、シャリテが知らなくとも良いことである。保護者こわい。
「それじゃあ シャリテちゃん、私が手伝うから 湯浴みをしてしまいましょうか」
「ししょう……」
ロザリア騎士には やや慣れたものの、それでもすがるように師匠を見上げるシャリテの頭を撫でながら、師匠は柔らかく微笑んで諭す。
「大丈夫。寧ろ 私が手伝うよりも同性のロザリア殿の方が 力加減や細かな勝手が分かるから安心だよ。……ロザリア殿、彼女をお願いするよ」
「お任せください」
そして、シャリテは 荷馬車の上の子牛のような瞳で、師匠から渡された着替えを手にするロザリア騎士に連れられて 衝立の奥に向かい……。
「はふ……」
「どう? シャリテちゃん。これなら怖く無いでしょう?」
「うん」
そう言って手を動かす ロザリア騎士に髪を洗われて、洗濯が出来そうな大きさの桶に張られた湯に半身を沈めている シャリテは、お湯の中に入る事が嫌いではない様子だった。敵は いきなり熱いお湯の出てくるシャワーのみだ。
「でも、どうして ししょうとシャワーはだめなの?」
シャリテには、それが不思議で仕方ない。
「それは 貴女が女の子だから、としか言えないわね」
ちょっと困ったように苦笑するロザリア騎士は知らない。
「おんなのこ? おんなのこ はなに?」
自分の返答が、子供特有の“なぜ・なに・なんで”攻撃に火をつけてしまうことを。
そして。微妙に答え難い質問も容赦のなく飛んで来るこの攻撃は、湯浴みタイムが終わるまで止まないことを。
「ただいま。髪を乾かすのに魔術を使ったら、魔術のコツを教えてくれと 騎士達に囲まれてしまった」
こちらも「?」攻撃に見舞われたらしい師匠は、参った 参った と言わんばかりである。そして 心なしかやつれている。決して 目を血走らせた半裸の筋肉達による 可愛くない「?」攻撃に削られた精神のせいではない。一晩の宿のお礼になれば と、途中から 筋肉達が頭を抱えて苦しみ始めるほど、懇切丁寧に魔術についての説明をして 疲れているだけだ。
最後まで無事だった赤茶髪君は 国境の橋で弟子入り志願するだけあって、もしかしたら 努力次第で簡単な魔術くらいなら使えるようになるかもしれない。
「ロザリア殿もありがとう。助かったよ……ん?何かあったのかい?」
「いえ、何も。……どうぞ お気になさらず」
ほんのり目元を染めているロザリア騎士の様子に 師匠は訝しむも、すっきり さっぱり つやぴかシャリテが突撃して来たので、そちらを迎え入れた。すっかり 甘ったれさん である。
「おぉっと……ただいま シャリテ。良い子にしてたかい?」
「うん。ロザリアどの と いっぱいお話したの」
良い子にしていたとも。ロザリア騎士の言うことをよく聞いていたし、勝手に魔術の練習もしなかった。……ちょっとばかり 知的好奇心による「?」が跳び跳ねただけである。
「よしよし、お利口さんだ」
師匠に褒められて、頭を撫でられることに ほんのり頬を緩めながら、シャリテは次なる「?」を投下した。
「ししょー。ししょーは おんなのこ?」
「へ?」
師匠が、ロリコンに続いて またも あらぬ疑いを被せられた瞬間だった。
>妖しい光を帯び……
※師匠は人外ではありません。喩えです。(念のため)
回を重ねる毎に不憫な扱いになってゆく師匠。本当は もっとカッコいい師匠でいてくれるハズだったのに……(-_-;)
書き上げることができれば、年内に もう1話 行きたいところですが、もしかしたら 今年最後の更新かもしれません。
ちょっと早いですが、よいお年をお迎えくださいませm(_ _)m




